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121話「追憶! ……大切な人への想い」

 ────ヤマミさんと出会った。


 彼女は高嶺の花。国内でも有数の資産家である夕夏(ユウカ)家の数多くいる子供の中の一人。

 それを知った時は流石に血の気を引いたけど、実際に関わりがあるのは親父と周りの使用人だけという鳥籠のような寂しい環境だったらしい。

 こんな富闇(トヤミ)県の中学校に来ているのも、あちこち転校しているかららしいぞ。



 黒いモヤがかかる山奥に、黒ずんだ古城が(そび)えていた。

 あちこち外壁から爆炎が噴き上げていく。内部で激戦が繰り広げられていた。


 ヤマミと一緒に廊下を駆け抜けていた。

 それを数匹の『怪物(モンスター)』がぞろぞろと阻む。炎を常に纏うバーニングミイラ。炎のオバケ、バーニングゴースト。炎の毛を纏う狼男のバーニングウェアウルフ。


「ナッセくん! 気をつけて!」

「おう!」


 星屑を散らして光の槍を手元から伸ばす。

 怪物(モンスター)数匹を、光の槍のひと振りで上下に断する。後方の怪物(モンスター)は仲間意識も抱かず、口から火炎弾を連射。


 ドガッ! ドガガッ! ドガァッ!


 爆炎が連鎖して赤く赤く爆風が広がっていく。

 しかし、すぐさまヤマミと一緒に無傷で爆煙から抜け出す。幾重に軌跡が踊り、無数の光線が走り、次々と粉砕された怪物(モンスター)は地に転がっていく。


 曲がり角の死角で待ち構える怪物(モンスター)に、ヤマミは気付いて魔法の杖(マジカルステッキ)から紫の光線を放つ。それは壁を貫通して、怪物(モンスター)の頭を撃ち砕く。

 ヤマミへ振り向いて「サンキュ」と拳を見せる。彼女は微かな笑みで頷く。



魔法少女(まほうしょうじょ)


 基本的にクラスとしては『魔道士(マジシャン)』だが、特殊な変身が可能な女子限定の創作士(クリエイター)の事を指す。


 元々、魔法を使う魔道士(マジシャン)はどうしても遠い間合いから攻撃したり支援したりする後衛になりやすい。そのため、いざという時は何もできない事も少なくない。

 故に、接戦できるタイプが必要となってくる。


 だからその為に開発されたのが、この新しい魔道士(マジシャン)(タイプ)だ。

 変身などをプログラムされた魔法陣を装飾品(アクセサリー)に『刻印(エンチャント)』して、いざという時に発動して変身ができる。

 変身後は、オーラのように魔法力を全身から自在に放出できるようになり、身体能力が飛躍的に上がる。格闘戦はもちろん、ノーモーションで魔法弾を撃てて連射もできる。

 基本得物は魔法の杖(マジカルステッキ)が多いが、ナッセのように剣や槍などの武器を具現化するのまである。


 それがアニメで言う『魔法少女』と連想され、この単語が定着する事になる。

 意外と使い勝手がよく、そういう系統の『魔道士(マジシャン)』が急速に増えているらしい。

 中には男性ながらも魔法少女を名乗るマニアックな層もある。



「霊属性……。バーニングゴーストを頼むわ」

「ああ! 任せろ」


 光の槍を旋風のように振り回し、炎のゴーストを数匹斬り払う。最後残ったゴースト一匹を一突きで霧散させる。

 ヤマミは(ステッキ)から放った光線で、バーニングミイラの上半身を消し飛ばす。

 続いて四方から襲いくるバーニングウェアウルフの群れを、薙ぎ払う閃光で一掃(いっそう)。続々と爆発四散。


「片付いたぞ!」

「こっちも!」


 ザッとヤマミと背中を合わせて、静かになった周囲を見渡す。



 ──話すと長くなるが、最初はどう接していいか分からずオドオドする関係だった。

 だが、同じ中学校に通っているし、一緒に闘う事も少なくなかった。故に長い時間はかかったが自然と話せるようにまでなれた。

 ……上手く話が合うように努力もしたけどぞ。


 その甲斐があって、個人的に心躍る関係にまでなれた。

 側にあの高嶺の花がいる幸せ。いつかは別れるかもしれない。それでも一緒にいるこの時間が一番充実するぞ。

 ヤマミさんも特に嫌々でもないらしいから助かる。

 ……なんか時々赤面して取り乱す事があるけど、基本冷静(クール)で落ち着いているぞ。




 薄暗くも装飾等を拵えた立派な広間。その王座から立ち上がる細身の吸血鬼(ドラキュラ)

