123話「追憶! ハワイでエンジョイ!」
入り江と呼ばれる曲線を描く砂浜。それに沿うように白い高層ビルが建ち並ぶ。
透明感のある青い海。南国っぽい木々も瑞々しい。青空の太陽がこれらを輝かせている。
……何度も並行世界を渡ってきたというのに、こんな海外は初めてだぞ。
そんなハワイの高層ホテルにて、相部屋でヤマミは再会を喜ぶように背中から抱きついてきたぞ。
背中からヤマミの温もりが感じられた。顔を見合わせると、彼女の顔はとても美しくて愛おしく思わせる色っぽさを感じさせた。
頬を赤らめさせ、流し目っぽくこちらに視線を合わせてくる。
一旦、目を閉じてからパッと明るい笑顔を見せた。
「ナッセ! 本当に嬉しい! また会えて良かったわ……!」
今度は真正面からギュッと抱いてくる。
一体化したみたいにヤマミは抱きしめてきたまま動かない。
……正直言って、唐突な展開だらけでついていけない事が多い。
こんな時でもなければ、オレは間違いなく顔を真っ赤にして慌てていただろう。溢れるほど嬉しかっただろう。
それでも柔らかい温もりにドキドキしながら安心していく。
でも勝手に学校を飛び出して、親に無断で海外旅行みたいな事してもいいのかな? 先生や親は怒るだろうな。
……いやヤマミの親父が全部燃やし尽くしたんだっけ?
まるで実感が湧かないぞ…………。
ヤマミは離れる。でも両手でオレの両手を包んでくる。
「…………ゴメンなさい。私の親父が當山県を滅ぼしてしまった」
「でもまさか、いきなり焼き払うなんて思ってなかった」
「私の親父、いえヤミザキはそれでなくても小さな村を犠牲にしている。人知れず滅ぼされた村は数え切れないわ」
そんな極悪人なのか……?
いやヤマミさん自身も殺されてるし当然か……。
つーか、四首領って人々をゴミに見るほどヤバい連中なのかぞ?
────午後二時三十四分。ショッピング。
水着がたくさん並ぶ棚、それは数段もあって敷き詰められている店。
ヤマミに引っ張られてショッピングに来ていたぞ。ちょっと頭の整理ががが……。
「ねぇ、どれがいい?」
ヤマミは両手にビキニとか柄違いとか持って、首を傾げてくる。
思わずその愛くるしさに顔が熱くなってくるのを感じる。まさか女の子から水着選び任せられるとか、人生初めてだぞ。
もじもじ恥ずかしながらも、チラッと別の方向を見やって指差す。
────午後三時十七分。ビーチで海水浴。
ざぽーん! 澄み切った青空の下、透き通った水飛沫が舞う。
ヤマミははっちゃけた笑顔で、白い肌と綺麗なスレンダーのラインを踊らせている。そして胸部を一周した黒い帯に、股を覆う三角形の黒いパンツ。
……マジで刺激強すぎたぞ!!
本当はガン見しちゃはいけないんだけど、本能からか視線を逸らす事が難しいぞ!
いや、チューブトップの水着選んだのオレなんだけどね! うおおおい!
バシャバシャ、夢中で水を掛け合ってはしゃいでしまったぞ。
もうなりふり構わず楽しむ事にした。
親も学校もゴメンなさい! もう無くなってるけどゴメンなさい!
しかし、ハワイのビーチで女の子と一緒にはしゃぐなんて生涯初めてだもん!
