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127話「追憶! ついに奥義完成!」

 長年も手つかずで(さび)れてしまった廃墟(はいきょ)の工場地帯。

 ボロボロに(さび)やコケが覆う、穴ボコだらけに腐食。地面のコンクリートの亀裂から草が無秩序に生える。

 それでも人の手を離れた平穏な地帯────。


 だが、それを圧倒的な暴力が打ち破った。弧を描いて巨大な腕が振るわれ、暴風をまとって凶悪な爪が薙ぎ払う。


 ドゴオオォォオン!!


 周囲の朽ち果てた工場を木っ端微塵に四散させ、散らばる破片が烈風で流された。ゴゴゥ……!


 流れる煙幕の中から、竜を思わせる人影が現れる。

 鹿のような枝分かれした角を頭上から生やし、右腕と両足が無骨な岩石に膨れていた。辛うじて人肌を残す左腕も、徐々に岩質のソレへと変貌しつつある。

 顔面も右半分が、恐竜の化石に変わったかのように(いびつ)に鼻先が(とが)っていて、(くぼ)んだ目から紅く光っている。


「ブルゥアアアアッ!!!」


 大気を震わす咆哮。地面が小刻みに震え、コンクリート床に亀裂がビシビシ広がっていく。

 吹き荒れる烈風が粉塵を巻き上げ、石飛礫が吹っ飛ぶ。


 ────彼は人間からヴィランとなった『グレン・ブレイズ』という悪漢だった。だが、トビーという怪しい奇術師によって魔獣王の種(ビースト・シード)を植え付けられ、ドラゴン化を抑えられずに暴走を許してしまっていた。

 グレン自身はこれまで本能のままに略奪と殺戮を行ってきた為、皮肉にも理性で抑える事は不可能だった。


 地竜王グレンとして暴威を振るって破壊の限りを尽くしていると、バーニングガイを筆頭に大勢のヒーローたちが()(さん)じた。


「行くぞ!!」


 戦意を漲らせて、業火のオーラを纏うバーニングガイが爆発を推進力に、グレンへ突進。

 燃え盛る豪腕が唸り、グレンの横っ面に炸裂。


「バーニングバン・パンチ!!」

 バゴオォォン!!


 爆裂が爆ぜた。だが、グレンは吹っ飛ばず、爪で地面に食い込んでこらえた。

 その様子に、バーニングガイは驚かず冷静だ。背後から大翼のダークシャドーがバサッと躍り出る。覚悟を賭した鋭い視線を見せ、黒い両手から黒弾の雨を降らす。


 ダダダダダダダダダダンッ!!


 まるで機関銃(マシンガン)のように広範囲の地面を弾痕で穿ち、グレンの背中をも鋭く穿つ。

 グレンは獰猛に「ブルァ!」と太い右手を振るう。しかし、それを無数の鎖が巻きつく。それらは周囲に縛り付けてピンと張る。

 全身も含めて鎖に絡められたグレンは「ウググ」と震えるのみ。


数多(あまた)のヴィランを地獄の鎖(ヘルチェーン)で縛り付ける使者チェーンヘルザ!!」


 見張り台の上で腕を組む長身の男。腕に鎖が巻きつけられている。顔面に骸骨を模した白い仮面に、角のように両翼を付けた黒頭巾。鍛え上げられた筋肉質に白黒織り交ぜた紋様の全身タイツ。黒いマントが風に揺れる。


「ブルアアァァアアァア!!!」

 ドガアアァァン!!


