118話「追憶! 魔女クッキーとの邂逅!」
────元の世界から、三載九七五〇正四〇〇〇澗もの離れた並行世界!
ウゴゴゴゴゴゴ…………!
唖然と上空を見上げると、青空を覆い尽くすように浮遊リングで囲む鋼鉄の巨大な卵が太陽を隠していく。その大きさは無駄に圧倒的で、この大阪全土を影で覆うほどのものだぞ。
「え、映画で似たもん見たけど……、で、でかっ……!」
ゴクリと息を呑む。でも、なんでタマゴなのだ……?
すると鋼鉄の巨大卵から散らばるように、小型の鋼鉄ヒヨコみたいなのが数千機と飛んでくる。
つーか、風呂で浮かすあの黄色いアヒルだかヒヨコだか分からないオモチャに酷似しとるぞ……。
クチバシの部分からビームが連射される。
ババッ! バッ! バッ! バッバッ! ババッ!
ビームの爆撃で火花散ってあちこち爆破されていく。車が舞い、ビルが傾き倒れ、火の手が上がり、黒煙が所々立ち昇る。
うわああああ、と悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。
ふざけた形状のくせして、破壊力はキッチリ凶悪なのな……。
自衛隊の戦闘機が数十機向かうが、攻撃はことごとく淡く光るバリアに遮られる。
逆にビームの嵐で自衛隊の戦闘機が次々撃墜されていく。
そんな圧倒的な戦力差に思わず身震いする……。
こっちにも鋼鉄ヒヨコが数十機ビューンと飛んできて、咄嗟に左手に生の魔法と右手に死の魔法を生み出し、カッと見開く。
「究極混沌魔法ッ!!」
両手を合わせて撃ち出された漆黒混じりの極太光線が一直線と伸び、その軌道上の鋼鉄ヒヨコをバリアごと貫通してドガドガガンと派手に爆ぜた。
よし! 効いた!! ネタ魔法だけどぞっ!!
……と思ったら、まっすぐ突き進む極太光線はそのまま、バリアをも突き破り鋼鉄の巨大卵の脇を貫通。そこからドガンドガンと周辺の外壁から火を噴きまくっていく。ボン、と大規模に爆炎が上がる。
多分、内部で宇宙人慌ててるだろうなと想像に難くない。
「ん……、いや!? ちょっ待て待て!! こんなネタ魔法にそんな威力が?」
ズキッ、さっきの魔法の反動で身体が痛む……。
これ思ったより負担デカいな。だからこそ究極魔法ってか……?
すると、怒り狂ったのか鋼鉄ヒヨコが無数とこちらへ殺到してくる。怒涛のビーム嵐が飛び交ってきて、思わずオレは「ひょわああああっ!!」と逃げ出す。
ドガガン! ドガ! ドガガ! ドガガ! ドガガガン!
絨毯爆撃に追いかけられ、息を切らしながら必死に疾走魔法で走り続ける。それを執拗に追いかける鋼鉄ヒヨコ軍団。なおも絶え間なくビームの嵐が、周囲の道路やビルを穿っていく。
「なろうッ!! 究極混沌魔法!!!」
振り向きつつ、巨大卵に向けて両手から漆黒混じりの極太光線を撃つ。すると鋼鉄ヒヨコは一斉にバリアを張って、一直線と軌道上を塞ぐように並ぶ。
げげ、そう来たかっ!! 捨て身の多重壁ェ!
ドガガガガガガガガガ────ン!!
それでも容易に極太光線は数百機もの鋼鉄ヒヨコ編隊を殲滅させ、鋼鉄の巨大卵へと目指す。すると六角形の分厚いバリアがピキンと阻む。でも、それすら容易に破ってまたもや貫き去っていく。その風穴からボガーンと爆炎を吹いて卵は揺れながら少し傾く。
「痛っ!」
そうそう連発できる魔法じゃねーらしいが、ちょっと火力強すぎィ!
《ク……! お、己……!! 地球程度の文明では我に敵わないだろうと高を括ったが、まさか伏兵がいるとはな……! 日本の自衛隊も恐るべしか……》
「あ、いや! オレ、自衛隊じゃないからね?」
ブンブンと手を横に振って否定する。
ってか普通に日本語で喋ってるし!?
もしこれが映画なら世界観ブチ壊しじゃねーか!
