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12話「闇の世界に住まうモンスターの正体!?」

 学院の帰りてがら、リョーコに誘われて日本橋へ散策しにきたのだった。


 すると、同じクラスメイトのモリッカがいた。

 インチキクレーンゲームに苦戦していたモリッカは、自身のオーラで性能強化して強引にゲット出来るようにした。その為、焦った店長が怪しい黒服の男を引き連れてやってきたのだぞ。



 胸ぐらを掴まれたままでも、呑気な様子のモリッカは(おび)える様子もない。


「え? どなたですか?」

「俺はここの店をやってる店長だァ!!!」


 店員は店長だったようで強面(こわもて)でモリッカの胸ぐらを締めるように掴み上げている。だが当の本人はキョトンとしている。


「イカサマしてただろォ! しめて二十万払ってもらおうかァ? それから景品は全部返してもらおう!」


 無茶苦茶な要求だ。まるでヤクザじゃないかぞ!


「なんで? 嫌だよ! ゲットしたフィギュアは僕のものですっ!」

 胸ぐらを掴まれたままでも、モリッカは普通に反論する。余裕があるのか、それとも状況が分かってないだけなのか……?


「てめえ!!!!」

 店長が殴ろうと拳を引いた瞬間、その手首を掴んだ。


 ギュッと握り締められた腕は震えるのみ。手の甲の刻印(エンチャント)が浮き出ていた。

 しっかり止められて動けぬ店長は「ぐぬ……」と汗を()き唸る。


()めろ! 違法しているのはお前らだぞ!!」



 ざわつく周囲の人達。その合間にいた女生徒の二人はその様子を見守る。黒髪姫カットの生徒委員会っぽい(りん)としたヤマミと(あわ)い水色のふんわりロングのおっとりしたスミレの二人。

「あの人は……?」

「同じクラスの和久(ワキュウ)ちゃんと城路(ジョウジ)ちゃんと小野寺(オノデラ)ちゃんだね~」



「違法だとォ!? な、なんの事だ!? むしろこのガキがほいほいゲットしてる方がおかしいだろ!!」

「……じゃあ聞くが、モリッカが普通にプレイしてた以外に何かしていたか? 監視(かんし)カメラがあるなら、それで確認すればいいだろ?」


 店長は乱暴に腕を振って、手を払い除けてきた。

「うるせぇ!!! 俺がイカサマだと言ったらイカサマなんだァァァァッ!」



「え──? 普通にしてたのに、そりゃないですよ──!?」


 いつの間にかモリッカはオレの後ろにいた。速っ!?

「ええっ!?」

 リョーコもビクッと驚きのリアクションを見せた。


「な、何ィ……!? い、いつの間に!!?」

 店長は唖然(あぜん)としている。気付けば胸ぐらを掴んでたはずの手はフリーになっていた。



 冷静に保っているものの、実は内心戸惑(とまど)っていた。み、見えなかった……。


「と、ともかく。クレーンゲームを改造して、客に取らせないようにするのは違法だぞ」

「そうよ! そうよ! 絶対取れないようにしてるくせに、抜け抜けとイカサマ呼ばわりだなんてサイッテー!!」

 リョーコが叫びに叫んで(ののし)る。

 ジト目でウンザリ。頼むから(あお)らないでくれぞ……。しかし!


「ああ、そうだよな。あそこ絶対取れねーって噂の奴だぜ?」

「うん! 一万くらい使ってたけどあそこ取れなかったわ」

「他では全然ゲット出来てるのにな」

「あんたらの方こそズルしてるだろ────!!!!」

 次第に周囲の人々が共振し合って徐々に罵倒へと盛り上がっていく。そーだ! そーだ!


