109話「夕夏家総本山へ殴り込みだー!!」
なんとナッセ、マイシ、モリッカ、コハクら四名は夕夏家の本陣みてーな所までやってきていた。
好戦的に笑みながら殴り込もうと歩みだすマイシを、オレは肩を掴んで呼び止める。
「ちょっと待てぞぉぉぉ────ッ!!」
「なに!? ノリ悪いしー!」
不機嫌そうに振り向く。
「つーか、今日と明日で強化合宿やるって言ってたじゃないかぞっ!?」
そう、金曜日のアニマンガー学院での授業の後でマイシは提案したのだ。
コイツが殊勝に「ちょうどいい修行場所見つけたから一緒に行こし」と誘ってきたからおかしいと思ったんだ。
フクダリウス、ノーヴェン、アクトたち年長を連れて行かなかったのは絶対止めてくるって分かってたからだろう。
「あたしら、まだ未熟って思うし……。だから少数精鋭で鍛えた方がいいと思うし」
などと神妙な顔で言い出したから信じちゃったよ!
ヤマミを連れて行かなかったのも「分霊じゃやりにくいし、ウニャンと一緒にいた方がいいっしょ。それにショックで落ち込んでいるから、そっとしておきたいし」とか珍しく気遣ってきたからだ。
そりゃ殴り込もうとするなら、連れて行けねーよな!
まぁ、ここに来るまで全く気付かなかったオレも悪いけどな!
「あんたは本番以外でも実力出せるようにならないと、いざという時困るっしょ?」
などと誘ってきたから納得しちゃったよ!
んで、土曜日に大阪駅で待ち合わせ。既にマイシがいて、後にモリッカとコハクが来た。特急に乗って遠足気分で、流れる景色を眺めたりカードゲームしたり、お菓子やドリンク飲食したりとほんわかムードは良かった。
二時間くらいして降りた時、手際よくバスに乗り換えた。乗ってる内に街並みが少なくなっていって緑が増えてきた時、本格的に山奥での修行かって雰囲気に呑まれていた。
マイシが言うに、付近の村に仮想対戦センターもあるって言ってた。いや本当に道中で見かけたけどね!
しかしマイシ自身が出禁になってる事を失念してたのもあった。
つか「一緒に夕夏家へ殴り込むし!」って直球で誘ってきたら絶対断ってたよ!!
まさか言葉巧みに誘導してくるとは思わなかった。騙されたー!
「強化合宿って言わないと逃げそうだし」フフン!
「いや、それはそうなんだけどね……」
やっぱコイツ分かってたよ! 小悪魔的に笑ってこっち見てる!
「あははっ! ナッちゃん怖気づいたんですかー!」
「悪いかぞ……」
無邪気なモリッカのニコニコな笑顔に、イラッとしてジト目で見やる。
「でも、なぜ急に殴り込もうと?」キリッ!
コハクが凛々しく聞いてきて、マイシはため息をつく。
「本当は、ゴン蔵倒した後にここまで飛んできて殴り込むつもりだったし。でも、やっぱナッセ含めて最高戦力でヤミザキ張り倒した方が確実と思ったし。このまま行くしかないっしょ?」
「ジェノサイド楽しそうー!! みなごろしイエー! ゴーゴー!!」
モリッカは満面の笑顔で拳を何度も振り上げている。怖い!
「コハク! ちょっと何か言ってくれぞ!」
「ええ……、そういうのは聞いてませんしね。ナッセ君の言う通り強化合宿じゃないとすれば無駄足です。そもそもー……」キリッ!
「田中リッツ」
マイシが据わった目で一言、コハクはビクッと肩を竦めた。
「ナッセ君! あなたは切り札です! さぁ行きましょう!」キリッ!
懐柔されたぁ────────ッ!!
そうだったぞ! コハクは重度の田中リッツ推しだったぞ────!!
