表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/201

135話「追憶! 星獣はどこから?」

 富山駅近くのホテル前、ほんのり温かい日差しの下でクッキーはジト目で待っていた。


「朝帰りだなんていい度胸ねー」

「ご、ごめん!」

「すみません」


 諸事情があって、生気を養う意味で旅館に泊まってたんだが……。

 って言うかマイシを勧誘するの失敗しちゃったし、なんの収穫もなかったなぞ。ちなみにクッキーは「二人で寝て進展もなし? つまんないわねー」とかボヤいてたけど、何期待してたんだぞ?


「ま、仮想対戦バーチャル・サバイバルセンター行くわよ!」


 ────かくて、また再び試合を繰り返していったぞ……。



「同じ夕夏(ユウカ)家だとぉ!? 何様だてめぇ!!」


 夕夏(ユウカ)家第八子、キュリアはスーツを着た色白で痩せぎすの男。卑しい目で傲慢不遜。髪の毛は耳を隠すロン毛。

 メンバーのコンパチ男二人は『夕夏刻印(ユウカエンチャント)』によるエネルギー貯蔵役でしかない。


 大振りの剣から扇状にエネルギー奔流が放たれる。広がった大爆発が周囲の森林を吹き飛ばす。

 しかしヤマミは魔法少女特有の紫色調の衣服を身につけ、刃を生やした杖を手に、悠然と立っていた。


夕夏(ユウカ)ヤマミなぞ、聞いた事も見た事もねぇ!! それに魔法少女だとぉ!? ふざけるのも大概にしやがれ!」


 豪快に刀剣波を放ち続けてドカンドカン爆煙を噴き上げた。森林が瞬く間に煙幕こもる焦土へと化していく。

 しかしヤマミは煙幕を抜けて、空高く飛翔。キュリアはそれを見上げて汗を垂らし絶句。


「き……貴様! 我々の夕夏(ユウカ)家でなければ……、な、何なんだッ!?」



 師匠クッキーの計らいで、ヤマミは夕夏(ユウカ)家とは関わりのない人間という扱いにしてくれた。

 キュリアはおろか、ヤミザキすらも()()()()に気付くことはなかったぞ。根本的な解決にならないが、修行の為と一時的な処置となっている。

 いつかは四首領(ヨンドン)ヤミザキを倒せるようにならないと!


「マジカル・フォール!!」


 ナッセを連想(イメージ)しながら、ヤマミは急下降のままに杖のブレードを振り下ろした。それはキュリアのかざした剣もろとも顔面を断ち割る!!

「がっ!」

 斬り裂かれたキュリアは、ドンと脱落の爆破に包まれた。

 ふう、と息をつくヤマミ。



 大空を我が物顔で飛び回るグリフォン。


 それはキーダの搭乗する召喚獣で、その後ろにシロウを乗せている。シロウは腕を組んだまま氷系(ヒェラ)の『衛星(サテライト)』を周囲で浮かせ、空から吹雪のように振りまいていた。

 おかげで仮想(バーチャル)フィールドの森林は雪が積もった銀世界に早変わり。


 放っておけば、たちまち身体が凍えて感覚がマヒしていく。チンタラすれば体温が下げられて徐々に力尽きていく。

 慌てた相手チームは射撃や狙撃を試みるが、キーダのグリフォンは素早く動き回るため全然当たらない。逆にシロウの氷の矢で狙われる始末。


 そしてペンギンのコートを着たナカヤが剣を振るって、次々と相手を斬り伏せていく。

 着ぐるみと侮るなかれ、絶対防寒仕様のコートで凍結などを完全防御する。そうシロウチームはこの布陣でAランク層を陣取っていた。


「並の相手ならともかく、ナッセたちどうだろーなー?」



 オレは雪積もる森林の中を駆け抜けながら、片腕の弓からボウガンのように光子の矢を連射。その矢は木々の幹や葉の隙間を縫うように通り抜けて、上空のキーダやシロウへと目指していく。


「かわせ! ただの一撃も(かす)らせるな!」

「了解っす!」


 ち! やはり一筋縄で行かないなぞ! ことごとくかわされる。


 だが、例え視界が悪かろうとも、オレの『察知(サーチ)』は広大だぞ。敵の位置や動きがガチで手に取るように分かる。だから視界の悪い物陰から射撃が可能だぞ。


 ──それに動き回って、あちこち生成した弓を設置してある。


 オレの『念力』は目に見えない手腕のようなもの。後々に分かった事だが『念力』の有効範囲は『察知(サーチ)』の範囲に連動しているらしいなぞ。


 つまり!


