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128話「追憶! 地獄を越えるために!」

 ナッセとヤマミが揃って岩の高台で立ち、真打(しんう)ち登場のように胸を張っていた。

 それに呆然とするヒーローたち。

 満身創痍で敗戦濃厚の厳しい戦場に新しい戦力が二人現れたのには、気休め程度でだが安心できた。


「……しかし、ヒーローとして加わって半年も経ってない若い二人で大丈夫か?」


 アメリカジェネラルも怪訝にしていると、渦を巻きながら滑り込むようにトルネードヴィーナスは降りてきた。ザッ!


「聞いて! なんと、あの三大奥義の一つを完成させた奇跡(ミラクル)ヒーローなのよ!」

「な、何ぃ!?」

「それは誠か!? いや三大奥義の事は(うわさ)程度に知っていたが……」


 キャプテンジェネラルに問われ、トルネードヴィーナスはコクリと頷く。彼女は決して嘘もハッタリも言わない。ましてや気休めなど言わない。

 しばし沈黙をして「分かった。信じよう」と若い二人を見やる。

 チェーンヘルザはぽかんとする。


 バーニングガイも、瀕死の重傷で会話を聞いて「あのニンジャ・ナッセが……? そうか。完成したのか」と気張っていた気持ちが落ち着いてきた。腹が痛み、タイツにも鮮血が広がっていた。

 ダークシャドーが降り立ち「大丈夫か?」と気遣う。



「ヴィーナスから聞いてたけど、やっぱヤバそうな相手だなぞ」


 目の前に、やや巨体の恐竜の化石みたいな何かが赤い両目を輝かせて睨んできてるようだ。

 それだけでもビリビリと肌に威圧が響いてくるぞ。

 周囲を見渡せば、多くのヒーローの凄惨たる死骸が転がっていた。赤く血塗れで四肢が欠けている者もいた。思わず目を背けたくなる地獄絵図だ。


 ……やはり生半可な小手先では、すぐ殺されるぞ。


 側のヤマミヘ振り向いて視線を送る。すると彼女も察して頷いてくれた。

 オレは短剣を、ヤマミは杖を、その二つを交差するように重ねる。短剣の切っ先に太陽を象った大きな手裏剣を形成。


「っせーの!!」


 息を合わせて交差している得物を離すように振る。するとコマを回すがごとく、太陽型手裏剣がギャンッと高速回転して、円の外側に光の輪が輝きを纏って浮かび上がった。


 ゴオオオオオオオッ!!


 途端に太陽型手裏剣の周囲に凄まじい旋風が吹き荒れて、まるで小さな台風が猛威を奮っているかのようだ。

 その様子にヒーローたちは「おお!?」と驚く。

 バーニングガイも目を丸くする。

 アメリカジェネラルは「確かに凄いな! これが奥義か!?」と、トルネードヴィーナスに振るが反応がない。

「……?」



 ズウン!!


「ブルアアアアアアアアアア!!!」


 足を踏み鳴らし亀裂が広がる、咆哮と共に大気と大地がビリビリ振動する。遅れて吹き荒れる烈風が波紋のように遠くへと広がって全てを撫でていく。

 オレもヤマミも片目を瞑って、通り過ぎる烈風と粉塵をこらえた。


「グハハハハ!! 真打(しんう)ちはたかが青二才(あおにさい)(クソ)餓鬼(ガキ)じゃねぇか!! ヒーロー勢も落ちぶれたものだなッ!」


 しかしそんな侮辱を鼻で笑い飛ばす。

 それにピクッと嫌悪の眼差しを向けるグレン。気に入らねぇ態度だとでも言うように低く唸る。


「そんな澄んだ目をした青臭ぇヒーローを、俺様はこれまで虐殺してきた!!

 弱ければ蹂躙され、強ければ思うがままにできる!!

 正義(ジャスティス)ってのはなァ! 正しき心とか、優しい心だとか、じゃあねぇ!!」


 恐竜の化石のような尖った頭部が、小馬鹿にして嘲るような醜い笑みを浮かべる。

 そんな冷たく非道な言葉と威圧に、ぐっと怒りが沸く。

 無数のヒーローの死骸もあってか、彼の行ってきた事に嫌悪感もあった。


「暴力! 財力! 権力! そして勝者!! それらが『正義(ジャスティス)』の全てよッ!!」

「もういいッ!! そんな地獄を語るな!!」


 あまりにも受け入れられない理不尽な持論に吐き気がして、吠え返す。

 コイツは多くの人を無情に、笑いながら喜びながら殺してきた!! 身の毛もよだつ虐殺さえ娯楽と感じる穢れた心のグレンは、正に地獄に生きる極悪人だ!