 なんとほぼ岩石に変質したグレンが手足を広げて鎖を砕き、周囲に衝撃波の津波を吹き荒れさせた。

 その凄まじい衝撃波で廃墟の工場も草木も粉々に薙ぎ散らし、巻き込まれたヒーローたちも「うわああああ!!」と吹っ飛ばされていく。重軽傷を負い、中には死者も出た。


「チッ! 鎖が……! おのれぇぇぇッ!」


 チェーンヘルザは憤り、再び無数の鎖を巻き付かせる。

 しかし憤怒のグレンは「ウザってぇんだよ! (クソ)雑魚(ザコ)が!」と、凄まじい膂力(りょりょく)で引きちぎってしまう。逆に鎖を掴み、それを振り回す。


「うわああああ!!!」


 振り回されたチェーンヘルザはブンブンと空中を舞う。

 それを、高速で回転しながら飛んできた円形の盾が断ち切る。その盾が弧を描いて、持ち主の腕へと戻っていく。


「大丈夫か! 今回のヴィランは最大級だ! だが、これまで何度も越えられなさそうな壁を、皆で乗り越えてきたではないか! 落ち着いて戦えば勝てる!!」


 大きな頑丈な円形の盾を腕に、全身タイツのイケメンの男が(げき)を飛ばす。

 受身を取って安堵の息をつくチェーンヘルザは口元を綻ばせた。頼りになる男がまた来たと。


「やっぱり来てくれないと締まらないか。それでこそ『アメリカジェネラル』よ!!」




 荒野を見下ろしながら、空を飛ぶ女性のヒーローがいた。

 緑で統一された全身タイツに仮面。下半身を竜巻で覆い、それで高速飛行を可能にしていた。彼女は『トルネードヴィーナス』だ。

 感知能力と機動力が高く、伝令係(メッセンジャー)として遠方や圏外の地域にいるヒーローにも情報や救助依頼を届ける役目を担っていた。


「いた!」


 二人が大岩に囲まれて、何かしているのを察したのだ。



「……あと少しなのにぞ!」


 息を切らして、また短剣の切っ先に星型手裏剣を生み出す。

 それを見守っているヤマミはどことなく落ち着かない様子だった。


「ニンジャ・ナッセ!!」


 誰か降り立ってきて、振り向くとトルネードヴィーナスだった。

 女性ではあるが、やや筋肉質で大女。しかし美しい女体のラインは保持されていて胸も大きい。


「……何してるの?」

「奥義会得の修行だぞ!」


 トルネードヴィーナスは辺りを見渡して状況を把握。無数の大岩に螺旋状の抉れた窪み。どんな技かは分からないが、とてつもない威力の新技を生み出そうとしているのが分かった。


「そんな事より、今回のヴィランはとてつもなく巨大よ! あのグレン・ブレイズが地竜王の力を得て暴走しているわ。大勢のヒーローが廃墟地帯で押さえ込んでいる。少しでも戦力が欲しい。来てくれる?」

「な……!? ど、ドラゴン!?」

「なんで急に!?」


 トルネードヴィーナスは深刻そうな顔で頷いて、事情を説明した。



「だったら、なおさら行けねぇよ! 今は無理だぞ!」


 そっぽを向いて、修行を完成させるべき集中する。

 トルネードヴィーナスはそれが「臆病風で戦線を引いた」とは受け取らず、逆に「自らが足手まといだと自覚」と見て察した。

 これまで多くのヒーローへ伝令してきたが故に、相手の状況や心情を把握する事に()けていた。


 ニンジャマンと呼ばれるナッセは手数こそ圧倒的だが、攻撃力としては心許(こころもと)ない。

 それを本人は意識してたのだろうと察して、この場に留まって様子見に徹する。


「完成近そうだし、待つわ。案内する必要があるからね」

「すまないぞ」



 さすがトルネードヴィーナスだなぁと内心感嘆する。

 するとヤマミが魔法少女に変身して歩み寄ってきて、思わず戸惑う。


「な、なんだよ!? 行こうってか?」

「ねぇ、足りないって言ってたでしょ?」

「う、うん」


 ヤマミは杖をかざし、螺旋状に渦巻く魔法力が生み出された。ゴウッと地響きを伴って旋風が余波となって周囲に吹き荒れた。

 その様子に驚きつつ、彼女も密かに同じ修行をしてきたのだと察した。時々()()()()()()()のはそういうワケか……。

 彼女も必死だったんだ。その心情が汲み取れた。


「お願い! 私も一緒に戦わせて!」


 真剣な彼女の顔に、オレは頷かずにいられなかった。そして──!



 バガゴオオォォンッ!!