 ……もう止められないなぞ。鬱憤(うっぷん)溜まってたんだろうな。



「ぐ……ぬぬ……!」

 店長は顔を赤くして肩を震わせている。もう沸点マックスだ。


 指を鳴らすと、店の中からぞろぞろと黒服の男が複数現れてきた。──そして店長の足元を中心に黒い円が広がり、野次馬(やじうま)を巻き込んだまま周囲の光景を混沌に変えていった……。


 周囲の人々はその現象に騒然(そうぜん)とした。初めて見るようで驚きの声が上がっていく。



 それに思わず見開く。

「ば、バカな!! 創作士(クリエイター)でもない人まで……巻き込んだ……!?」


 あの違法店長はエンカウントする能力を持っているのか!? まさかオレ達と同じ創作士(クリエイター)? いや創作士(クリエイター)と言えども意図的にエンカウントを起こせる人はいない。こ、これは一体……?

 そういえば、イワシローはどうやってエンカウント起こしたんだっけ?


 メキメキ……、耳障(みみざわ)りな音が聞こえる。

 気付けば店長と黒服は徐々に体を異形(いぎょう)のそれに身を変えていった。肌が緑に変色し、体格が筋肉質に、そして耳が尖り、顔も醜い老人のようなシワだらけになり、両目は赤く染まり、口が横に裂けギザギザの牙が伸び、こめかみ近くに角が生える。



「な、なんなの!? あいつらモンスターになっちゃったぁ~~!?」


 大仰(おおぎょう)に驚くリョーコの反応も最もだ。


 まさか人間がモンスター化するとは思わなかったぞ。つか初めて見る現象だぞ。……いや、エンカウントモンスターが人間社会に(まぎ)()んでいた?

 ……ゲームで言えば確かトロルか? 怪訝に目を細める。


 店長トロルは下卑(げび)た笑みを浮かべ、


「くひひ!! てめぇら……後悔しなァ! 我らの秘密を知ってしまった以上、生きて帰さぬぞォ!! 全員とっ捕まえて隣国(りんこく)に奴隷として売り払ってやる!!」


 一斉に黒服トロルが野次馬へと歩み寄る。その恐怖に、

「うわああああああああ!!!!」

 人々は悲鳴を上げて蜘蛛(くも)の子を散らすように逃げていく。


 それを高圧的に追いかける黒服。咄嗟に後方に『(シールド)』を横に並べて壁を作る。それに阻まれ黒服トロルは押し出された。


「関係ない人を巻き込むなぞ!」

 杖をかざして、強く阻止する意志を見せる。


 後ろでリョーコも片手斧で構え、その更に後ろでモリッカは平然と突っ立っている。



「あぁ!? ……てめぇはァ!? よくもォ、公然で俺らの秘密をバラしてくれたな!! 絶対許さんッ!!!」

 店長トロルは野太(のぶ)い大声を響かせて睨み据えてくる。それでもナッセは鋭い目線で見据え返す。

「人間社会に溶け込んで悪さをする化け物どもめ! 隣国とはここのどこかか? つーか、この世界はどうなっているんだぞ?」


「人を化け物よばわりたァ、口が悪いにも程があるわァ!! それとも何か、ヒーロー気取りしているつもりかァ……? まずはその世間知らずの体に人間社会の厳しさを叩き込んでやるわッ!!

 者共(ものども)、やっちまえッ!!!」


 吠える店長トロルに従い黒服トロルは一斉に駆け出し、猛然(もうぜん)と襲いかかってくる。



 鋭い眼光を煌めかせ、杖の先から光の刃を伸ばし、それは曲線の軌跡を描く。黒服トロル達の合間を素早く駆け抜つつそれぞれに剣撃を叩き込み、ドミノ倒しのように一気呵成(いっきかせい)()(たお)していく。

