130話「追憶! ついに星獣へ奥義炸裂!!」
────ヘイン率いる巨大なヴィラン組織が壊滅してから、数年。
これまでのように計画性のあるヴィランの凶悪犯罪が劇的に減り、突発的な犯罪がバラバラに起きるだけになってしまっていた。
完全にヴィランという存在を無くす事は不可能だが、それでも平和により近づけた。
ただし、これは地球上に限った話だぞ。
オレは相変わらずヤマミと一緒にアメリカで暮らしている。
本当は地竜王グレンを倒した後、別の国へ旅立とうと思っていたのだが、ヒーローたちとの別れを惜しく思って、永住する事になったぞ。
おかげで未曾有のピンチに駆けつける事ができた。
だってまさか地底や宇宙から、ヴィランが襲って来るとは思わなかったもん!
──時は遡る。ヘインたち組織壊滅後、紅葉落ちる季節。
アメリカの仮想対戦センター。
大規模に作られていて、ヒーローたちが切磋琢磨と技を競い合うランキングバトルを行える施設だぞ。
ソロ戦でもチーム戦でも、好きな仮想空間で思い切ったバトルが可能だぞ。
前から知っていたのだが、対戦は好きじゃなかったのでスルーしていた。
だが、バーニングガイの熱意に負けて参戦する事になった。
場所は住宅地。仮想空間ではあるが本物の世界と遜色はない。
オレは疾風のように広い道路を駆け抜け、目の前の三人の敵チームへ襲いかかる。
「瞬殺ごめん!!」
駆け抜けざまに全身から繰り出す暗器をビシバシ振るい、一気に三人を撃破。
揃ってドドドンと脱落の爆発の後、三つの棺桶が転がる。
魔法少女ヤマミは杖から無数の光線をばら撒き、その絨毯爆撃で敵チームを建物ごと壊滅。ドドドンと爆破四散。
観戦者は興奮して湧き上がる歓声。
地竜王グレンとの戦いに比べれば楽勝だったぞ。
短期間でA級までランキングアップして、みんなを驚かせたっけ。
白い雲たゆたう大空、大小長短様々な巨大なキノコが森のように生い茂り、広い笠が足場になっている不思議な仮想空間。
短剣の切っ先に太陽型手裏剣を高速回転させ、空中を疾走していた。
キノコの内被膜と呼ばれるツバや、柄の後ろに隠れていたヒーローを狙って、回転手裏剣をブチ込む。
「ぐあ!」「ぎゃあ!!」「ぐっ!」
あちこち飛び回って一人ずつ各個撃破して、次々と脱落の棺桶に変えていく。
相手が得物を振るって反撃しようとするも、回転手裏剣を前に武器ごと粉砕されて爆破。
前から思ってたけど、この奥義って持続性が高いから、連続で狩れるんだよな。
「カオス枠!! カオス枠!! 将林シナリ、一丁いってやるぞ!!」
なんと風のように瞬足で現れた好青年。
なんかハイテンションで張り切って現れてきたぞ。しかも、片手から螺旋に描く風が収束して回転ノコギリのように圧縮された。それに思わず見開く。
「風神・旋風車────ッ!!」
ズン!!
型は違うが、奥義『無限なる回転』同士が激突!
二人を包むように螺旋状の旋風が吹き荒れ、破裂するように衝撃波が弾け散った。凄まじい烈風が広範囲に吹き荒び、他のヒーローたちは「うわああああ!!」と煽られる。
バサバサとキノコの森は揺らめく。
ヤマミは見開いて「ウソ……! ナッセと同じ奥義を……!?」と漏らす。
この後も、シナリとかいう若手のヒーローとも互角に激戦を繰り広げた。
お調子者ながらも意表を突く戦法に、苦戦を強いられたぞ。
その後、打ち解けたシナリとも友達になった。本当に面白い男だぞ。
そしてインドからカナダへと移住を繰り返して、ようやくアメリカへ訪れたあの侍とも出会った!
大きな岩山が高々と伸びる砂漠。
その岩山がズガンズガン粉砕されていく。破片が風に舞う最中、一人の逞しい大男が刀を振るっていた。
「がああああッ!!! 紅蓮斬ッ!!」
血気盛んに刀を振るう大男の侍。その男はアクトだったぞ。
二つの短剣を交差してガードするも、一太刀がそれを打ち砕く。だがそれは囮。自分の体には届かないように計算している。そして────!