 無骨で頑固そうな引き締まった細い顔。赤みかがった肌。黒い貴族服……。


「のこのこと親友の(かたき)がやってくるとは! つくづく愚かだね! この熱血吸血鬼(バーニングドラキュラ)オカマサが、キサマら糞餓鬼(クソガキ)を……」


 こいつはオカマサを騙る小物だが、それでも罪のない人を数十人以上惨殺している。

 偽者には容赦せずと、問答無用で光の槍を手に駆け出した。ヤマミも(ステッキ)から数発光線を斉射。


 ドンッ、ドドンッ、ドゴォン!


 吸血鬼(ドラキュラ)オカマサは手足と脇が爆破四散され、驚く顔を見せた。手際よく槍を振るって首をはねる。そして糸が切れたように床に倒れた吸血鬼(ドラキュラ)の体を、すぐさま槍で突き下ろした。ドン!

 それは心臓部に位置する所だった。


「オッ、オゥッ! ま、まだ話は終……オゥガハッ、ガハッ!」


 床に転がる吸血鬼(ドラキュラ)の頭は数度血を吐くと、痙攣しながら次第に動かなくなってしまった。



 吸血鬼(ドラキュラ)はほぼ不死身だ。弱点は多いが、その代わり強靭な体と異常な再生力を誇る。

 いくら手足をもがれようとも頭をはねられようとも、質量保存の法則に逆らって何度でも五体満足で蘇ってくるのはただただ脅威。

 太陽の光に晒すか、特殊な武器で傷つけるか、脳か心臓を潰すか、あるいは燃やし切るかでしか殺せない。


「ふう、終わったなぞ……」

「うん」


 ヤマミはどことなく浮かなさそうだ。それが気になった。



 その数ヶ月後、季節は秋。

 学校のどこか人気のない裏地。そこでヤマミと二人きりで会っていた。


「……お父様の意向でまた転校する」

「そっか。行くんだ…………」


 ヤマミは俯く。彼女は寂しくて辛そうだった。

 もう県内の吸血鬼(ドラキュラ)はあらかた片付いた。

 だからこそヤマミは別の地方へ転校して、また戦いを続けるのだろう。


「もう会えないかもしれない。だから……これ!」


 精一杯と突き出してきた、折りたたまれた編み物。

 それを手に取って広げるとクリーム色のマフラーだった。太い糸で編む定番のではなく、きめ細かい糸で丁重に編まれている。ほぼ衣服と遜色がない。それを首に巻くと、フワリと裾が揺れる。


「これから寒くなるでしょ? だから、と」

「うん……。ヤマミさん、ありがとう。一生大切に使うぞ」


 嬉しくてたまらず、ドキドキ胸の高鳴りが大きくなっていく。



「ナッセ…………」


 突然抱きついて、胸元に顔を埋めてきた。どきっ!

 ……ああ、柔らかくて優しい温もり。こんな感触は初めてだぞ……。


 自然と両腕を回して彼女を抱きしめた。

 天に昇るかのような気持ちで、この至福をしんみりと噛み締めた。


 しかし彼女(ヤマミ)は離れ、恥ずかしそうに頬を赤らめさせた。そして微笑む。


「好き!」



 ヤマミの眩しい笑顔。


 たった今、彼女(ヤマミ)の本当の気持ちを知った。



 ────だけど、それがこの世界で見た彼女(ヤマミ)の最後の姿だった……。




 彼女が転校した後、中学校と高校を卒業して王坂(オウサカ)府へと暮らしを移して専門学校へ通っても、彼女(ヤマミ)とは一度も会う事がなかった…………。


 吸血鬼(ドラキュラ)たちの大規模侵攻で、世界各地に混乱が広がっても、また彼女(ヤマミ)と会えると信じて想いを()せながら戦い続けた。

 専門学校の人と(きずな)(はぐく)み、親友(アクト)と一緒に激戦をくぐり抜けていった。

 その時でも脳裏にはヤマミの微笑みが()せる事なく焼き付いたままだった──。



 元気でやってっかなぞ?