「……でもな、てめぇはそれ以上に、誰も信じられなくて辛そうだぞ!!」

「なにぃ!?」

「暴言暴力などで武装してっけど、アンタは臆病(おくびょう)なだけの『ただの人間』だ!!」


 今までそんな事を言われなかったグレンは一気に激昂した。

 これまで卑怯者、極悪人、死ね、と罵倒を浴びてきた。そうされる事で、地獄のような世間は暴力でねじ伏せてもいいと思えた。

 先ほど言ったように『暴力』『財力』『権力』こそが、愚民や弱者を糧に地獄を生き抜く、絶対的な『正義(ジャスティス)』だと確信してきた。

 なのに、青二才の(クソ)餓鬼(ガキ)風情に哀れまれた。それがこの上にない屈辱!


「知った風な事、ほざいてんじゃねぇッ!! ブッ殺すぞ(クソ)餓鬼(ガキ)がッ!!」


 グレンの昂ぶった感情に呼応して、周囲の大地が蠢く。ゴゴゴゴ!

 覚悟を決め、真剣な視線をグレンに向けて地を蹴った。


「行くぞ!!!」

(クソ)馬鹿(バカ)が!! 潰れろ!」


 しかしグレンの操る岩山の群れが速い! あっという間にナッセを包囲して、集中砲火と押し潰す。


 ドズウウウゥゥゥン!!


 重くて巨大な岩山が極太触手のように殺到し、ちっぽけな人間一人を容赦なく押し潰して岩石の破片を散らす。

 ゴゴッと余波が吹き荒れ、ヒーローたちは思わず腕で顔を庇う。


 それにグレンは「グッハッハ────!!」と歓喜。

 いくら強力な技と言えども、術者ごと押し潰せば一巻の終わり!


 しかし押し潰していた岩石に網状のように亀裂が走り、そこから閃光が溢れた。


 バガアァアン!!


 破裂するように岩石は細切れとなって四散。

 高速回転中の太陽手裏剣を前方にかざしながら、再び宙を駆け出した。

 蠢く不安定な大地の足場は関係ない。走るたびに足裏から浮遊手裏剣を生み出す事で空中を走る事が可能だぞ。


「おおおッ!!!」

「グッ! この(クソ)野郎(ヤロー)がッ!!」


 グレンは焦りを募らせ、周囲の大地を蠢かせる。ゴゴゴゴ、と唸りを上げて岩山が無数の極太触手のようにナッセへと襲いかかる。


 バガァンッ!!


 手前に来た岩石を細切れに散らす。しかし後続の岩石の極太触手が間髪入れず襲ってくる。

 容赦なく押し潰さんと迫る大量の岩石へ構わず突っ込む。


「貫け────ッ!!!」


 バゴッ! バガガッ! バギャン! バガゴッ! バガァン! バガッ!


 破竹の勢いで岩石の極太触手を斬り散らしながら、グレンへ一直線と全力疾走。

 その凄まじい突貫力にグレンは「なんなんだッ!?」と見開く。これまでのヒーローとはまるで違う!


 悪を私刑する独善なヒーローでも、秩序に固執する偽善のヒーローでもない。

 真っ直ぐな澄んだ目をギラつかせる眼光に変えて、なにか()()()()()()()()信念と想いを一本槍へと変えて、敵を討たんとする意気。

 それを脅威と直感。


「ならば!! 圧倒的な地獄に押し潰されろォォォォッ!!」


 なんと高々と土砂の津波がドバーンと轟音を伴ってナッセへと押し寄せた。

 ヒーローたちは「やべぇッ!!」「無理だ!!」「災害級だぁあああ!!」と絶句。

 それでも気合を爆発させるようにオレは更に加速!


「おおおおおおおッ!!!」


 ドドドドドドオオオオ…………ンッ!!


 ナッセをも呑み込み、広範囲に土砂崩れが激流で行き渡っていく。

 しかし! 噴火のように土砂を噴き上げ、ナッセは太陽手裏剣をかざしながら飛び出した


「負けるかァァ──ッ!」


 流石に無傷で乗り切るのは難しく、体の至る所にダメージを受けていて血が滲んでいる。顔面にも血が垂れている。あの量と激流を強引に突っ切ったのだ。まだ激痛がズキズキ走る。

 だが、疾走する足は止めるわけには行かないぞ!


