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137話「追憶! 流れ星のひみつ!」

 立て札で「富山県」と丸い感じのポップなフォントで書かれている。

 だが景色は見慣れたものとは全く違っていた。あるはずの家やビルが並んだ町風景が見当たらない。あるのは緑生い茂る自然だけだったぞ。

 可愛らしい感じの森林。花畑。入り江の青い海。青空と同化しているような立山連峰。


 まるでメルヘンの世界みたいな、ほのぼの雰囲気だぞ。



「一応ここは日本だよ。ここじゃあ立ち話もなんなので、家へ来てくれる?」


 二頭身の妖精のクッキーがウィンクしてくる。


 大きな木の中をくりぬいた感じで、空洞には生活に必要なものが揃っていた。

 絨毯(じゅうたん)に、ベッド、キッチン、本棚、テーブル、時計、テレビと見渡せば普通に見かけるものだぞ……。

 そこでオレはヤマミと一緒にお邪魔しているぞ。


 クッキーがウニメイスを振ると星屑が降り注ぎ、テーブルにポンと料理が並んだぞ。

 カレー、サンドイッチ、ポテトサラダ、卵焼き、色々……。


「……ってか、飲み物も欲しいなぞ」

「じゃあ、あんたやってみて。欲しいものをイメージして、ね」

「え? ええ!? オレが??」


 クッキーはにっこり頷く。何かできるのが当たり前みたいな前提……。


 え、えーいヤケクソだ!


 両手を向けて星屑のシャワーを放つと、やはり三人分のジュースが現れた。イメージそのままに具現化されたのだ。

 すごく簡単にできた事に戸惑う。


 恐る恐る飲むと、甘い味が舌に広がり、喉を清涼感が通る。……美味い。

 料理にも手を出すと、本物と間違いなく歯応えも味も揃っていた。イメージするだけで具現化された()()は本物の料理だったぞ。


「こんな簡単にできるなら、食糧不足一気に解決しそうだなぞ」

「この家もそう。願えば思い通りの空間になってくれる」


「じゃあ……」


 何を思ったのかヤマミは立ち上がって、杖を振るうと煌びやかな星屑がパラパラと身を覆うように降り注ぐ。すると可愛らしいドレスに変わった。

 どうやら服装も思いのままだ。

 ヤマミは嬉しそうにクルクル回って、自分のあちこちを見渡す。


「チートすぎるなぞ……」


 クッキーは後ろにポンとソファーを具現化させて腰を下ろした。そしてお菓子をドンドン具現化して食べ始める。


「と、このようにメルヘンな世界と(あなど)るなかれ、可能性が一〇〇%の世界ではなんでもできるわ」

「一〇〇%の可能性…………」

「そそ、極端に言えばこの星を壊そうと思えば簡単にできるし、逆に新しい星を創って生き物を創るのも簡単だよ」


 思わず息を呑む。

 相変わらず、クッキーは料理やお菓子を食べ続ける。おい太るぞ……。


「でもね、ここの人たちはそういう過激な事を望まない。()()()()()()()

「必要が……?」

「ここに倒すべき悪もいなければ、病気も怪我もない。更に言えば環境は永久不滅。もちろん星獣がいても暴れだす事はない。──なぜなら『永遠の楽園』だから」


 どことなくゾクッとした。


 ここにいれば好きなだけ望むものを具現化できるし、多分どこか行こうと思えばすぐ行ける。

 ()()()()()()()()()()()だから、それ以上を望む理由がないんだ!