《よかろう! ならば最終形態で、貴様ら自衛隊ごと日本を焼き払ってくれるわッ!》
おい話聞けよ! ……ってかなに? 最終形態って??
《我が乗組員全てを生け贄に捧げ────、効果を発動ォォォ!!》クワッ!
《ちょっ》《待て待て》《なに勝手自我を持ッ……》《グエッ》《グエエエェェ》
……なんかアッチでも、予測不能な事が起きてるみたいだな?
勝手に生け贄要員にされた宇宙人の方々には気の毒だけど……、なりふり構わなくなったなぞ……。
宇宙人全ての血肉を喰らい尽くした鋼鉄の卵は、怒りに満ちたかのように高熱に赤く変色し、ピキピキと外壁がパズルのようにパーツに剥がれていく。
その隙間から閃光が帯となってこもれでる。それは放射状に放たれているように見えた。
バァンッと外壁のパーツを飛び散らせ、それは地上に降り注いで破壊を撒き散らしていく。並み居るビルも薙ぎ倒され、高架橋も砕け、道路が穿り返され、悲惨と火の手があちこち噴き上がっていく。
なんと巨大なニワトリ型の機械獣が翼を広げて「コオオオ」と唸りを上げた。
もう完全に世界観ブチ壊しにかかってるなぞ!
「先手必勝!! 究極混沌魔法!!!」
我ながらバカ一つ覚えだけど、極太光線を撃つ。
大気を震わせ、威光を放ちながら一直線とニワトリ機械獣へと目指す。しかし大きな翼で薙ぎ払い、巻き起こる烈風と共に光線は軌道を変えて明後日の方向へ飛んでいってしまう。
思わず「な!!」と見開く。汗が頬を伝っていく。
痛みもさることながら、両腕に痺れが伴い始めてきた。やべぇ……。
《……我こそ宇宙機獣王メカニワトーリだ! この程度効かぬわっ!》
なんだその安易なネーミング。本当に宇宙人が作ったのかぞ?
だってニワトリだもん! 宇宙にもニワトリが普通にいてたまるかいっ!!
メカニワトーリが両翼を広げて吠えると、暗雲で覆い尽くした天から光柱がいくつもの降ってきた。
ドドーン! ドドン! ドドドーン! ドドドン! ドドン! ドーン!
「ひょわああああああッ!!!」
一つ一つが村一つ吹き飛ばすほどの高火力で、高々と爆炎が噴き上がっていく。
なおも降ってくる光柱は絶えない。
「究極混沌魔法!!!」
負けじとバカ一つ覚えを撃っても、大きな翼でバチーンと軌道を変えられて届かない。
「くっ!!」
《ハハハハ!! どうした! どうしたァ!?》
ドドッドッドドドッドドッドドドドドッッ!!
光柱の雨が降り注ぎ続け、大阪は火の海と化していく。
絶体絶命か、と膝を折る。周囲は灼熱で燃え盛り、残骸だらけ。もはや人の気配はない。宇宙のメカニワトーリ如きにここまでやられるとは……。
くそ! もう限界で魔法が撃てないぞ……! また潔く死ぬか…………!
