129話「追憶! ヴィランの壊滅!」
「これが! 私たちが完成させた三大奥義の一つ!! 『無限なる回転』」
「そして喰らえ──ッ!! サンライトォ──・インフィニティドッキング∞──ッ!!!」
ヤマミと一緒に裂帛の気合いと共に、巨大に膨れ上がったメビウスの輪のような光輪と二つの円を、巨大竜グレンへ突き出す!!
襲い来る幾重の凶刃をことごとく斬り散らし! そして────!
ドギャッ!!
グレンのドテッ腹に奥義炸裂!!
メキメキと二つの逆回転螺旋が、地竜王グレンの岩石質の巨躯に亀裂を広げてゆく。その軋みにさしものグレンは「がはあッ」と、見開きながらおびただしい血を吐く。
「行っけぇぇぇぇぇえッッ!!」
ヤマミと一緒に押し切ろうと、得物を突き出し続ける。
するとそのメビウスの輪のような光輪が一気に拡大して、地竜王をも覆い尽くすほどに極大化。右端が下、左端が上とプロペラのようにぐるぐる回りながら光輪は複製され、電熱線のように幾重と重なり続ける。やがて輝くような立体の球状へと描いてしまう。
ズゴォ────────ッッ!!!
輝く球体を取り巻くように、凄まじい旋風が吹き荒れた。
その余波で吹き飛ばされる土砂の津波がドドドドドドッと吹き荒び、ヒーローたちは煽られまいと腕で顔をかばいこらえる。なおも大地は震え続ける。
「な、なんて回転力だ!!」
「まるでミキサーのようだ!!」
「圧倒的回転力! 凄すぎる……!!」
超高密度に加え超高速で循環し続ける激流に、ドラゴンの巨躯は怒涛の勢いで削られ続けていく。無限の再生すらどうしようもなく、さしもの地竜王グレンもなすすべがなかった。喰らった時から詰んでいたのだとグレンは悟った。
オカマサ……! ドラゴリラ……!
……すまなかった! こんな不甲斐ない漢で、本当にすまない────!
「あがああああぁぁぁぁぁ…………!!!!」
無限とも思える程、延々と繰り返す回転の循環に、グレンは跡形もなく塵にされてゆく。
役目を終えた光球は一気にパシュンと収縮して消えた。
後に残るは、驚くほど無音の空間…………。
「うおおっ! つ、ついにあのグレンを……!?」
「これが……三大奥義…………?」
「まさに奇跡だッ!!」
「や、やりやがったぜぇ────────ッ!!」
煙が舞うクレーターを前に、ヤマミと共に得物を突き出しながら突っ立っていた。
安心して気が抜け、グラリと体勢を崩す。それをヤマミが胸で受け止めてくれた。ガシッ!
「あなた、大丈夫!?」
「へへ、すまないぞ……」
ポタポタ滴る血。気付けば服がところどころ破け血が滲んでいる。顔面を血の帯で覆う。ハァハァ息を切らす。自分が重傷だった事にようやく自覚した。
全力疾走でグレンの猛攻を無理矢理突っ切ったのだ。ヤマミが無事に合流できるよう囮になっていたとはいえ、相手はドラゴン。ただで済むはずがなかった。だが後悔はない。
だって、アメリカに地獄が広がらなくて済むからだぞ。
これでまた二人で…………。
「おやすみ。ナッセ」
「うん……」
────ヤマミの温もりを感じながら、安らかに意識は落ちた。
その一部始終を見ていた人物が一人いた。
遥か遠くの高台で、杖をクルクル弄ぶ奇術師。そうグレンをドラゴンの化物にした張本人。トビーだった。
「ウフフッ! さてさて、あの面白い小僧……。
ああ~、そ~だったそ~だった! ナッセ君と言いましたね」
「そんな所で、なに道草を食っている?」
スッともう一人の男が現れた。