 確かに……、しかしこんな世界があるとは信じられないなぞ…………。



「あー、美味しかったー!」


 気付けば、風船のように丸々と太ったクッキーがソファーをグシャッと潰していた。テーブルには多くの皿や菓子の袋や箱が積まれていた。

 いくら好きなだけ食べれるといっても、そこまで食べりゃなー。


 しかし突然シュッと元通りの体型に痩せた。思わずビクッとした。

 何事もなかったかのように立ち上がり、星屑を散らしてゴミとか次々消していく。


「ふっふっふ! ダイエットかんりょー!」


 現実じゃあ、数ヶ月くらいダイエットしないと痩せるのだって難しいのに……。

 と言うか太ったら糖尿病とか心筋梗塞とか色々弊害(へいがい)が現れるんだよな。でもここではそんなものは存在しない。

 恐らくアルコール種も好きなだけ飲めるし、すぐ酔いも覚めるのだろう。


 本当に何でもありだなぞ……。



 しばし家をお暇した後、ヤマミも一緒にクッキーに連れられるように空を飛ぶ。

 広々とした青空に白い雲。そして地上はキラキラと花畑が美しく映える。川も透き通った水で清涼感すら感じる。撫でてくる風も心地よい。


「こんにちはー!」


 なんと二頭身リョーコが手を振ってくる。初対面のはずなのに友達のように親しげだ。

 次々と妖精たちが集まってワイワイガヤガヤと楽しく盛り上がっていく。初対面でも割とフレンドリーで接してくれて、往年の親友のように笑い合える。

 一緒に囲んで料理を食べたり、談笑したり、本当に楽しい事だらけだ。


 人の反応を恐れなくてもいい、顔を伺わなくてもいい。

 もう人間関係で我慢しなくてもいいんだ。



「またねー!」


 バイバーイ、と手を振って妖精たちと別れた。


 思いっきり話して笑って楽しんで……、時間すら忘れるくらい夢中になったぞ。気付けば、空が橙に滲んでいる夕方になっていたぞ。

 地平線近くの顔のついた太陽が笑顔で「おやすみー」と沈んでいく。そして空は綺麗な紫のグラデーションから染まって夜空に切り替わる。星型があちこちチカッチカッと輝く。


 淡い紫の灯りが神秘的な大型スズランの花畑。その広場で、カボチャ型のテントでオレたち三人はくつろいでいた。

 当然カボチャ型テントは具現化されたもの。


「ずっとここにいたいくらい、居心地良いなぞ……」

「そうね」


 灯りに見とれたままオレの手にヤマミの手が重なる。ドキドキしてくる雰囲気。

 クッキーはにっこり微笑む。


「望むなら、ずっと住んでもいいよ?」

「え?」

「…………」


 ヤマミは火照(ほて)ったまま、こちらを見やってくる。


「ナッセ、あなたは充分頑張って戦い続けてきた。もうムリしなくていいんだよ?」


 クッキーの言葉に息を飲んだ。


 ここでなら、もう破滅する未来を避けようと頑張らなくてもいい。マイシやオカマサたちと仲良くやろうと苦心しなくてもいい。それに自分の中で増え続ける不穏な影を危惧しなくて済む。

 ここは本当に魅力的な世界だ。言われた通り、永久に住むのもやぶさかではない。


「でも…………!」


 夜空を流れ星が尾を引いて急降下する最中、言葉を詰まらせた。

 クッキーもヤマミも答えを待つかのように静かにしている。ヤマミの方を見ると、頷きながら笑顔で「望むなら私も一緒にいるよ」と距離を近づけてくる。

 顔が近くて、思わずドキドキ胸が高鳴っていく。



「ちょっとお邪魔していいかしら?」

「うわあっ!」


 声に驚いてオレとヤマミは慌てて離れる。クッキーは何故かチッと舌打ちした。


 振り向けば、純白の衣を着た美しい女性が歩いてきていた。

 何故か普通の人間と同じ等身で、綺麗に整った顔立ちで流れる黒髪がキラキラしている。黒い目の中心部の瞳孔が光マークみたいな金色の九芒星っぽい。額に太陽を模した放射状の冠。羽衣かと思うほど、背中から六枚の白い羽が滞空して浮いていて、蝶々のように時々羽ばたく。

 彼女が歩くたびに、その後ろを光の花畑がポコポコと急成長して咲き乱れ、宙へ散っていく。


「天神の妖精王アマテラスさん。こんばんは」

「晴天の妖精王さん。こんばんは。お久しぶりね」

「まぁね」


 晴天……? つかクッキーと知り合い? やけに親しいぞ。


「あら、息子つくったのね……?」


 アマテラスがこちらに視線を移してきて、その言葉にビックリする。


「ち、違います!! あ、あの……クッキーさんとは親子関係じゃなくて、師弟関係です……」

「ふふ。まだ事情を知らないみたいね。失礼しました」


 にこり微笑み、ぺこりと丁寧に頭を下げてくる。

 なんか引っかかるな。まるでオレが何も知らねぇみたいだぞ。クッキーを見やると、何故か目を背けて口笛を吹く。

 本当になんなんだ…………? 絶対何か隠してるよな………………?