頭を抱えていると、マイシが肩をポンポンしてきた。
恨むぞーって感じでぎぎぃっと振り向くと、いつになくマイシは真剣な顔を見せていた。
「……総統継承式ってキナ臭いっしょ?」
「え?」
「気付いてないかもしれないけど、ヤミザキから邪悪な臭いがあったし……。そのままあんたを後継者に譲ろうとは思えないし」
マイシが言うに、どことなくドス黒くて粘着性のある思念がナッセに向いていたらしい。
それはまるで執着するレベルでナッセの何かを欲しがっているように見えた。
「マトモじゃないと思ったから、こっちもマトモじゃない方法で一気に倒すし!」
「……ヤマミも人質にされてるしな」
そう、本体は囚われの身だ。
マイシの言う通りなら、ヤマミはきっとオレを逃がさないための人質。
用済みになれば、妹のマミエ共々殺すのかもしれない。
「ヤミザキを倒せば、きっと『刻印』は解けますよ。あの手の術は、術者が生きている限り効力が続きますから……」キリッ!
「ヤミザキを八つ裂きすれば、解けるー!!」ケヒャッヒャッ!
……モリッカいちいち怖い。だがコハクの言う通りだぞ。
それにオレの奥義は思った以上の効力だった。
一発さえ食らわせれば、例えヤミザキといえども全て封印されて無力化される。その拍子で『刻印』も機能不全になるか、上手くいけば消し去れるかもしれないぞ……。
そうでなくても無力化したヤミザキに解除を促せるかも知れない。
まただけどコハクの言う通り、オレが切り札だ。
マイシに向けて頷く。
「よし! 行くぞ!!」
「そうこなくっちゃだし!」
「ナッちゃんファイトー! イエー!」
ゴウッと竜を象るエーテルを初っ端から噴き上げたマイシは、門扉へ向かって炸裂剣をぶちかます。
ゴゴォン!!
豪快に爆裂が吹き荒れ、左右の塀もろとも粉々と砕け散った。煙幕が立ち込め、警報が流れた。
「さぁ! 殴り込むしッ!」
「ったく、合図くらいしてくれぞ!」
駆け出したマイシに続いて煙幕を抜け、ついに庭園へ踏み込む。するとエンカウントしたように何かが周りの風景を通り抜けていく。途端に気配が変わった気がした。
いつもの荒廃した世界ではない。まるで異世界で初めてマイシと戦った時と同じ反転世界なのだろうか?
「な、なにヤツ!? 曲者だァ────!!」
「ここは通させぬッ!!」
「貴様ら──、なんの用だァァ──!?」
やはりコンパチ男たちが殺気立って大勢で阻んでいた。
「どくしッ!!」
ドガッ、マイシが豪快に炸裂剣一発放ち、数十人のコンパチ男が宙を舞う。
ええい! もうヤケクソだぞ!!
駆け抜けながら光の剣を振り、その無数の軌跡が数十人薙ぎ倒していく。
「だだだだだっ!」
モリッカは交互に左右の掌から気弾を連射し、爆撃の嵐を巻き起こして大勢のコンパチ男を屠る。
コハクも複数の槍を操ったり振るったりと、隙も見せず軽やかに薙ぎ倒していく。
ドゴーン! バゴーン! ズゴーン!
「こ、こいつら!?」
「めちゃくちゃ強いぞォ!!」
「だッ、誰か止めろ────ッ!!」
屋敷まで直線と続く広い通路。白いタイルで敷き詰められ、左右を等間隔で木々が並ぶ。
コンパチ男を薙ぎ倒しながら進むと、中間地点だろうか交差点となるように左右の道に加え、やや広い広場があって噴水が中心に据えられている。
すると立ちはだかる五人の人影が見えた。それぞれ胸を張って腕を組んでいる。
「ブッモッモ! 四人だけで我らにカチコミとか身の程知らずだモー!」
「わたくしら夕夏家第六子、第七子、第九子、第十子、第十一子、揃って夕夏家五戦隊よ!!」ウフフ!
「我らッ! 夕夏家総本山屋敷手前を守護する精鋭部隊だッ!!」ブルルッ!
