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134話「追憶! かつての友達!」

 夕日が山脈の地平線に半分沈んで、影が一層濃くなってきている。

 ナッセとヤマミが対峙するマイシの間を冷たい風が吹き抜け、互いに髪の毛が揺れる。


「フン! 騙し討ちは好きかし?」


 不敵に笑みながらマイシが不意に聞いてきた。

 唐突でビックリして見開く。だが首を振る。


「するかよ! やろうってんなら、正面からぶつかってやるぞ!」

「……無関係かし」


 マイシは細めた目を逸らし、くるりと背中を見せて沈みゆく夕日を眺める。

 なんか噛み合わない? しかし、これ以上の説得は難しいなぞ。


 するとヒュルルルと不意に聞こえた。無数のミサイルが猛スピードでこちらに殺到!



「ナッセェ!」「マイシ危ない!」

「……フン!」


 ドガガガガガンッ!!


 大規模に爆発が連鎖して散開し、岩の破片が散乱。黒煙が山頂から濛々(もうもう)と立ち昇る。

 それを遠景に、二人の男が見据えていた。

 なんとモミアゲが特徴の無骨な痩せぎすのオカマサと、垂れ目が特徴のダラけた感じの毛深い体格のドラゴリラだった。

 彼らの周囲には兵隊が数人いて、疎らと生える木々の側であちこちに対戦車砲を設置して操縦していた。

 大きく太い砲身に、それを支える頑丈な二輪駆動の機体。


「近代兵器に勝てる生物は存在しない。これで竜の力が手に入ったな!」

「ありがてぇんや! これでワイもドラゴンになれるわ~!」


 オカマサとドラゴリラは陽気に笑い合って、ゴツンと互いに拳を突き合わせた。

 すると一人の兵士が駆け寄ってくる。


「オカマサ様。ご命令通りに子供二人も巻き込みましたが、報告はどうします?」


 ……親友ドラゴリラがドラゴンの力を得るために必要な犠牲だ。

 たかが(クソ)餓鬼(ガキ)二人、安い命だろう。

 それに仮想対戦バーチャル・サバイバルで瞬殺された事も考えれば、厄介者は消した方がいい。


 オカマサは冷徹な顔でフッと笑う。


(クソ)餓鬼(ガキ)どもは暴走したマイシに殺されたでいいかな?」

「せやせや、この事は内密にせな~」プククッ!



 しかし山頂から灼熱の息吹が天を衝くように噴き上げた。ボゴウッ!!

 オカマサとドラゴリラは驚愕して振り向く。気付けば轟々(ごうごう)燃え盛る巨大な火竜が牙を剥き出しに飛びかかってくるのが視界に! 速い!


 ドオォ……ン!!




 あちこち木々が倒れ、対戦車砲が無残に引きちぎられたように砕かれ、兵隊は横たわっている。そして火炎が草のように、至る所で燃え盛っていた。

 ドラゴリラはうつ伏せになったまま微動だにしない。


 「ド……ドラゴリラ……! 大丈夫か……? お、おい……!?」


 オカマサは血塗れで震えながら地面を這っていた。

 ドラゴリラの手首に触れると、脈がなかった。それに愕然。唇が震える。



「まーだしぶどく生きてたかし……」


 ぎごちなく視線を後ろの方へ向けた。ゾク!