 眼前の岩山をバガァンッと斬り散らし、必死の形相でグレンを見据える。


「オレ()()はッ、そんな地獄など越えてやる────ッ!!!」


 裂帛の気合で眼前の阻んでくる岩石を、ことごとく木っ端微塵に散らし続ける。

 それが止められぬとグレンは察した。青二才にこれ以上舐められる訳にはいかねぇ!!


 ズズズズズズズズズ!!


 グレンの巨躯が胎動しながら膨れ上がって「ブルアアアアアア!!!」と咆哮と共に、巨大化していく。

 ドッと周囲に土砂の津波を広げ、荘厳と山のような竜の化石が(そび)えた!

 ムカデのように複数の腕を蠢かせ、長い体をしならせ、尖った竜の頭の四つ目は赤く輝く。


 ズズン!!


 その圧巻とも言える地獄の使者に、ヒーローたちは大きく口を開けて絶句した。

 なんと、これまでが本気じゃなかったのかッ!?


「まるで地獄から蘇ったドラゴンゾンビだァ────────ッ!!!!」


 尋常じゃない殺気を剥き出しにグレンは、ちっぽけなナッセへと見下ろし恐ろしい眼光で射抜く。

 竜の複数の腕が滑らかに踊り、鋭い爪を煌めかして波打つように振り下ろした。


 だが怯まねぇと、鋭い眼光を見せながら更に加速!


「おおおおッ!!!」


 しかしヒーローたちは「ダメだぁあ!!」「無謀だ!!」「殺される!!」と絶望を口走った。

 するとバガアッとあらぬ方向から土砂を噴き上げて、ヤマミが高速回転中の手裏剣をかざしながら抜け出してきた。

 よし来てくれた!! 信じてたぞッ!!


「ナッセェ────ッ!!」「ヤマミ────ッ!!」


(クソ)馬鹿(バカ)が!! もう一人増えたところで無駄だァッ!!

 観念して、現世の地獄に絶望するのだなッ!!」


 ナッセとヤマミを押し潰さんと、依然と勢いをそのままに複数の凶刃を振り下ろす。

 しかし二人は退かず、併走しながら徐々に互いの距離を詰めていく。二つの円と光輪が近づいて、眩い閃光を放って合体! カッ!


 なんとナッセとヤマミのかざす円を循環するかのように、∞型に光輪がうねりながら神々しく輝く。

 その信じられない光景にヒーローたちは見開いた。


「これが! 私()()が完成させた三大奥義の一つ!! 『無限なる回転インフィニティ・スピン』」

「そして喰らえ──ッ!! サンライトォ──・インフィニティドッキング(メビウス)──ッ!!!」


 ヤマミと一緒に裂帛の気合いと共に、巨大に膨れ上がったメビウスの輪のような光輪と二つの円を、巨大竜グレンへ突き出す!!

 襲い来る幾重の凶刃をことごとく斬り散らし! そして────!


 ドギャッ!!


 グレンのドテッ腹に奥義炸裂!!

あとがき雑談w


 ナッセとヤマミが繰り出した『無限なる回転インフィニティ・スピン』をコハクは視聴してしまったぞ。


コハク「…………」(絶句)


 前転宙返りでうどん魔人を真っ二つにしてたのがバカみたいに思えてきて、涙目でフルフル震える。



モリッカ「ローリングアターック!! どーん!」

コハク「ぐはぁ!」


 体を球状に回転させたモリッカがコハクに体当り。


モリッカ「前転宙返り(笑)はボクもできますよ」ケラケラ

コハク「グッ! 君のと一緒にしないでくれますか!!」


 槍でブンブン連続突きするが、モリッカはおちょくるようにひょいひょいかわす。


モリッカ「前転宙返り(笑)いいじゃないですかー」あっはっはっは!

コハク「グッ! 田中リッツさえ現実にいれば、僕だって完成させてます!」

モリッカ「へーそうなんだぁw そーなんだぁ~w」あはは!

コハク「…………」イラッ!


 その後、コハクも色々考えて完成させたらしい??



 次話『奥義の威力は絶大!! さしもの無敵のグレンさえ滅び去る……!?』

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