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125話「追憶! 三大奥義の全貌!」

 暖かい朝日が、並ぶ住宅地と間を縫う草木をリフレッシュに映えさせている。

 その中の一軒の橙色の屋根が特徴の二階建てのハウスが、オレたちの住んでる家だぞ。


 カーテンを開けると、薄暗い寝室に明るい日差しが差し込む。

 未だ眠気が抜けてなく起きるのも億劫(おっくう)だ。


「おはようナッセ」

「お、おはよ……」


 思わずドキンとした。


 暖色のパジャマパーカーを着たヤマミが眠たい目を(こす)りながら(ほう)けてる。

 胸のラインが少し膨れていて、首元の鎖骨のラインが覗いている。そして幼げを見せる童顔。より色っぽく見えた。

 朝立ちが更に強くなっていくのを感じ、布団をぬぐい去らず隠し続ける。バレないかとドキドキ焦る。


「私朝飯作りに行くけど、二度寝しないでね。今日は……」

「うん。一緒に図書館だろ?」

「ふふ」


 微笑むヤマミはスリッパを履いて寝室を出ていった。ふう……。

 しかし数年も一緒に寝てるなんて、今でも夢みたいだ。ふと目が覚めたら、元の世界の寂しいマンションの自室に戻ってたとか嫌だなぁ。現実であって欲しいぞ。




 朝飯と身支度を済ませ、暖かい朝日を浴びながら外に出る。

 ヤマミと一緒に玄関を出ると、平らな草原にタイル拵えの一本道。すぐ道路が視界に入る。その両側の歩道には等間隔で木が並んでいる。側で所々車も止まっている。


「おはよう。ナッセ氏とミズ・ヤマミ。夜はお楽しみだったかな?」


 隣の家に住んでいる気さくな金髪長身男性だぞ。側にウェーブかがった金髪ロングの美女がニッコリ。更に風車を手にした女児がいた。

 彼らは夫婦で陽リアっぽいぞ。男はマゾケル。その妻はサドミ。風車の娘はノーマ。


「ナッセが疲れてたので、一緒に寝ました。夜更(よふ)けにゲームなんかできません」

「ああ。ヒーロー活動したからな。ゲームはまた後でいいぞ」

「ホワイ?」


 ……なんか首傾げてきたぞ? なんか妻と顔を見合わせている。


「ハハハ! そうかそうか。夜のゲームもたまにしろよ?」

「あ、うん……」

「目が悪くなるから、寝る前はダメよ?」


 ヤマミの(たしな)めに、なんか怪訝そうに見てくる。


「コンピューターゲーム?」

「イエス! それがなんだってんだぞ?」

「セックスじゃなくて、テレビゲーム? 合ってる?」

「テレビゲームイエス! ……セックスって?」


 すると突然マゾケルが頭を抱えて「オーマイゴッド!!」と飛び上がる勢いで絶叫し始めた。

 サドミも「なんてこと! 未だ一緒のベッドなのにありえない!」と首を振りながらオーバーリアクションで嘆き始めた。


「オーケーオーケー。でもキスくらい、もうしてるよな?」

「あ、ノー。まだそんな年じゃないぞ」

「キスって、男女で唇重ねる行為ね。それはしてないわ」


 なんか終末の世を見てるかのような絶句した顔を見せる二人。

 大騒ぎし始めて、周囲の人達が集まってくるので慌てて抜け出した。な、なんなんだ? なんでそんな騒ぎに??