無数のベルトが巻かれた拘束具のような黒い服装。背負った得体の知れない大剣。そして感情のない虚ろな声。
トビーはにこやかな顔で振り向かず「あらぁ? 怒っちゃってる?」と軽口。
「……皇帝へイン様が、な」
「それでオータムちゃんがボクに? それはそれはご苦労様~!」
「来い。お呼びだぞ」
「いえいえ、それはお断りいたします~!」
ザワッと空気が変わった。オータムから尋常じゃない殺気が溢れ出す。
ビリビリビリビリ……、大気が焼き切られるような凄まじい威圧。
「もう一つ命を受けている」
「なんでしょう?」
「命令を無視して勝手気ままに動き回り、あまつさえヘイン様の友人であるグレン様をあのザマにした。そのような貴様に相当おかんむりだ。逆らえば消せとの事だ」
「ほうほう、それで? 皇帝へイン直属の『七皇刃』の一人であり、自称『万能叡智の接続権』オータムちゃんが、同じ七皇刃のボクを始末なんですか~~?」
オーザムは冷たい目を細める。
皇帝ヘインはアメリカを牛耳ろうとする『四首領』の一人。
全てのヴィランの頂点に立つ皇帝。その直属が精鋭部隊である『七皇刃』と呼ばれる七人のヴィラン。その戦闘力は最高峰とも言われている。
そしてその中でもオータムは最強の七皇刃らしいぞ。
「俺は無敗だ。その意味が分からんでもあるまい?」
「いえいえ~、分からないかな~?」
相変わらずとぼけるようなトビーに、オータムはピクッと眉をはねた。
彼にとってトビーはしがない小物のはず。いつでも一捻りできる。そのはずなのに、今回に限ってどうも違和感がする。
いや、今に始まった事ではない。
皇帝へインが「機を見て七皇刃を率いて国を盗る。勝手な動きは慎め」と念を押したにも関わらず、トビーはのほほんと動き回って余計な事をしてきた。
ヘイン及び七皇刃の情報をバラし、ヒーロー協会にも漏洩した。おかげで厳重警戒レベルとして監視されてしまう始末。
その上、有能な部下を焚き付けて、次々とナッセたちに倒させ、逆に成長を促してしまう始末。
おかげで組織は戦力激減して、国盗りの機会を逃してしまった。
「自称って言いましょうか? あ、もう言っちゃったですね~?」
「何が言いたい?」
カッ、とオータムの背後の上空で太陽とも見間違うほどの超高熱の眩い火炎球。ジリジリと辺り大地が灼熱に炙られてゆく。
草木があっという間に灰になり、水溜りもあっという間に蒸発。
次第に岩山がアイスみたいに溶解してヘニャヘニャと潰れていく。
「ほ~お? やりますか? じゃあ魔法を……」
トビーは杖を振るうと、何も起こらず空を切るのみ。
「魔力遮断した。お前は無力だ。……消え逝け」
「あらぁ? ボク、マジでピンチ?」
太陽はトビーへ急降下。眩い大爆発に爆ぜ、容赦のない灼熱の大津波が吹き荒れて、辺り一面を焼き尽くしていく。
一瞬にして灼熱地獄に燃え上がり、溶岩地帯と化していった。
しかし、パチンと指が鳴る音がする。
パリン、と辺りはガラスのように砕け散った。オータムは見開く。
「ネタ割れてるんですよね~~。いつの間にか自分の空間に引きずり込んで、あたかも自分が全知全能のように見せる。でもね、実は即席だから簡単に壊れる空間なんですよね~」
「な……なっ!? お前がそれを見破るとはッ……?」
これまで冷淡だったオータムが、初めて動揺にうろたえ後退さりしていく。
「最初は超苦手な空間結界で敵をクールに始末して冷血漢を気取るが、実は相当な熱血漢で大剣を振るう脳筋タイプ。それがキミの本性です」ウフフッ!