 並ぶ二人を前に、周囲の大岩が粉々に四散。破片は砂塵と化して旋風に流されていった……。

 トルネードヴィーナスも見開いて唖然とした。


「な、なんて……奇跡(ミラクル)なの…………!?」




 廃墟地帯だった面影(おもかげ)は既に失われ、代わりに大地がウゴゴゴと(うご)いていた。

 まるで生き物のように波打つ大地にヒーローたちは「くっ!」と汗を垂らし、不安定な足場に苦戦していた。


「もうヒーローだとかヴィランだとか、どうでもいいんだよォォォ!!! 全てだ!! 全てをブッ壊してやらァァァアッ!!!」


 全身が既に竜の化石を象る岩石へと変貌したグレンは、殺意こもる赤く灯る両眼を見せ、吠え猛る。

 それに応え、大地は牙を剥くように尖った岩山が、針地獄のように一帯に生えだす。


「がっ!」「ぐああ!!」「ぐふっ!」「がは!」「ぐおお!!」


 尖った岩山の餌食になったヒーローの多数が血飛沫を吹き上げ、串刺しされた。

 それに憤ったバーニングガイは「ぬおおお!!」と火炎の拳を乱打(ラッシュ)して岩山をことごとく爆砕していく。しかし額から血筋が垂れていて荒い息が止まらない満身創痍。

 曇った顔でアメリカジェネラルも息を切らして、グレンを睨む。


「ク……! いくらダメージを与えても元通りに! いや!」


 仰々しい竜の骨のような姿のグレンの全身から膨大なオーラが(ほとばし)って立ち上っている。

 そう、大地に根を下ろす事で地脈のエネルギーを吸い上げて自らの力に変えていた。そのエネルギー量は無限とも言っても差し支えはない。

 それにより、いくらダメージを受けようとも即座に復元レベルで回復し、更に大規模な範囲攻撃を連続で繰り出せる。


「手に負えないほど、地竜王グレンは無敵に達しつつある……!」

「冗談じゃねぇ!! こんなインチキ野郎、どうしろって言うんだよ!?」


 苛立(いらだ)ったチェーンヘルザは振り返った。だが他のヒーローたちは敗戦濃厚と察してか顔色は良くなかった。

 どのヒーローも満身創痍で、疲労困憊。もう限界に達しつつあった。


「それでも、我が子には平和な世界に生きて欲しいんだッ!! うがあああッ!!」


 明るい未来を切り開かんとバーニングガイは口から血を垂らしながらも奮戦して、岩山をドカンドカン爆砕していく。

 その憤怒の勢いが如くの抵抗すら、無限のエネルギーを得たグレンの前では児戯(じぎ)に等しいものだった。


戯言(ざれごと)ほざいてんじゃねぇ!! さっさとくたばれェ!!」


 周囲から襲い来る岩山がバーニングガイを連続でガッガッガッガッと弾き飛ばす。溜まらず「ガハアアアッ!」とおびただしい血を吐く。全身血塗れで意識が途絶えそうになる最中、絶えず岩山が蠢いて襲いかかる。すると!


「スターライト・スピンエッジ!!」


 円を描く高速回転手裏剣が無数飛んできて、岩山をスパスパ輪切りに斬り散らす。



 思わぬ助太刀にヒーローたちは「おお!」と見開いて騒然。バーニングガイも意識を繋ぎ留め、驚きの目を向けた。

 グレンは「ブルゥ……」と低く唸る。

 まるで真打ち登場のように二人の影が岩山の上で立っているのが微かに見えた。


 ニンジャ・ナッセとマジカルガール・ヤマミだった!



「待たせた!! だが、もう大丈夫ぞ!」

「うん! 後は任せて!」


 ヤマミと一緒に自信満々で不敵な面構えを見せた。

あとがき雑談w


ナッセ「ああ! 地竜王グレンと、火竜マイシが睨み合ってるーッ!!」


 ゴゴゴゴゴゴ!!


グレン「(クソ)アマ! てめぇに地獄を見せてやるよ!!」

マイシ「おう! やってみるし!」


 二人はメラメラと好戦的にぶつかろうとする。火花バチバチ!

 なんと二人はゲーセンで格闘ゲームをやり始めたーっ!?


グレン「うおおおおおお!!!」

マイシ「かああああああ!!!」


ナッセ「なぁ? 必殺技打たないのかぞ?」


グレン「話しかけるんじゃねぇ! 殺すぞ!」

マイシ「うるさいしッ! かああああ!!」


 確かに二人は白熱しているが、なんと一度も必殺技を出さず、打撃だけでボコスカやっていたんだぞ!!

 必殺技を出そうとすれば必ず失敗して、不利になる。

 なので延々と強パンチと強キックのみの打撃勝負だぞ。


ウニャン「だから脳筋は困るよ。ワタシには理解し得ないかな」

ナッセ「オレもだぞ……」



 次話『ついに真打ち登場! 無敵に等しいグレンを倒せるのか!?』

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