 木が等間隔で並ぶ歩道でのんびり歩いていると、ヤマミは恥ずかしそうにこちらを見てくる。


「ねぇ? キスとかセックスとか普通なの?」

「あ、いや、アメリカ式だからね。日本とは全く違うから」

「それもそうね……」


 これ以上なく頬を赤く染めて(うつむ)くヤマミ。チラチラ流し目する。(とうと)い……。


 でもやっぱヤマミはその手に関して無知なんだ。だから駆け落ちしたり、相部屋を選んだり、これまで唐突な行動を起こしていたんだ。

 もしキスとセックスが当たり前だと答えたら、恐らく真に受けるだろう。


 普通なら「バカ! エッチなんかする訳ないでしょ!」と突っぱねるし、そもそも一緒のベッドで眠ったりしないという。




 バスや路面電車を乗り継いである地域に着くと、ヤマミに(すそ)を引っ張られて立ち止まる。


「ここ!」

「うわぁ……。ここか。大きいなー」


 神殿風に円柱の柱が外壁前に並び、荘厳(そうごん)と建っている。入ってみると本棚が敷き詰められたような広大な空間が目の前に広がったぞ。


「ウェルカム。ここでは静かにね」


 カウンターで赤黒いフードを着た奇妙なお婆さんがお辞儀(じぎ)する。

 ヤマミと一緒に歩いていると、天井まで高い本棚が等間隔で並んで列になっている。その間を歩いていると薄暗くなってきて薄気味悪いぞ。

 ヴィランの悪意とか気配はないから、安全なんだろうけど。


「気になる本があるのかぞ?」


 ヤマミは頷く。奥行きの本棚へ着くと左右に道が見渡せる。……一番後方か。

 本も取り出さず見つめてるだけのヤマミが気になった。するとようやく本を取り出したかと思ったら、他の本も取り出す。何を思ったのか、あちこち本の入れ替えを繰り返す。

 すると並んだ本のタイトルの最初の名前が浮かんだ。英語で『三大奥義の間』と書かれていたぞ。


 なんと本棚の隙間から光がこもれでたと思ったら、振動を立てながら本棚が変形していってポッカリ入口のように暗闇の穴が開いた。

 潜ると、唐突に明かりが広がって広い空間が(あら)わになった。


 眼前には大きな壁画があったぞ。思わず見開いたぞ……。

 そこは三大奥義のそれぞれの壁画が記されていたからだ。下に英語で説明が書かれている。


「『賢者の秘法(アルス・マグナ)』『無限なる回転インフィニティ・スピン』『超越到達の領域トランセンデンス・ゾーン』ね」

「凄い……! 壁画だけでも奥義って分かるぞ……」


 ゾクゾクと体が震え、汗が頬を伝う。


「どれも難易度高いわね……」

「もしかしてオレのために?」

「うん。でも私も強くなりたいから」


賢者の秘法(アルス・マグナ)

 最高峰の錬金術。元々は錬金術士(アルケミスト)が会得するS級高等魔法系スキル。

 自然霊など高次元の力を限界まで収束させて圧縮して擬似的な『賢者の石』を即席で作る。

 これを使えば他のスキルを極限にまで増幅してパワーアップできる。

 ただし五体満足で無事に完成まで達するに数十年の鍛錬が必要。それ故に会得者は限りなく少ない。


「……これ師匠(クッキー)がやったヤツだ」



無限なる回転インフィニティ・スピン

 回転の力によって力場を収束させて一点に束ねる奥義。

 極めれば最限りなく威力を高め続け、万物必壊にも到れると言う。

 体や武器の動きだけではなく、オーラなどエネルギーの流れも一致して回転の力に当てはまらなければならない。その際に生じる強い反動を上手く制御するかが課題。


超越到達の領域トランセンデンス・ゾーン

 限界超えるほど集中力を高める事で、時間が止まったような超感覚を得る。その状態で自分だけが通常通りに動ける超高難易度会得スキル。

 これを会得すれば、刹那の間に複数回の攻撃も可能だ。

 ただし、その際にのしかかる恐ろしい負荷をどうにかしなければ自滅爆散するのみ。故に会得者はほとんどいない。


「この中で会得しやすいのは『無限なる回転インフィニティ・スピン』ね」


 同じく思った。

 割とやり方が簡単そうで、極めれば超強力な奥義にも昇華できるらしい。




 どこか地平線まで広々とした荒野。そのままの自然で殺風景だ。あちこち岩山が突き出ており、大小の岩や木々が(まば)らと並んでいる。


 大岩目かげて高く飛び上がり、急降下しながら前転宙返りしたまま小刀を振り下ろす。


「スターライト・ローリングスライサー!!」

 ザンッ!!


 一周するようにオーラの軌跡が弧を描いて、標的の大岩もろとも地面を裂く。

 まだ体が前転する惰性(だせい)を抑え、なんとか受身を取って着地。


 ズズゥ……ン! 大岩が左右に割れる。


「やった! すごい!」


 ヤマミが声を張り上げる。

 はぁはぁ、と息を切らし「いや……」と否定する。

 確かに今のヤツでも、それなりに強い技だ。今後の戦力としても使える。だが!