ドバッとトビーの周りにペンキのような液体が溢れ出す。シュルシュルと不気味に薄い装甲を型どり、下半身のない巨大なピエロが象られ、内部を絵の具のような液体で満たす。無数の仮面がグルグルと周回し続ける。
ピエロは「ギヂギヂッ」とカクカク顔を揺らす。その上でトビーは愉悦に笑う。
オータムは「く! この野郎ォ!!」と膨大なオーラを噴き上げ突っ込む。
「これがボクの『偶像化』です。初めまして。そしてさようなら~~」
「うおああああああああああああッ!!!!」
オータムの必死な抵抗戦が繰り広げられるが、虚しく鮮血が飛び散った。
ズズズズズ……、バラバラの肉片が黒い池の中に沈み、巨体のピエロの真下の影へ吸い寄せられて跡形もなく消え去ってしまった。
「ふう! おっといかんいかん! 魔女アリエルさんにご報告せねば~!
あっ! この世界線にはもう用がないから、玩具を廃棄しなくっちゃ~~!!
怒られちゃいます~! 怒られちゃうよ~~!!」アワアワ!
母に怒られるのを怖がる子供のように慌てながら、真下の影へズブズブ沈んで消えてしまった。
オレはナッセ。目を覚ましたら病室だったぞ。今はのんきに本を読んでいる。
なんか二日間ぐらい寝てたらしい。まだ痛む所が残っている。いたた。
「はい、リンゴ」
「ありがとうだぞ」
ヤマミがリンゴの一欠片をオレの口に入れてくれる。咀嚼すると甘味が口に広がって美味しい。瑞々しいので喉も潤うぞ。
にっこり笑ってくれるヤマミが愛おしい……。
さて、なんか最近とんでもない事件が起きたらしいぞ。
四首領ヘインたち巨大なヴィラン組織が何者かに壊滅させられて、一人残らず惨殺されていたという。
わざわざ見せつけるように無残な死骸を散らかしていたらしく、ヒーローたちはおろかヴィランも震えるほどだったという。
不審な点は、七皇刃の二人であるオータムとトビーが忽然と姿を消している事だ。
国際指名手配されているほどの二人だが、依然と見つかっていない。
他のヴィランたちはこの事に混乱しているしく、統率は依然と崩れたままだ。
見境いもなく暴れる者。ビビって出頭する者。警戒して様子を窺う者。
そして新たにボスを名乗ろうとヴィラン同士で群雄割拠する者たち……。
しかしほぼ混乱真っ只中で、ヒーローたちはそれを機に襲撃して、撃破していった。
なので以前と比べれば容易く退治できるようになってはいた。
それでも何かの前触れかと、ヒーロー協会は警戒を怠らないようにと注意をヒーローたちに促していた。
現在でも何者がやったのか調査中で、行方不明のヴィラン二人の探索も続いていた。もう消されたかもしれないが、怪しい点は逃すまいと躍起になっている。
「なんつーか、都合よく平和になったような気もするぞ」
「そうね」
窓を見やると、スッキリ青空が広がって見える。
「…………後は星獣だなぞ」
あとがき雑談w (長くなりますw)
作者「投げ出してゴメンなさい! 実は四首領ヘインたち組織の設定自体は練ってましたけど、尺の都合でナッセと絡む話はボツになりました」
魔皇帝へイン(四首領)
剣士オータム(七皇刃)
格闘僧ガヅィン(七皇刃)
槍士エイス(七皇刃)
戦士ツィリーフ(七皇刃)
僧侶サタネクス(七皇刃)
魔道士?トビー(七皇刃)
???スエック(七皇刃)
ヘイン「へっはっはっはっは! 余は威圧を放つと弱きものは跪く能力持ちじゃ! そしていざ戦う時は三だn……」
オータムがひょいと割り込み!
オータム「俺はね、最初は全知全能を騙る空間結界使いで『万能叡智の接続権』とかいうカッコ良い厨二病を自称してました!
