101話「サンライトセブンの猛攻撃ぞ!!」
何もかも全てを吹き飛ばす巨大隕石。そして決して死なぬ究極完全体クラッシュオーガ。
その二つの絶望にナッセは頭が真っ白になった。
「ナッセェ!!!」
ヤマミの必死な声に、ハッと我に返る。
振り向けば、学院の上空で浮いているモニターから覗き込むヤマミが映っていた。
「ヤ、ヤマミ…………!?」
「大丈夫! 隕石はこっちで何とかする! だから、そっちは任せるわ!」
健気なヤマミの真剣な目と、心に響いてきた声。
なんだか力が沸いてくる。勇気を奮い立たせてくる。絶望で冷たくなっていた体に再び熱いものが宿っていくのが分かる。
地面に膝を着いていたが、自然と立とうと足に活気が漲った。
「全部無事に終われたら……、一緒に異世界へ行こ…………!」
切なく笑むヤマミに、「ああ! もちろん!」と頷く。
「あ~、イチャつくなら男同士でやって欲しいねん。男女だと萎えるわ~。ってか先に学院潰したろかいっ!」
白け気味なドラゴリラは口を開け、主砲のようにドオンッと爆音轟かせて大きな光線を放つ。それは大地を抉りながら一直線と学院を目指す。
しかしナッセは振り向かず、戦意を漲らせた眼を見せている。
それにオカマサはハッとする。
ナッセの目は完全にヤマミ達を信頼しきっている。
……いや盲信に決まっている!
こんな糞餓鬼が一流の顔をするなどおこがましい、とオカマサは侮蔑した。
ドグアッ!!!
学院の位置から明々と大爆発が広がった。そして天を衝くように光柱が立ち上っていく。
遅れて地鳴りと、余波によって巻き起こった烈風と破片が流れてきた。
「うっほほほ~!! 学院崩壊や~~!!」
「ナッセ君! 愛しい人を失う気分はどうかな? なに、直にあの世でまた会えるさ!!」
しかしナッセはニッと不敵に笑む。
「バーカ!! 同じ学友のくせに、学院の何も見てこなかったのかよ?」
「な、何ぃ……!?」
「なんやと!?」
晴れていく煙幕から、なんと学院の前で三ツ葉クローバーのような菱形の光り輝く巨大な盾が阻んていた。
それを見てオカマサとドラゴリラは「な……!?」と見開いた。しばしの驚愕。次第に目を細め「そうか……ヨネ校長が……!」と呟く。
「ここはワシが守っとるから、安心して戦いなされ」
モニターでヨネ校長は大剣を正眼に構えたまま、優しい笑みを見せた。
ナッセは「ありがとう!」と振り向き、親指を立てた拳を突き出す。ヨネ校長も同じようなポーズで返す。まるで友達みたいなノリだ。
ヤマミたちは唖然とした。スミレは呆然と口走る。
「これって『天翼剣』……!」
「知ってるのっ??」
エレナにスミレは頷く。
一見すればナッセの『星の盾』と同じように見えるが、性能は全く違う。
一つ一つが高出力のエネルギー体。それぞれ操作が可能で、円陣を組めば最硬の盾となり、剣を飛ばせば高火力弾にもなる。数が多ければ多いほど強くなる。故に攻守ともに優れた伝説の剣だ。
これを会得するには厳しい条件があり、それを全部クリアしなければならない。
例え何らかの違法で手に入れたとしても、所有するだけでも力を奪われ力尽きてしまう呪いがかかる。
まさに選ばれし者のみが扱えるスーパー聖剣って感じだ。
「実際見るのは初めてだけどね~~!」
ニッコリとするスミレ。
ともあれ、ヨネ校長さえいれば当面は大丈夫そうだった。
「糞がぁ……!」
オカマサは忌々しげに呟く。それにナッセは「オレらと学院をナメんなぞッ!」と吠える。
オレは右手の『刻印』を青白く灯らせた。
剣の柄を媒介に、太陽の剣と呼ばれる大剣を右手で具現化。
「おおおおおおッ!!!」
気合を込めて叫ぶと、全身から青白いエーテルが放射。地を揺るがし旋風が周囲を吹き荒れた。ゴゴッ!
「いつの間にかエーテル覚えてたし?」
「マイシの見て覚えた。オーラ出して混ぜるだけだから、意外と簡単だった」
マイシはため息をつく。
そんな簡単に真似れるもんじゃないし、と内心思った。
アクトは「やはり天才かァ……」と感心する。やはり相棒はこうでなくちゃな、と歓喜もあった。
「それより、マイシこそ技名叫ぶようになった? なんか威力上がってね?」
「お前の真似たし! 案外、しっくりくるなと思ったし」
二人は心地よく笑い「お互い様か!」と拳をぶつけ合った。
「行くぞッ!!!」
気合爆発とオレはマイシと共に駆け出し、地面が爆発。ドウッ!
その二人に続いて、モリッカ、フクダリウス、アクトも駆け出す。コハクとノーヴェンはそれぞれ複製した得物を浮かせたまま、後方で待機。
士気高揚とサンライトセブンが始動したのを見て、オカマサとドラゴリラは不機嫌に表情を歪めた。
覆せぬ絶望に愕然として失意するか、悩み苦しみながら悪あがきするのを期待していたのに、彼らはまるで未来が広がっていると確信してるかのように、希望を抱きながら立ち向かおうとしている。
そういうポジティブな雰囲気が、オカマサとドラゴリラは気に入らなかった。
「ならば、二度と立ち上がれないくらい絶望のどん底に突き落としてやるわァァァッ!!」
ドオオオオオオッ!!