「ごめんなさいね。無理に付き合わせちゃって……」
「う、ううん……」
黒いチューブトップと白い肌で白黒が映える美しい体のヤマミが振り向いて、儚げな笑顔を見せていた。
肌にブツブツ付いた透き通った水滴が瑞々しくて色っぽさに拍車をかける。
下を見れば、海底が見えるほどに透き通った水色の浅瀬。まるでガラスの液体みたいだぞ。
多種多様なサンゴ。しかも熱帯魚っぽい綺麗な魚が泳いでいた。目が潤うくらい感動的な光景だったぞ。
「思ってみればハワイなんて来た事なかったなぁ」
「あらそう? でも良かったわね……」
ヤマミの柔らかい笑顔。それだけで心が浮き立つ。
────午後五時二十五分。夕日染まる海を見て黄昏る。
橙に滲んでくる空。海の彼方に沈む太陽。
ピンクがかかったグラデーションの光景が脳裏に焼き付くほどに美しかった……。
「とは言え、お互い方法は違うかもだけど『過去へ遡りつつ並行世界を渡れる力』がある。だから何度も学校へ行くのは効率悪いわ」
「いや……それはそうなんだけど」
ヤマミは黒いロングをサラッとかきあげ、キラキラと水滴が飛び散った。
「それに『星獣』だっけ? このままじゃ人類が滅んで未来がなくなるわ」
「うん……」
「星獣ほどではないけど、最低でも四首領ヤミザキにも勝てるようにならないと、次の並行世界でも同じ結末が待つ」
沈む太陽を逆行に、ヤマミの真剣な顔が凛として映える。
思わず息を飲む。
確かにこのままじゃ、どうしようもできない。
「気持ちの整理をして欲しかったからハワイに立ち寄った」
「……じゃあ本当の目的が?」
ヤマミは目を瞑る。そして決意したかのように真剣な双眸を開く。
太陽も地平線に沈みかけだ。薄暗くなっていく空が哀愁を漂わせる。冷たい風が肌を撫でる。
「このまま海外を回って見聞を広めながら、武者修行していく!」
マジか、と思わず見開いて息を飲む。
────午後八時二十分。相部屋でくつろぐ。
大窓から、キラキラと都会の輝きが美しく夜景が映える。
ヤマミと一緒に相部屋に戻っていた。互いにバスローブを着ている。晩飯と入浴はもう済ませている。
バスンとヤマミはベッドに腰掛けた。
そして隣を手でポンポン叩いて、こちらを見つめている。
……これセミダブルだ。
唐突な展開で思考が置いてかれて気付かなかったが、これって年齢的にイケないのでは……?
でもヤマミはお構いなくポンポンと叩き続ける。なので、仕方なく少し離れた隣に座った。
しかし不意に近づいてきた。顔が近い。どきっ!
「落ち着きなさい」
「う……うん……」
まだちょっと整理が……。どきどき……。
「あなた、英語話せるようになりなさい!」
「えっ!?」
先生や親から言われたかのように、身が竦んでしまった。……苦手な科目だコレ。
何度も転生しているっていうのに、未だ身に付いていないんだよな。
するとヤマミは笑む。
「大丈夫よ。日本語と英語を一緒に考えず別々と考えて。まず英語だけで慣れましょ。手伝うから」
ヤマミはまず世界共通語である英語をしゃべるようになった方が、これからの転生でプラスになると言う。
でも不穏にとある考えがよぎる。
「あのさ、もしかして……」
「うん?」
「この並行世界は見捨てるって事? このまま滅びても?」
ヤマミは儚げに目を逸らす。
「…………勝てないでしょ」
────午後九時四十八分。消灯。
暗い相部屋。セミダブルでヤマミと一緒に寝ているが、互いに背を向き合っている。
これまでの情報が多すぎて頭が覚めちまって、なかなか寝付けない。
ヤマミの悲しげな顔で呟かれた一言。
《勝てないでしょ》
そりゃ現実的に今のオレたちじゃどうしようもない。
いや、これまでも並行世界で何度も何度も滅亡を目の当たりにしてきた。でもなぜか今回は躊躇ってしまう。
しかし、前の並行世界でランサーだった頃、ただの一撃も当てる事もできず、理不尽な天災レベルの攻撃で瞬殺された。
そして今回はヤミザキが県ごと滅ぼした。
……今は逃げたからこれだけど、次の並行世界でも同じような事は起きるだろう。
ヤマミの言ってる事は至極現実的だ。
この世界の滅ぶ運命を受け入れて、武者修行に全てをつぎ込んで大幅なレベルアップを図る。そして次の並行世界にも持ち越す。
生まれ変わっても、これまで得た知識と経験とスキルは引き継げる……。
それを繰り返せば、これまで越えられなかった壁もいつかは破れるかな?