念力で後ろから襲いかかるクナイ。しかしアクトはニッと笑んで、刀を横薙ぎに一周振るって砕く。
この男は豪快ながらも、器用に刀を振るってことごとく迎撃していく。
「サンライト・インフィニティエッジ──ッ!!」
新たに生成した短剣の切っ先に高速回転手裏剣を発生させ、突然の奥義をアクトにぶち込もうとする。
するとアクトはカッと見開き、たちまち筋肉のラインに沿って赤く煌き始めた。全身が少し赤く染まり、熱気を纏う。更に手に持つ刀の輪郭が赤く輝き出す。
その変貌には驚かされた。思わず見開いたぞ。
「剛牙・大紅蓮斬ッッ!!!」
縦一閃と鋭く煌く極大な太刀筋が、バッキャンと高速回転手裏剣を断ち割る。
だが急激に断ち割ったために、解放されて暴走した衝撃波が周囲に弾けた。
ドバアアァァァァン!!
仮想空間内に凄まじい嵐が吹き荒れた。
一人で繰り出す不完全奥義とはいえ、まさか破られるとは思ってなかったぞ。
「流石にやるじゃねェか! 割とギリギリだったぞ」
豪快に笑うアクト。
彼も友人になってくれたぞ。アクトとシナリで笑い合う仲になって、三つ巴と切磋琢磨していく充実した日々を送っていた。
ちょいヤマミが嫉妬しててひと悶着もあったぞ。ごめんごめん。
その二人がチームとして加わった後に、地底から侵略してきた未知のヴィランによる大侵攻もあったぞ。
その一年後に、宇宙からきたZヴィラン軍による侵略戦争もあったぞ。
絶望に次ぐ絶望の果てに、みんなで必死に全力疾走で勝ち得た平和。それらを全て語ろうとすれば、もの凄く長くなるので割愛するぞ。すまぬ。
色々辛かった事も多かったけど、嬉しかった事も多かったぞ。
だが、そんな充実した日々は続かない。
そう、ついに恐るべき事件は起きたのだぞ……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!
なんと山のように巨大な星獣が聳えていた。
やはり奇妙な仮面にギラギラする双眸。四つん這いの巨躯。背中から無数の龍が吠える。ヒーローたちは既に大勢で大掛かりの布陣を敷いていた。
オレたちも一緒に招集されて、戦線で構えていた。
「また星獣かぞ……?」
「ええ。前の世界と同じ…………」
「何話してんだァ? 前からコイツァ、知ってんのかァ……?」
ヤマミと話していると、事情を知らないアクトに怪訝な顔をされた。
シナリも「リアル転生ってやつ? かっけー!」とややメタ発言もしてきたぞ。
「グオオオオオオオオ!!」
響き渡る咆哮が、台風級の乱気流が荒れ狂い大地を揺るがす。
轟音を立てながら凄まじい烈風が一帯を通り過ぎ去った。ビリビリ……、あの時の悪夢と緊張が体に蘇る。ガタガタと膝が笑う。だが歯を食いしばる。
お互い硬くなった顔、そして決意の視線を合わせ、頷く。
「ヤマミ! 一緒に!」「うん!」
ヤマミと手を繋ぎ、眼前の絶望に立ち向かんと奮起する。
お調子者のシナリもそれに倣って、アクトへ手を繋ごうと催促するが「気味わりィわ! 男同士繋がっても嬉しくねェよ!」と拒否される。
「行くぞォ────────ッ!!」
多くのヒーローたちと共に、オレたちは駆け出した。
今こそ、総力を尽くさんと戦意を漲らせた。
迫ってくる星獣を相手に、大勢のヒーローたちが総攻撃を仕掛け、爆発が明々と連鎖した。その絶え間ない爆発の連鎖に包まれ、悶えるように呻く星獣。
シナリは掌を天に掲げ、奥義『風神・旋風車』を七つ『衛星』で浮かし、一斉に星獣へ向けて撃つ。
七つの螺旋の渦が星獣を囲むように炸裂。ギュゴゴゴ、と鋭利に抉り尽くす。
「剛牙・大紅蓮斬────ッッ!!!」
更にアクトが星獣の頭上に極大の一太刀をぶちかまし、縦一閃と穿つ。ドッ!
さすがの星獣も地面にめり込む勢いで埋もれ、周囲に土砂の津波が噴き上げられた。
「ナッセとヤマミ! 今だぁッ!!」
「二人とも頼むぞッ!!」
「行っちゃえ────ッ!!」
ヤマミと一緒に併走して空を翔けながら、気合充実、万全で繰り出す全身全霊の奥義を練り上げていく。カッと輝き出すメビウスの輪。
「喰らいなさい! 私たちの三大奥義『無限なる回転』をッ!!」
「サンライトォ──・インフィニティドッキング∞──ッ!!!」
裂帛の気合いと共に、巨大に膨れ上がったメビウスの輪のような光輪と二つの円を、星獣に炸裂!!