 バタバタと地面に横たわるそいつらはボシュンと煙となって溶け消えた。


 返り血を(ぬぐ)うように剣を下方に振り払って、店長トロルを毅然(きぜん)と見据える。


 店長トロルは「ぎ……ぎっ……!」と冷や汗()じりに悔しそうな顔をする。



「わああああああああ!!!!!」

 野次馬の歓声が上がった。まるで時代劇の剣劇(けんげき)に興奮する観客(かんきゃく)のようだった。


 未だ見てたヤマミとスミレは「強いですわね」「うん!」と交わす。


「……闇の世界に住むモンスターとは言え、言語を理解できる生き物に変わりはない。もしお前に良心が残っているのなら、こんな事は止めろ! さもなくば──!」



「何をたわけた事を!! 何が闇の世界だァ? モンスターだァ!? たかが違法したぐらいでモンスター呼ばわりとか、ゲームのやりすぎでイカれたか!! この厨二病野郎ォォ!」

 激高した店長トロルはその辺の道路標識の鉄棒を引っこ抜いて、それを振り回しながら襲いかかってくる。


「くたばれェェェェッ!!」

 激情のままに物凄い膂力(りょりょく)で叩き潰さんと思いっきり振り下ろす。


 ドズッ! しかし得物は地面を穿つだけ。

「な!?」


 オレは天高く飛び上がっていた。

 落下しつつ、くるくると身を(ひるがえ)しながらその回転力で光の剣を振るい、店長トロルの全身に剣撃を数度叩き込む。その際に(きら)びやかな三日月が踊るように、光の軌跡が敵を中心に交錯(こうさく)し合う。

「ガフォォォッ!!!」

 盛大に吐血を吐き、地面に沈む。


 店長トロルは震えながら顔を上げ、恨めしそうに顔を(ゆが)ませた。

「く……くそォ……! て……めぇ……、訴えて……や…………」

 ガクリと頭を垂れ、微動だに動かなくなってしまう。


 ボシュンと跡形もなく煙に掻き消え、その余韻(よいん)が風に流れてゆく。



 店長トロルとの()()わない会話が妙に引っかかる。様子を見るに、まるで自覚なくモンスターに突然変異したように見えた。


「元々エンカウント世界にいるモンスターじゃないのかぞ……?」


 では今まで()ったモンスターとは一体……!?

 倒したイワシローも、この傾向だったのか?


 まだ謎が深まるばかり、どこか不穏な気配と引っ掛かりを覚えつつ、人々の賞賛(しょうさん)を背中に受けていた。


 しかし横たわったまま消えていなかった黒服トロルは顔を上げ「ぎ……」と恨み募るように唸り、いきなり飛び出す。

「グガアアアアアァア!!!」

 牙を剥き出しに大きく口を開け、それに反応して身構え──、


 だが横切った大きな光弾が黒服トロルを呑み込み、爆裂した。拡散する爆風が風に流れてゆく。

 思わず振り向く。なんとモリッカが(てのひら)を向けていた。……光弾を放ったのか?

 すたたたと、天真爛漫(てんしんらんまん)なモリッカが駆け寄ってくる。


城路(ジョウジ)ナッセさんですよね!! 強いじゃないですか!? さっすがですよ!」

「そ、そちらこそ……。あの気弾、フォローありがとう……」


 するとモリッカは否定するようにビシッと掌を差し出し、大仰に首を振る。


「魔法ですよ! 今の魔法ですっ!!」


 リョーコと一緒に目を点にした。

「は?」

「はぁ!?」



 ────世界規模で原因不明の生物の個体数減少。


 人間の唐突なモンスター変異。そしてエンカウント先の闇の世界。その闇の世界のモンスターの実態。……まだまだ謎は多い。

空想(ファンタジー)』とは一体なんなのか…………?


 それらが解明される日はやってくるのだろうか!?

あとがき雑談w


ヤマミ「スミレさんが行こうって言ってたから、仕方なく誘われてたけど……」

スミレ「良かったね~w ナッセちゃんの勇姿見れて~w」

ヤマミ「ばか……w」(もじもじ赤面)


ヤマミ(いつになったらナッセと一緒に歩ける日は来るのかしら……)はぁ……。



 次話『モンスターの正体をよく知るモリッカとは一体何者!?』

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