運命の鍵だって『オレのレベルが低いから』とか言ってたしな。
より望みを叶える為にも、もっとレベルを上げなきゃいけない、ってのは分かってるけどぞ……。
「寝れない?」
声に気付いて振り向くと、ヤマミも悲しそうな顔でこちらに体を向けていた。こちらも体の向きを変えて、互いに見合わせる形に持っていく。
「……私もなの。正直不安」
「うん。オレも……」
「四首領ヤミザキは恐ろしく強い。私にとって最大の難関。本当はあなたにも力を貸してもらいたいけど……」
本当は巻き込みたくないと言いたげだった。
オレもものすごい不安で心が押し潰されそうだ。だがそれは彼女も一緒かも知れない。
「なぁ、もし全部終わったらどうするんだぞ?」
ヤマミは目を丸くする。
やはりヤミザキと星獣が片付いて、無事未来を切り拓けた後の事は考えていなかったようだ。
オレも混乱してたから気付いていなかった。でもふと思ったんだよな……。
静まり返る部屋。キラキラと美しい夜景が大窓から覗く。
ハワイ……。
これまで多くの並行世界を渡ったっていうのに、その美しさを知らなかった。
並行世界なんかよりもずっとハワイの方が近所だ。なのに、行った事が一度もなかった。
「ハワイ……、美しかった…………」
「うん」
「あのさ、実は多くの並行世界を渡っているのは『異世界へ行きたかった』からなんだよな」
ヤマミは綺麗な唇を動かし「異世界……」と呟く。オレは頷く。
そして話を続けた。
夢のない現実のつまらない世界から抜け出して、ファンタジー溢れる異世界で夢を追いかけたかった事。
そして気さくな仲間と明るく人生を謳歌し、一緒に夢を追いかける。
そんな風に充実した一生を、オレは過ごしたい!
かいつまむとこんな感じだった。
実際は見てきた漫画やゲームを元に、想像で組み立てた異世界を話したぞ。
それでもヤマミにとっては新鮮な話に聞こえたようだぞ。
「それいいわね……。終わったなら…………」
「…………あぁ、一緒に行きたいな」
「うん……」
ヤマミと手を繋ぎ、その安心感に身を委ねて意識は沈んでいった……。
────午後十時十二分。ぐっすり就寝。
あとがき雑談w
────男子会。
ナッセ、モリッカ、コハク、ノーヴェン、マイシ一同。
ナッセ「集まってくれてありがとだぞ。だがその前に……」
一同の視線がマイシに集まる。
マイシ「あ? なんだし?」
ナッセ「なんでさりげなく紛れてるんだぞ……?」
コハク「あなたは女性でしょう?」(キリッ!)
モリッカ「おちん●ん付いてるんですかぁ~~?」
ノーヴェン「…………いえ、ふたなりのセンも」(願望)
マイシ「あっ! あたし女だったかし? ……忘れてたし!」
ナッセ「……いや、そこは忘れるなぞ」(ジト目)
マイシ「男とか女とか関係ないし! さっさと始めるしっ!」(赤面)
ナッセ「仕方ないぞ。一緒にお絵描きするかぞ……?」
コハク「よし! 田中リッツのエロ同人描くぞォォォ!!」(理性パーン)
モリッカ「あはは! おっぱいおっぱいおっぱいっ!!」(おっぱい狂気)
ノーヴェン「メガネメガネメガネふたなりすきメガネメガネ子いいねメガネメガネふたなりさいこうメガネメガネメガネメガネガネメメガネメガネ子のふたなりはぁはぁメガネメガネメガネコガネムシメガネメガネメガネ」(特殊性癖)
マイシ「お、おう……。悪かった帰るし…………」(汗)
次話『ナッセがアメリカンヒーローに??』