「なんとー我らこそがー、総統ヤミザキ様が誇ーる、優秀な息子一同であーる!」
「貴様らは運がいいじゃん! そして運が悪かったじゃん!!」
ババッとそれぞれポーズを取り、四人が左右対称として組み、真ん中で大の字で先頭を飾る一人。
大の字のポーズの男は紫で統一された紳士服にマント。銀髪のギザギザな髪にイケメン。
「夕夏家五戦隊だモー!! リーダーを務める第六子ウユニーギだモー!!」
左手前のチビは緑で統一された紳士服にマント。黒髪オカッパでオカマオッサン顔。
「夕夏家五戦隊!! わたくしこそが真にリーダーを務める第七子ホエイよ!!」ウフン!
右手前のしゃがみ込んでいる男は赤で統一された紳士服にマント。赤髪ロン毛で馬面っぽい顔。
「夕夏家五戦隊ッ!! オレ様こそ、本当のエースと評されるマジリーダーを務める第九子カンラクッ!!」ブヒヒン
左後方の大柄長身の青で統一された紳士服にマント。坊主頭で無精ひげをぼうぼう生やすオッサン。
「夕夏家五戦隊ー!! 幼ー稚なこいつらをー冷静にかつ迅速にーまとめる最強のリーダーを務めーる第十子ギュラー!!」
右後方の長身優男の黄で統一された紳士服にマント。モヒカンでパイナップル見てーな縦長な顔。
「夕夏家五戦隊!! オレこそ裏で牛耳る究極リーダーを務める第十一子ムイリじゃん!!」
「おーい!? ちょっと待つモー! リーダーは俺だモーッ!!!」
「いいえ!! わたくしよ!! あんたたち勝手に名乗らんといて!」キーッ!
「ちょっと待てッ!! オレ様がリーダーであるべきだろッ!」ヒヒーン!
「いーや! 待ーて待て!! ジャンケンで決めーろつーたろ!」
「嫌じゃん!! お前“ジャンケンなら絶対勝つ”能力あるじゃん! ずるいじゃーん!」
内輪揉めで、円陣組んでギャーギャー言い争い始めた。
「うるさしッ!!」
「邪魔だ! どいててぞッ!!」
未だ疾走するオレとマイシは一斉に炸裂剣をひと振り! ドガガァッ!!
「ぎゃああああああッッ!!!!」
広範囲に爆裂された衝撃波によって、五人はあちこちへ吹っ飛ばされた。遥か遠くまで弧を描きながら飛んでいって、頭からズボッと地面に埋まる。ピクピクと足を痙攣させる。
────夕夏家五戦隊、あっさり瞬殺!
屋敷まで駆け足一直線、その度にコンパチ男ら数十人が豪快に舞う。あっという間に屋敷手前までに近づいた。
そのままでは止まらず、一気に突っ込んで屋敷ごと粉砕せんばかりの勢いだった。
オレは一気呵成と気分に乗り、脳裏にヤマミが浮かぶ。
夕夏家という鳥籠に囚われた身、きっと逃れられない運命に絶望して暗く落ち込んでいるのだろうか……?
「待ってろ!! 今すぐ助けてやるぞォ────────ッ!!!」
激情を顕わに腹の底から叫んだ。
その時、屋敷から不穏な闇の威圧が膨れ上がっていく。ズズ……!
あとがき雑談w
リョーコ「待ったー?」
エリ「今来たじゃんw よゆーじゃんw」
トシエ「そんなカンジー!」
ナツミ「……うん」
テル「ぶひひんw」
仮想対戦センターでリョーコ、エリ、トシエがチーム戦に参加。
ガンガン蹴散らしていくのをナツミとテルは見届けていく。
テル「ぶひ?」
ナツミ「……見るだけで楽しい。大丈夫」
テル「寂しいぶひー。でもウチいるぶひっ!」
ナツミ「……隠さなくていいよ。リョーコは受け入れるから」
テル「!!!!」びくーん!
その後、勇気を出したテルは自分の正体をリョーコに告白したという。
ナツミが翻訳してくれて、割と和やかに輪に入れた。
テル「にゃにゃにゃにゃあーw」
翻訳(みんな優しくて好きーw)
五戦隊は完全なネタキャラですw
せっかく特徴となる口調とか性格とか設定してたんですが、瞬殺されちゃったw
次話『ヤミザキとご対面!! これが四首領の威厳!?』