だが『最強闘魂破壊王』でオーラ剣術をする方が得意だ。
本当はマイシと言う心躍る猛者を相手に、燃え上がる戦いを楽しみながら負ける予定だった。
まさかトビーの野郎が滅茶苦茶強いとは思ってなかった。ちくしょう……!」
ヘイン「あ、あの! まだ余が喋ってるんじゃが?」
オータム「お前は四首領って肩書きだけでも超有名だろう?
例えヘタレでも、今後ずっと名前だけでも書かれるんだから、いいよな~~!!!」
ヘイン「…………それ言われると傷つくんじゃが」(泣)
ガヅィン「オレは世界チャンプをミンチにした事で追放され、ヘインと戦って敗れて舎弟になったな。能力は『無限増殖』で、実は影を媒介にした分霊だな。オレは影にコッソリ隠れて影分身でボコる戦法が得意だなぁぁー!
でもノーヴェンの頭脳に見破られる予定だったな!」
エイス「槍士だぜぇ。こんなん萎えるぜぇ。オレは残虐な戦闘民族『ラージプートの戦士』の生き残りだぞ。だからインド政府に排除されたぞぉ。恨んでるぞぉ!
能力は『細胞変動』。体内細胞組織の萌え(活性)と萎え(鎮圧)だぞぉ! だからノーガードで刺しにいけるんだぁ! 推しは『けいおと』の琴奈ムッギだぞぉ。たくあん萌えるぜぇw
でもコハクの三大奥義無限なる回転に敗れる予定だったぞぉ!」
モリッカ「前転宙返りw 前転宙返りw」ニョキッ! ニョキッ!
ヘイン「なんで関係ないのが出るんじゃ? ワレ」
ツィリーフ「皇帝陛下に『完璧』に尽くす執事。武器は九節鞭。そして人を止めた執事でございます。体をゲル質に身を変える『粘液流動体』でございます。巻きつけばインド象も圧死させれるほど締めれます。更に鉛筆削りのように削ります。
本当はフクダリウス殿の脳筋戦法で押し切られて大気圏に飛ばされて負ける予定でした」
ヘイン「作者って脳筋戦法多くないか!?」
サタネクス「色即是空……世の理よ……。全ての色はいずれ空に還るものよ……」
ヘイン「へははっ、みな死ねば土へ還るわい!」
サタネクス「うるさい! てめーは黙れ!」喝ッ!
ヘイン「す、すまんじゃのう……」ペコペコ
サタネクス「愚僧の能力は『四臂観音』。オーラの掌による亜光速(自己申告)で敵をボコれる。
最初はドラゴリラを完封瞬殺するも、硬いエレナちゃんとかいうふざけた小娘にカカト落としされる予定よ……! 嗚呼、踏まれたかったw」
トビー「ウフフッ! さてさ~てボクの番ですねぇ。能力は『全魔術完全網羅』って感じですよ~~」
ヘイン「てめぇ……! 全部ぶち壊しやがって!」(怒)
トビー「ごめんごめ~んw てへw」
ヘイン「もういい。もう終わった事じゃ。まだ納得してないじゃがな」(諦)
トビー「ありがとうね~~! カッカカカカ~」
ヘイン「…………」イラッ!
スエック「…………」
ヘイン「最後だ。お前の番だぞ?」
スエック「…………!!」ギクッ!
ヘイン「もういいんだ。二度と出番ないじゃろうし、いっそ暴露していいぞ」
スエック「…………まだ私の設定はできていないんだ」
ヘイン「へ? そ、そうか? いやすまん……!」
ヘインたち総員「ってな訳で、短いお付き合いでしたがありがとうございます!」ペコリ!
作者「一話限り唐突に出てきて、戦いすらなく唐突に退場したけどな?」
ヘインたち「…………」イラッ!
ヘイン一同「全部てめぇのせいだ!! このバカ作者がァ!!」
どが────────ん!!
作者「ぎゃ────ッ!!」(死亡確定アル)
次話『ついに星獣現れる! ツープラトンによる奥義で倒せるか!?』