 アマテラスはヤマミの方を見るとにっこり微笑んで「あらあら、そっちはクッキーの(めい)ね」と親戚のようにぺこりと挨拶する。

 当のヤマミも首を傾げつつも、挨拶し返す。本当になんなのだ……?



「三人とも一緒に来てもらえませんか?」

「え? あ、うん……」

「うん」


 戸惑うも、言われる通りアマテラスの後ろをついていくように空へ飛ぶ。

 地上の森林には(まば)らと優しい灯りが窺えた。花だったり、家の灯りだったり……。


 徐々に雲の世界へと上昇していくと思ったら、雲の上に降り立つ。同じように降りるとポフンと弾力を感じさせる。ちゃんと歩ける足場になっていた。

 まるで夢の世界のようだ。まさか雲の上を歩くとか、今でも信じられないぞ。

 辺りは不思議な水晶のような花が咲いていて(ほの)かに灯っている。先に大きな城が(そび)えているのが見えた。


 雲の上に城が……。夢でも見ているんだろうか?


 壮大で大きな扉を潜ると、真っ白で美しい通路が続いていた。

 しばらくあちこち上がったり下ったり不思議な空間を歩き回っていると、ベランダに出た。


「あれをご覧なさい」


 思わず「うおお……」と目を丸くした。


 なんと山のように大きなクリスマスツリーが、小さな衛星の上で立っていた。

 いくつもの星型の飾りがたくさんあって、淡く輝いている。そのいくつかの星がふわりと離れると、流れ星となって曲線を描きながら地上へと降下していく。


 流れ星はキラキラと星屑を散らしながら虹色の尾を引いている。

 それがいくつも地上へと降り注いでいる。定期的に降らせているようだった。神秘的で美しくて、つい見惚(みほ)れそうになってしまう。


 しかし()()()()()()()()()、頭に電撃が走ったような衝撃を受けた。


 その流れ星が地上へ近づくにつれて、徐々に鍵の形になっていく。

 ()()が見慣れた形をしていて、思わず叫んだ。


「運命の鍵ッ!!?」

あとがき雑談w


 ポジ濃度100%の世界……。

 ナッセとヤマミは歩いていると、三頭身のヤミザキが歩いてきているのが見えたぞ。


ヤマミ「あ、お父様!? なぜここに……!?」

ヤミザキ「おお、娘よ。元気ですかな」

ヤマミ「むむー! 赤い刻印(エンチャント)でマジおこー!」ぷんぷん

ナッセ「おい語彙(ごい)崩壊してるぞ」


ヤミザキ「なんだかよく分からんが、すみませぇぇぇん!」涙目ペコペコ

ヤマミ「……」モヤッ


ナッセ「コイツは綺麗なヤミザキな。ボコるなら、元の世界のヤミザキでな」

ヤマミ「…………うん(絶対あのクソ親父シバく!)」



マイシ「おい! ナッセ、あたしとヤりあうし!」

ナッセ「ええ? ここでも?」


 ガキキキキン、と単純に得物で斬り合うこと数時間。


マイシ「もうあたしらダチだし! これヨロ~!」ニコニコ

ナッセ(随分気軽に友達になっちゃったぞ……)



エレナ「ナァァッセェェッ!! チュッチューしようよぉぉぉー!」


 ルパンダイブのような感じでナッセに飛びかかるエレナちゃん。

 なぜかチュー型(キッス)が大きく強調されていて、恐怖すら感じさせる。


ヤマミ「そうはさせないわ! ヤマミチョップー!!」ズビシ!

エレナ「ジャァァマミィィィ! 覚えてろぉーッ!」(>_<)


スミレ「いいわぁ~w その見事なまでのチョップ是非あたしにも~w」はぁはぁ


ヤマミ「えぇ……」(汗)

ナッセ「ここでも変な性癖は変わらんなー」



リョーコ「やっほいー! また会ったねー」胸ぷるんぷるんw

ヤマミ「……ぷくぅ!」(頬を膨らまして妬く)



 次話『運命の鍵はなぜそこから生まれてくる?? 生誕の秘密』

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