「こんなもんじゃないと思うぞ! この程度で奥義だったら、誰だって会得できちゃう」

「あ、それは言えてるわね…………」


 ヤマミは顎に手を当てて顔を曇らす。

 それ以降も「これだ!」と言える奥義は作れなかったぞ。ちくしょう……。




 ──夜景の都会。そこでもヴィランの暗躍は日常茶飯事で繰り返されている。


 今度は六本の腕を持つ黒い蜘蛛闇男(スパイダークマン)だ。全身タイツで仮面は八つ目で模している模様。四つん這いでビルの外壁などに張り付いたり、アクロバティックに驚異的な身体能力で飛び回るぞ。

 常に群れで行動して、糸で捕まえた獲物の血肉を溶かして(すす)る肉食ヴィランだ。


「クーモッモッモ! 大量繁殖してアメリカを支配してやるぜー!」

今宵(こよい)もいっぱい獲物を狩るぞー!」

「クーッモッモッモッモ!!」


 出陣すると、居合わせた他のヒーローと共同で戦う事になったぞ。


「おお! ニンジャ・ナッセ! また共闘とは嬉しいぜッ!!」

「フ、今日も頼りにしてるぜ!」


 炎を模したスーツの大男バーニングガイ。そして口と顎があらわになった仮面の黒タイツ男ダークシャドー。

 今日が初めてというわけではない。

 ちょくちょく居合わせるヒーローの中の二人で、顔見知り。



 敵意を見せた蜘蛛闇男(スパイダークマン)は口から糸を吐いてきて、慌てて避ける。やっべぇ!


「爆砕しろ! バーニングバン・パンチ!!」


 豪快に火炎を燃やした拳で、尾を引きながら敵を殴る。その瞬間ドンと大爆発。

 負けていられないぜ、とダークシャドーは前腕から黒いレイピアのような突起を生やす。ジャンプしたと思ったら前転宙返りで地面を裂きながら突進。


「ダークフェンシング・スピンホイール!!」


 軌道上にいた蜘蛛闇男(スパイダークマン)をまとめて三枚おろしに裂く。スゲェ……。

 ってか、やっぱ似たような回転技持ってるよな。


「うおお──ッ!! バァーニング・トルネードッ!!」


 バーニングガイが両腕を伸ばして自転を繰り返すと、炎の竜巻が轟々(ごうごう)と天を衝くように噴き上げて、蜘蛛闇男(スパイダークマン)を数人(ほふ)っていく。

 ……凄いと思うけど、これが奥義かっていうと微妙だなぞ。


 なんかこう、誰も真似できないようなのが……! ダメだ! 思いつかねぇ!




「おつかれさん」


 夜遅く帰ったら、オモチャの風車を持ったヤマミが微笑んでいた。

 食卓で温かいスープにホッとしていると、風車が気になった。


「あ、これね、隣の娘ノーマちゃんからもらったの。一緒に遊んでいたらね」


 カラカラ、回りだす風車。

 じっと見つめていると、ふと何かイメージが浮かび上がった。掌から、光の手裏剣を生み出してクルクル回し始める。


「あ、閃いたかも!!」

「え?」

「ヤマミのおかげだぞ! ありがとう!!」


 思わず歓喜したら、ヤマミもじんわりと(ほころ)んだ笑顔を見せた。

あとがき雑談w


 晩にリョーコがマンションの部屋へ帰った時、マミエがじっと待っていた。


リョーコ(なんだか猫みたい♪)

マミエ「……お菓子まだある? もっと食べたい」

リョーコ「え? ま、まさか!!」


 慌ててキッチンへ向かうと、隠してあったはずのスナックやチョコなどの外袋が散らかっていた。


リョーコ「あああ~!!! 楽しみに取っといたのに~~!」

マミエ「美味しかった」

リョーコ「勝手に食べたらダメでしょー!!」

マミエ「退屈。腹減った」

リョーコ「コンビニで買った飯、冷蔵庫にしまってたでしょ!?」


マミエ「チンして食べた。でもお菓子の方が美味しい」

リョーコ「分かるけどね~! でもあたしに聞いて!!」(泣)


 その後、リョーコは帰る時に多めのお菓子を買って来る事にした。


マミエ「美味しい」もぐもぐ!

リョーコ「ってか、毎日大量に食べてない?? 太るよ?」

マミエ「美味しい」もぐもぐ!

リョーコ(……しかし体型変わらないのが気になる。くぅ~羨ましい~)



ヤミザキ「お前ら、なせ太っているんだ??」


 数人ほどコンパチ男は風船のようにまん丸になっていた。ぷくー!

 だらしないぞ、とプンプン憤りながら腹を突っつく。


 パァ────ン!


ヤミザキ「ギャ~~!! 破裂した~~~~!!」


 ※本編とキャラが違っていますw



 次話『ヴィランの中でも最悪なあの男が強襲!!』

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