 殺気を漲らせたマイシが歯軋りして睨んでいたからだ。怨みづらみと怒りが窺える。

 しかも無傷だ。集中砲火したにも関わらず、平然としている。後に二人が降り立つ。ナッセとヤマミだ。


「き、貴様ら…………! なぜ……生きて…………」




 その見慣れた人間に、オレは衝撃を受けた。


「お、オカマサ!? 仮想対戦バーチャル・サバイバルで会ったヤツだ……。ってか、あのミサイルも?」

「こいつら対戦にいたわよね」

「あ、ああ……。だがここに来ていたとは……!」


 マイシに断られた上に、彼らの非道な行為にも愕然とさせられた。

 元いた世界で縁を切られた、かつての友。


 それまでは同じ専門学校からの付き合いとして、卒業後もイラストや漫画を描きあう楽しい交流があった。


 オカマサは「燃えるぜ!」と熱血漢をアピールして、努力をする素晴らしい男だった。

 ドラゴリラは「笑わせたいんや」と、ゲイやホモをネタに滑った笑いを描いていた。

 彼らは互いの作品を褒め合って、調子良く盛り上がっていた。オレにはついでで少々塩対応……。


 どことなく二人だけの世界って感じは、最初から(ぬぐ)えなかった。だが、それでも本当に楽しかったぞ。



 なのに、オレが愚痴ったら途端に縁を切られてしまった。

 ドラゴリラも同じように愚痴った時があったが、オカマサは同情的に(なだ)めて励ましていた。逆も然り。全然オレに対するのと反応がまるで違う。

 元々友情なんてものは二人だけの共有で、オレには向けられていなかった。


 友達だと思ってたのはオレだけ……。そう思い知らされたぞ。



 どっか並行世界(パラレルワールド)で、彼と似た姿をしていた吸血鬼がいたけど本人かどうかは分からない。努力する熱血漢が、こんな虐殺を繰り返す化け物だとは信じられなかった。

 だが、今ので確信してしまった…………。


 今でもやはり信じられないぞ…………!



「貴様()って事は、やっぱりオレたちも殺すつもりだったのかぞ?」

「話し合いの途中だったのに卑怯ね……」


 ヤマミも侮蔑な目で見ている。


「く……! ド、ドラゴンの力をドラゴリラに与えてやりたかった……! なのになんで……なんでッ! いつも肝心な所で邪魔するんだよッ! 糞がッ!!」


 悔しくてたまらず憤怒で吠え、ドンドンと地面を拳で叩く。

 ギロリ、とこちらを睨む。

 懐から拳銃を抜き出すと、震えながら銃口をオレの方へ……! ザワッ!


(クソ)餓鬼(ガキ)が! ()()()()()()()()()ッ!!」


 オレの存在を否定され、湧き上がる黒い激情! 憎悪が湧き上がる!




「ガタガタ抜かすな! さっさと死ねしッ!!」


 苛立ったマイシは逆手に持った剣を振り下ろし、オカマサの脳天をバゴッと砕く。肉片と血飛沫が飛び散って真紅の花を地面に描いた。

 ピクピクと痙攣する手足。

 更にマイシは剣を振るって、オカマサたちを爆裂に巻き込んだ。ドゥンッ!


「へっ! クズに墓はもったいないっしょ」


 何も言えなかった……。止めれなかった…………。

 未だ胸中にドス黒い感情が渦巻く。



「あんたらはこのクズとは無関係っしょ。特別に見逃してやるし」

「マイシ……すまん…………! オレのせいだ……!」


 項垂れて涙が溢れる。


「フン! メソメソして女々(めめ)しいヤツめ。自分を責めるなし! 気に入らないが、正々堂々とあたしとヤりあったんだ……敬意は払ってやるっしょ!

 だが二度と会いに来んなし! 今度はぶっ殺すぞし!!」


 そう言うと、マイシは炎の両翼を広げて飛び去っていく。



 ヤマミと二人だけ取り残された。夕日は沈んで、闇がじわじわと風景を蝕んでいく。


 オカマサたちのようなクズもいるから、マイシが心底人間を嫌っているのも仕方ない。彼女の主張をなぜ否定できようか。粗暴だが、彼女なりに至極真っ当な事を言っているだけだ。


 なのにオレの都合で「人類のために星獣と戦ってくれ」なんて言ってしまった。


 そりゃ断るに決まっている。マイシが嫌いな人間のために戦うワケがない。

 オレだって、オカマサたちに殺されそうになった。ヤツらは最初っから巻き込むつもりだった。

 そうでなければ用意周到に近代兵器まで引っ張ってきて不意打ちするなんて考えない。

 どこの世界へ行っても、彼らとは反りが合わないかなぁ……?



「二兎を追う者は一兎をも得ず、か。一兎すら得られなんだか……。はは……」


 止まらぬ涙を流し、乾いた笑いを漏らすしかなかった。

 すると、ガバッと暖かい腕がオレを包み、柔らかい体がオレの体に密着する。


 ヤマミが抱きついてきた────────!?