 あちこち設置された弓は光子を生み出し、次々と矢を撃ち始めた。

 そう『念力』によって一キロ範囲の遠くの弓を手動で操作が可能。それによってシロウを集中砲火するように、地上からの弾幕が上空へ()かれる。


「何!? 『分霊(スクナビコナ)』か? それとも『衛星(サテライト)』の待機弾による時間差同時攻撃か!?」

「捕まっててくださいっす!」


 キーダのグリフォンはカクカクと旋回しながら軌道を変えて、ことごとく弾幕の間を通り抜けてかわしていく。

 かわしきれない部分はシロウの追尾(ホーミング)射撃や、グリフォンの爪攻撃などで迎撃。

 それでも『念力』であちこち弓を操作し続けて、第二波、第三波と弾幕を次々放つ。


「……チッ!」


 ()れたシロウは大きな氷の塊による『炸裂弾(バーストショット)』で地形破壊に踏み切った。

 連続で撃ち続けて森林をことごとく粉砕して、吹雪の爆発が連鎖していく。


 その辺は読んでたぞ。だから今度は……!


 シロウの氷属性射撃によって、地上は森林の代わりに白いモヤで立ち込めている。それを逆に利用。

 設置していた一つの弓を浮かせて、移動させながら射撃を試みる。案の定、シロウはそれをオレだと思って氷の矢を次々と降らせ続けている。


 でも残念。小さな弓なので、中々当たらない。

 多分、シロウにとって「ずいぶん器用に回避するな!」とイラついているはず。なので、この上にない(おとり)になるぞ。



 ひっそりと遠い森林に隠れるオレは『刻印(エンチャント)』を更に広げ、『太陽の大弓サンライト・ビッグボウ』にバージョンアップ。

 糸を引くと共に、光子の矢が膨らむように大きくなっていく。じっくりシロウを狙うよう集中して、引いていた糸を解き放つ。音速を超えて鋭く走る一筋は、ことごとく木々に風穴を空けながら、空へと駆け上がった。


「これは(おとり)だッ!! 馬鹿は五時の方向、よけろ!!」

「はいっす!!」


 勘のいいシロウが振り向きざまに叫び、キーダの操縦に応えたグリフォンは軌道上から離れた。


「届けェ────ッ!!」


 その咆哮に応えるように光の矢一閃は、別の光の矢で弾道を強引に変え、ついにグリフォンごとナカヤとシロウを貫く。

 その勢いで三騎は空中でバラけた。グリフォンはボンと煙に掻き消える。シロウは見開き「な、なんだと……!? 跳弾狙撃ッ…………! がはっ!」と吐血。

「やっぱ化け物っすね……」

 空でドドンと脱落の爆発が轟いた。


 後ろからナカヤが飛びかかってきたが、ヤマミが超高速飛行で通り過ぎざまに横薙ぎ一閃。上下に裂かれたナカヤは「あちゃー、やっぱムリだったかー!」と爆破四散。



「おお! やったなぞ!!」

「うん!!」


 ヤマミと互いに腕をガツンとぶつけ合った。この試合も完勝で終わった。


 あくまで弓兵(アーチャー)として射撃にこだわった戦法だ。普通に得意な接近戦や奥義を使えば、楽勝だったかもしれない。

 だけど、師匠を信じて修行に従った。

 おかげで遠隔操作するとか新しい方法を覚えたぞ。これなら一人で波状攻撃とかできるし。



 帰ろうとフロントの広場に出ると、シロウたちがいた。

 やべ、待ち伏せてたかぞ! 師匠クッキーとヤマミがいるから大丈夫……?