 本当は会いたい。また会って積もる話をしたい。また一緒に戦いたい。


 ますます渇望(かつぼう)は募るばかりだった。


 ……しかし一向に彼女と会える気配はなかった。


 もしかしたらオレの事も忘れて、他に好きな人ができて結婚しているかもしれない。




 ────更に数年後、世界を震撼させる恐ろしい事件が起きた。

 多くの創作士(クリエイター)は唖然と見上げた。


 山のように巨大な『星獣』が大地を揺らしながら現れたのだ。

 妙な仮面から覗く両目はギラギラと赤く輝いていた。超巨大な巨躯を支える四肢が大地を割る。ドズゥゥン!

 そして背中から生える複数の龍が長い体を揺らめかせた。


「グオオオオオオオオ!!」


 その咆哮一つだけで、台風のような凄まじい烈風が周囲に吹き荒れた。建物が全て薙ぎ倒され、木々が飛び、暗雲が上空で渦巻いて稲光を走らせる。

 その光景、まるで終末の世にも見えたぞ。


「な、なんだッ!? コイツ!!」

「こいつァ……、ヤベェなァ……」


 ビリビリと肌に響く巨大な威圧。そして常に震える大地。恐怖が体を凍えさせてくる。

 長らく一緒に戦い続けてくれたアクトも刀を地面に突き刺して、苦い顔をしていた。


「アクト! こ、これどうしようもねぇぞ! 逃げるしか……」

「ハン! 吠えるだけで天災ァ……起こすレベルだぞォ? 逃げ場あるのかァ……」

「くっ!」


 ヤマミが脳裏に映る。

 もし敗れれば、この国も島ごと消える。当然ヤマミも死ぬ。


 ────オレは戦う! 覚悟は決めたぞッ!!



 ボロボロになったマフラーを揺らし、電柱ほどの柄の長さで大きな刀身を穂とする太陽の槍(サンライトランス)を手に、ありったけの勇気を奮い立たせて駆け出した。

 アクトも紅蓮纏う刀を手に追従した。


「おおおおおッ!!」



 直向(ひたむ)きな人間たちの抵抗────。

 それを嘲るように星獣は「グオオオ!」と吠え、天から嵐のような雷を降らした。荒れ狂う雷は大地を完膚なきまで穿ち続け、砕けた岩盤が浮き上がり、眩い閃光で全てを覆う。

 数万もの大勢の人がその中に消えてゆく……。


 その大規模的破壊は隣の大陸まで及び、甚大な被害は拡大していった。



 煙幕にまみれ、無数の岩山が突き出たように荒れ果てた大地。オレは血まみれで転がっていた。

 自分の命が急速に失われていくのを感じながら意識は遠のいていく……。

 それでも脳裏に、恋焦がれるヤマミの微笑みが映る。


 ヤマミさん…………! また……会…………!




 ガバッと起きた時は、万華鏡彩る量子世界(りょうしせかい)にいた。

 気付けば涙が頬を伝っていた。心配そうに覗き込む運命の鍵と魔女クッキーが映る。


「死んだ……のか?」

「ええ、見てた。あのあと人類は滅んだよ……」


 クッキーの言葉に力なく項垂れる。

 こんなにも自分は無力かと痛いほど思い知らされてしまった。

 そして辛いほどヤマミへの想いが熱く体を巡って、沸騰しそうなほど溢れた。

 それは引き裂かれるような深い悲しみの感情だった……。


「あああぁぁあぁあぁああぁぁああああ!!!!」


 頭を抱え大量の涙を流し、想いを吐き出すように慟哭(どうこく)した。

あとがき雑談w


 ────女子会。

 ヤマミ、リョーコ、エレナ、スミレ一同。


スミレ「恋バナいく? いっちゃいますか~?w」

リョーコ「えー! やだぁ! あたし腐女子だし、恋なんかムリムリー」

エレナ「ナッセ好きー! ベロチューしたーい!」キャハw

スミレ「大胆だねぇ~w」


ヤマミ「直球すぎ! アンタは黙ってなさい!」

 ペシン、とエレナの額に軽くチョップ。


エレナ「いったー! ジャマミの癖にッ! じゃあナッセと何がしたいのッ!?」

ヤマミ「あのね……《自主規制》//////」

スミレ&エレナ&リョーコ「うひぁー//// やめやめやめぇー/////」


 その後、スミレ&エレナ&リョーコはギンギン目が冴えて、寝付けなかったとさ……。



 次話『いきなり駆け落ちィ!? 大胆すぎィ!? えええ??』

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