 胸中を黒く澱んで渦巻いていたものが、徐々に振り払われていく。

 柔らかくて温かい。いつも一緒にいるのに、こうして抱きつかれると大きく気持ちが変わるとは……。

 おかげで気持ちは落ち着き、荒みから清々していく。


「一緒だからね。ずっと」

「ありがと……」


 夜空の天の河が美しく煌く下で、二人は愛おしい抱擁(ハグ)に身を委ねていた……。




 どこか山奥の旅館。ほんのり木の香りが漂う静かな雰囲気。

 畳が敷き詰められた和室。

 ……すんなり未成年二人だけで宿泊を許されたのは、創作士(クリエイター)カードを提示したから。


 既に晩飯と入浴を済ませ、浴衣を着込んでいた。



「……オカマサとドラゴリラは、元いた世界では友達だったんだ」

「そっか。だから……」


 悲しげに同情してくれるヤマミ。


 こうやって聞いてくれる女性はいなかったなぁ……。

 元いた世界では、恋愛の機会はあっても失敗ばっかりで引きずるような未練もあった。こうやって男女二人で話せるなど、当時のオレには夢にも思わなかっただろう。


 かつていた世界の事をヤマミにも話した。主観ゆえ、偏ってるかもだが悪しからず。


 個人と個人の摩擦でトラブルが起きやすい事。闘争社会ゆえに貧富の格差もあること。残酷極まりない非人道兵器や凶悪犯罪が多く存在していた事。レベルの概念がなく、クラスやスキルもない非力な存在だった事。

 そして誰もが面白みのない仕事にストレスを感じている事……。


「容易に物事を悪く捉え、また自分を卑下して嫌悪して責めて、そして気持ち満たされぬ永遠の飢えで生きる世界だった」

「そんな地獄が……!」


 テーブル上の茶飲みを手に、熱い茶をすする。


「ああ! 早く死にてぇって思ってた……」


 ついさっきマイシに断られ、旧友の卑怯な不意打ちに巻き込まれて、本当に嫌な事ばっかりだ。

 もし一人だけだったら、耐えられなかった。

 なんだかヤマミが愛しく見える……。


「……でもヤマミと一緒になら!」「うん! 地獄なんてなんでもない!」


 お互い、瞳に吸い込まれるかのように見つめ合う。



 消灯し、ヤマミと並んで布団の中で横になる……。

 仰向けになって薄暗い和室の天井を見やる。


 地獄、か。


 ────友達を作らせない因子(いんし)。関係を続かせない因果(いんが)。争わせる因業(いんごう)

 総じてネガティブ因由(いんゆ)は人の悪い部分を引き出し、心を(けが)れさせる。


 ……そういう概念こそ、最大の黒幕(ラスボス)かもしれない。


 目を瞑る。(まぶた)の裏に理想が浮かび上がる。

 マイシと一緒に並んで剣を握って、共に歩む。後ろで他の友達と一緒にオカマサとドラゴリラが好友的に笑みながら控えている。

 そして正面から愛しいヤマミが笑顔で、そしてオレも明るい笑顔で…………。



「そうなれたら、いいなぁ…………」


 叶わぬと思いつつも、理想の夢に酔いしれながら寝入っていく。

あとがき雑談w


 ナッセと、オカマサ&ドラゴリラ。かつてあったらしい絵描き交流。


オカマサ「どうだ! このスーパーロボットのイラスト!! 燃えたぜ!!」

ドラゴリラ「おおー!! すごいやん!! まるで本物だわ!」

オカマサ「ありがとう。細部にまでこだわったよ。これこそ本格的ってな」


ドラゴリラ「でけたわー! オッサンが裸体少年を緊縛しているイラスト」

オカマサ「さすがっ!! 変態を極めるだけあって、性格が面白くて笑えたよ!!」

ドラゴリラ「いや~! 力を入れてたからね。もっと笑わせたるわー!」

オカマサ「がんばれ! 応援している!! 俺も負けないからなっ!!」



ナッセ「勇者とヒロインの魔法使い描いたぞー!」


オカマサ「上手くできてるね。応援している」((クソ)面白(おもしろ)くねぇイラストだぜ)

ドラゴリラ「まぁ後で感想しとくわ」(つまんないわw 感想せへんけどw)


ナッセ「あ、ありがとう」ショボン……!



マイシ「そーゆーのムカつくし!! ファイ○ルフラーッ○ュ!!!」ウオッ!

オカマサ「ちょっ! それドラゴb………ごはああああ!!」

ドラゴリラ「当時はいないやろがぁぁぁあ! ごりはあああ!」


 ドグゥウオオオオッ!!(山を消し飛ばすほどの爆裂)


ジト目のナッセ「えぇ……」(でもスッキリ)



 次話『星獣って一体どこから現れるのか調査開始!?』

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