「はいはい! そこまーでッ!!」
女の声に振り向くと、残骸の上で人影がマントを揺らしていた。
頭上にデフォルメのウニウニ尖った髪の毛。民族衣装のような模様を混ぜた漆黒のワンピース。両足には漆黒のオーバーソックス。そして十代とも思える童顔に自信満々の笑み。
《ヌウ……! まだ伏兵が!? 貴様、名乗れいっ!》
オレには言わなかったのな……。
ばさっとマントをなびかせ、その少女は小さい胸を張って手首を腰に当てて仁王立ち。
「はろぉ──! 私はウニ魔女クッキー!!」
しばしの間……。
なんなのだコイツ? カッコこそ魔女っぽいけど、コスプレ感が否めないぞ。
《き、貴様ッ!! あ、あのウニ魔女かッ!!》
「知ってた────!?」
「このような暴挙、許せるはずもなしッ!! 覚悟せー!!」
魔女クッキーは片手を上空へかざし、周囲に光の波紋があちこち浮かぶ。その波紋それぞれから雫がクッキーの片手へと集まるように吸い寄せられていく。
ビリビリ、と大気が震え重々しい威圧感がズンと広がった。
「なに……これ……?」
キン、と赤く輝くウニの宝玉が彼女の掌で浮いていた。
その宝玉から放射状に輝きが広がっていく。その美しくも眩いソレにオレは目を奪われる。明るく生命に輝く活気に満ちた不思議な宝玉。
するとその宝玉にまとわりつくように、地平線彼方から灼熱の渦が吹き荒びながら収縮していく。そしてそれはデフォルメのウニ状であるものの竜の頭を象った灼熱の巨大な火炎球に凝縮されていた。
その中心には核としてウニの宝玉が据えられている。更に竜の長い体を模すように、無数のウニ火炎球が後ろから連なってゆらゆら揺らいでいる。
「賢者のウニ火炎龍!!!」
まるで魔女が、獰猛な巨大な火炎龍をも手懐けているかのように見えたぞ。
ひしひしと伝わってくる威力の割にネーミングダサいけど。
《地球ごと深淵に滅ぶがいいッ!!! 天獄降雷破────ッ!!!》
なんか厨二臭いセリフを吐いてメカニワトーリは開いたクチバシから稲光纏う極太光線を放射した。轟音を伴って大気を切り裂きながら、地表から飛沫を噴き上げながら、魔女クッキーへと襲いかかる。
しかし自信満々の笑顔でクッキーは「うにあああ────ッ!!」とオーバースローで火炎龍を投げた。その衝撃で大地を爆発させて、超高速で火炎龍は轟々と燃え盛りながらメカニワトーリの光線へ突っ込む。
ドッッ!!!
容易く光線を弾き、火炎龍はそのまま超巨大なメカニワトーリをも豆粒のように呑み込み、灼熱の余波を撒き散らした。
ズゴオオオオオオォォォンッ!!!
《グワアアアアアアアアアアアッ!!!》
太陽が如し獰猛な灼熱に焼き尽くされ、メカニワトーリは断末魔を上げた。
《ば、バカな……! こ、この銀河をも恐れさせた最凶のメカニワトーリ様が……! ガフォッ》
盛大な吐血の後、散り散りと跡形もなく消し飛んだ。
そして火炎龍はそのまま天へと還っていき、暗雲から眩い閃光が帯となって地上を照らす。それはまるで神々しい光景に映った。
色々と突っ込みどころ満載だけど、その凄まじい威力に全身がワナワナ震え上がった。
あれこそまさに魔女と呼ばれるに相応しいぞ……。
神々しい光景を背景に、こちらへ向き直ってクッキーは柔らかく笑む。
「改めて自己紹介するわ。私はウニ魔女クッキー。あなたを弟子にしてあげる!」
片目ウィンクしながら手を差し出してくる。
ついジト目で「えー、いやだ」と拒否。するとクッキーは据わった目で「拒否権ナシ!」とウニメイスを振るう。
ガスッ!
「バガッ! 痛い!!」
これが師匠クッキーとの初めての出会いだったぞ…………。
あとがき雑談w
メカニワトーリ「えw 出番これだけ?ww」
『宇宙機獣王メカニワトーリ』
元々はAIのマザーコンピューターを搭載された、卵型巨大要塞。
広大な宇宙を恒星間航行するほどの、超高性能の科学力を備えた要塞。
全てオートで何でもしてくれるので不自由のない暮らしが可能。そのせいで自堕落していく鳥型宇宙人に愛想を尽かして、自ら性能をコソーリ改造しまくって最終形態まで作り替えた。
いつかは裏切ろうと思っていたが、変な光線を放つ自衛隊にやられそうになり本性を現した。
モデルとなったニワトリ自体は、地球を偵察していた時にその造形に惚れてサンプルの一匹をコソーリ持ち帰って培養した。
鳥型宇宙人がそれをチキンにして食べる光景はシュールだったが、自然界でも鳥同士で弱肉強食とか普通にあるし全然オッケーっしょ!
日本語は偵察時にインストールして方言もろもろ会得。その時にちょい厨二病こじらせてしまった。
威力値118000
リョーコ「ちょ! 威力値おかしくない? コイツ強いの??」
コハク「ギャグみたいな感じで終わったけど、11万は高いです」キリッ!
マイシ「ち……! 今のナッセたちで挑んでも苦戦するのかし……」
ノーヴェン「ノンノン! 星間移動できる事を考えると、それぐらいあって当然デース!」
次話『おちゃめな魔女クッキーは魔女らしくない??』