ドッ、と星獣を呑み込んで、大規模に膨らんだ球状の旋風が獰猛に吹き荒れる。ドドドドッと周囲に衝撃波の津波が幾重に広がり続ける。
ミキサーのように無限に循環し続ける超回転力に、星獣も「グゥオオオオッ」と苦しみもがく。それでも塵にする勢いで容赦なく削り続けていく。
その様子にヒーローたちは湧き上がるように歓喜。
「き、決まったぜェ─────ッ!!!!」
「やったぞ────ッ!!!」
ドパァン!!
しかし星獣は跳ね除けるように奥義すら破裂させる。
「なっ!?」
その弾けた余波が嵐のように吹き荒れて周囲を蹂躙。なだれ込む大津波が陸地を薙ぎ払い、大地震がビルを崩していく。誰もが絶句し、奥義が破られた事に驚いてしまう。
「そん……な……!」
信じられない結果に唖然するしかなく、へたり込んでいるヤマミも呆然と、途方に暮れる。
バーニングガイも苦い顔で「……ここまでか」と苦しげに吐露。
「グオオオォオオオオオォォォオ!!」
星獣はガパァと大きく口を開けると、明々とした光が溢れた。カッ!
刹那の一筋がビシュン、と一直線に大地を裂きながら流れる。
ドズオォォ……ン!!!
遥か後方まで、数千キロ及ぶ規模の爆発光が噴き上がった。
その凶悪な破壊力は、一瞬にして多くの国を光の彼方にかき消した。
ヤマミと一緒に愕然としたまま、燃え上がる地平線を眺めていた。
しかも、星獣はその『刹那の一筋』を乱射。滅亡兵器すら凌駕する滅びの爆発光が、全世界を次々と火の海にしていく。そんな圧倒的な力を前に為すすべもなく、オレたちも破壊の光に呑まれてゆく。
「…………ッッ!」
青い地球は瞬く間に、地獄のような赤黒い惑星に成り果ててしまった……。
あとがき雑談w
ヘイン「へっはっはっは! 腹いせに乗っ取ってやったわい!」
オータム「……往生際が悪いな」
ヘイン「そこが余の悪癖よ!」クククッ!
皇帝ヘイン・エス・シュパーンは大変な野心家。
世界の平和に嫌気がさしていて、いつかは国盗りで戦争の火種をばら撒こうとしていた四首領であり、全てのヴィランを束ねる者!
……本当はアメリカではなく、大阪でイベント発生する予定だった。
たまたまリョーコに大阪で道案内してもらうのだが、ナッセとヤマミが警戒を最大限に引き上げて対峙、ってのが始まりだったんだぞ。
オカマサとドラゴリラが皇帝とは知らずに迂闊に近寄って、即退場。
ヘイン「そうそう、戦うまでもない弱者を跪かせる威圧『覇王の威圧』で町人を全員跪かせてな!」
オータム「ナッセとヤマミの全力を、ヘインは力ずくでねじ伏せた」
ヘイン「へっはっはっは! お前も「ここら辺を焦土に変えていいか?」とか物騒な事いいおってな」
オータム「しかし、ヨネ校長が割って入って、仕切り直しになった」
ヘイン「うむうむ」
その後、七皇刃とサンライトセブンで対決。エレナちゃんやリョーコもちびっと参加。
お互いに譲れぬ信念と矜持でもってぶつかりあう白熱した激戦。
最後に、一騎だけで独自に軍隊を創って国をも制圧できるという皇帝ヘインを相手に、総力戦。
ヘイン「それを、作者の馬鹿めがボツにしやがったのじゃ!!!」
グランドルフ「……いえーい! いええい! 地底ヴィランのボスだよー!
ちぇー! 地底ヴィランの設定を事細かに暴露しようと思ったのにー!」
宇宙帝Z「なんなんですか!! せっかく張り切って紹介したかったのに! なんでまだ紹介しているんですかぁぁあ!!
タキオンZソードでシバき乙してやりたいですっ!」
ヘイン「ええい! 惨殺された余の身にもなれ! あんな展開は屈辱じゃ!」
オータム「…………ほぼ噛ませにされた俺もな」(泣)
トビー「すみませんねぇ! あ、もう言っちゃいましたね~!」(笑)
いつかは活躍させたいなぁ。ボツにするには、もったいない。
つーことで、次話を楽しみにw
次話『再びナッセは別の並行世界へ転生……!』