「おい!」

「は、はぁ……」


 シロウは相変わらずの高圧的でジッと見てくる。


「星獣は本当に来るのだな?」

「あ、ああ!」

「……そうか。来るのだな」

「信じるの?」


 シロウはフッと笑う。


「あそこまで真剣に戦う馬鹿が、嘘のためにそれができるものか!」


 分かってくれる人がいた。それだけでもなんかむず痒い気持ちになった。

 彼は背中を向けて「せいぜい頑張れ。応援している」と手を振りながら去っていった。その励みに嬉しい気持ちが湧き出す。


「ありがとう! シロウさん!!」




 その後、色々手続きを済ませて特急電車で県外に旅立った。


 流れ行く景色。オレはヤマミは相席で、向かい側にクッキー一人。

 昼飯は富山名物の『ますのすし』。円形の木造箱の中の笹の葉の包を剥がすと、赤身を乗せた酢飯が現れる。

 付属のナイフで分割して食べていくと、ほどよい酸っぱい旨みと歯応えのある飯が美味い。


「わぁ……、おいしい!」


 ヤマミが目をキラキラさせている。

 中々食べられるもんじゃないからなー。これチョイスしててよかったぞ。




 ────あれから数年後、オレたちは大阪で調査を続けていた。


 本当は海外へ武者修行したい所だったが、師匠に止められた。

 まずは『星獣』の出現場所と原因が判明しないと、対策も何もないからだ。

 調べた結果、星獣は大阪から現れるらしかった。

 そういえばハロウィンみたいな世界線で、大阪の専門学校にいたら現れてきたなぞ。今まで気付かなかったな。



 星々の見えぬ大阪の夜。とある専門学校の前にいた。


「あ、来る……!」「うん!」


 ビリビリと大気が震えているのが肌で分かる。地響きと共に、周辺の地面が隆起するに従って地割れが広がっていく。学校が瓦解し、中から大きな異物が蠢いてきた。

 奇妙な仮面に、ギョロリと眼が動く。開けた口からヨダレが糸を引く。地上へ這い出すように次第に上半身から身を乗り出す。メリメリ……!


 ────その時垣間(かいま)見た! 星獣が這い出る地面に召喚の魔法陣が!

 そして付近に痩せこけた人影が!!


「まさか!! 人為的……召喚かぞッ!!」

「なんて……コト!」


 見開いてショックを受けた。

 やはり自然に沸いて出てきたのではなかったか!?



「グオオオオオオオ!!!!」


 大きな星獣の口が大きく開かれ、咆哮が大音響で響いた。

 途端に、破裂するように道路のアスファルトが粉々に剥がれる。そして破片もろとも電柱や自販機などが暴風に流されていった。周囲の建物も剥がれ飛ぶように吹き飛んでいく。なおも衝撃波の津波が吹き荒れて、それだけで破壊を撒き散らす。


 ビリビリと全身を貫く威圧と恐怖。間違いなく星獣。



「ははははは!! ついに星獣をんッ……」パクッ!


 元凶らしき()()()はたった今、星獣に()()()()。グチュグチュ咀嚼(そしゃく)され、喉を通る音がした。ゴクン!

 そして星獣はこちらへジロリと大きな眼で視線を定めてきた。ゾク……!



 ────────────何か光った時、意識は途絶えた。

あとがき雑談w


ナッセ「つーか、師匠が星獣倒さないのかぞ?」

ヤマミ「倒せるんでしょ?」

クッキー「じゃあ、次もヤバいの出たら私任せ?」


 言葉が詰まる。


クッキー「そうゆうこと。頼り続けたら依存。それじゃ成長できないからねー」


 それよりも、星獣以外にもヤバイの出てくるって示唆(しさ)してないかぞ?

 ひょっとして師匠は『未来』が見えてるんじゃないかなぞ……?

 星獣以外に、と言うと月とか火星とかの星獣が来たりとか?


クッキー「って言うか、星獣倒すのよりもやりたい事あるのよねー」ソワソワ


ナッセ「なにだぞ?」きょとん!

ヤマミ「気になるわ」きょとん!


クッキー(あんたらの恋の進展。全然進まなくて焦れっちゃう)ぐぬー!



毛利(モウリ)シロウ(魔道士(マジシャン))』

 富山(トヤマ)県代表のA級創作士(クリエイター)で、県内では一位。

 七三に分けた黒髪。厳しそうな目。黒いスーツを着込んでいる長身の青年。そして三人チームのリーダー。合理的思考の創作士(クリエイター)

 堅物さと高圧的な態度で、他の創作士(クリエイター)から好かれていないようだ。

 氷系魔法が得意な魔道士(マジシャン)。23歳。

 戦い方としては広範囲に吹雪を吹き散らして、その極寒で敵の戦闘力や生命力を徐々に削ぎ落としていく。

 その上で氷の矢を放って攻撃もする。

 威力値12800

 

市賀(いちが)ナカヤ(剣士(セイバー))』

 飄々(ひょうひょう)とした金髪の男で、チーム共通で黒いスーツ。21歳。

 属性の象徴となる動物の着ぐるみを具現化して装備する事で、その属性を無効化できる。ただし一日に一回という厄介な制約がある。

 威力値8900


津富(ツトム)キーダ(騎手(ライダー)》)』

 フサフサな赤髪ショートの後輩的なメガネ男っす。20歳。

 召喚獣のグリフォンに乗って牙や爪で戦う。回避率が高い。チーム戦ではシロウを乗せて高角度から吹雪を降らせる。

 威力値8650



 次話『ポジ濃度が高くなっていくと……? ホラー? ミステリー?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