巨体から、赤黒く膨大なオーラが噴き上げ、全てを震撼させた。
周囲に台風でも吹き荒れたかと思うくらい旋風が広がり、それは県外にまで吹き抜けていった。森林がバサバサ揺れ、水面が慌ただしく波打ち、建物がギシギシ揺れた。
しかし怯む事なく「太陽の炸裂剣ッ!!」とオカマサの顔を右から殴って爆裂を吹く。マイシも「火竜の炸裂剣!!!」とオカマサの顔を左から殴って爆裂を吹く。
交互に炸裂剣でドカンドカン殴り合って、巨体をあっちこっちと揺らす。
オカマサは「うざったいわァ!」と激怒。
巨大な両腕を左右に広げながら巨体を高速回転させ、天地を繋ぐほどの凄まじい竜巻を生み出す。大地を抉り、土砂と岩飛礫を巻き上げながら吹き荒れた。
それに巻き込まれたナッセとマイシは「うわああああ!!」と螺旋状に吹き飛ばされていく。オレは盾で、マイシは火竜の翼で、空中で体勢を整えた。キキッ!
人造人間全員を合体させただけあって、すごく強いなぞ……!
でも負けないぞッ!!
「ぬうおおおおお!!!」
俊敏に駆け抜けるフクダリウスとアクトが豪腕で得物を振るい、四つある足を一気に斬り飛ばす。しかし瞬時に再生。その太い足による連続キックで逆に二人を蹴散らす。その余波だけでも大地が砕かれていく。
クラッシュオーガの巨体から無数の砲身が生え出す。コータロの能力だ。
けたたましく鳴り響く発砲音。周囲に数え切れない弾丸で弾幕をばら撒く。地上を無数の弾痕に穿ち、岩礫が跳ねる。
しかし飛んできたコハクの無数の槍がことごとく全弾を弾ききっていく。それにオカマサは「チィッ」と舌打ち。
ナッセ、マイシ、モリッカ、フクダリウス、アクトは四方からクラッシュオーガに向かって一斉に得物を振るう。
「うおおおおおああああああああああッ!!!」
気力漲る一撃が同時に直撃!
巨大な斬撃が幾重も交錯して大地まで抉った。ザザザザンッ!!
数片の肉塊に斬り刻まれたクラッシュオーガだが、瞬時にピタピタァとくっついて元通り。
ノーヴェンはなんかブツブツと呟き、真剣に思考を張り巡らせていた。
「薬なんぞ頼ってんじゃねぇしッ!!」
マイシは怒涛と炸裂剣を何度も振るい、ドカンドカン爆裂を連鎖させていく。
更にモリッカも上空から落雷がごとく稲光と共にドラゴリラの頭上を殴る。ズドン!
オレも「おおおッ!!」と盾を足場に、ガガガガッと縦横無尽に駆け抜けながら、あちこちクラッシュオーガを斬り刻んでいく。
アクトもそれに合わせて「うりゃあああ!!」と滅茶苦茶に巨体を斬り刻んでいく。
だが、その数々の傷も瞬時に癒えてしまう。
シャキーン、と何事もなかったかのように新品に戻っていた。
「無駄だと言うのが分からないかな? 無駄無駄ァッ!!」
憤慨したオカマサ。巨腕を振るい上げ、拳を地上に撃ち込む。ズッ!
数キロもの範囲の岩盤が捲れ、衝撃波の噴火が大小の破片を巻き上げて高々と噴き上げた。
ドオオアアアアッ!!
しかしその最中でオレは剣を正眼に構え「流星進撃──」と突っ込む。
クラッシュオーガの目には、ナッセの背後に宇宙が広がって見えた。天の川が横切り、星々が煌く美しい光景。そして無数の流れ星が放射状に降り注ぐ。
「三十連星ッ!!!!」
一瞬連撃が三十発と放たれ、轟音を鳴り響かせるほどの打撃が巨体を打ちのめす。
「ギハアァァッ!」オカマサとドラゴリラは激しく吐血。
続いてマイシが口を開け、モリッカが掌を向け、一斉に光弾を連射。
巨体を呑み込むほど無数の爆発球がドドドドンと炸裂。連鎖する爆音と共に爆煙が濛々と広がっていく。
トドメと突っ込むアクト。後ろに引いた剣から凄まじい紅蓮の光が枝分かれする尾を引く。
「があああッ!! 大紅蓮衝ッ!!!」
大仰に剣を振り、凄まじい奔流が扇状に放たれる。それはクラッシュオーガを飲み込み、紅蓮の波動が広範囲に広がった。
ドオオオオオッ!!
大地震を伴って、大地を抉るかのような膨大な量の奔流が地平線にまで流れていった。
その圧倒的な破壊力に、オレもマイシも目を丸くする。
アクト先輩! TUEEEEEEE!!
前のオレ、こんなん相棒にしてたのかよッ!? 信じられないぞッ!
「すっごいですねー! こん中で一番強いんじゃないですかねー!」
モリッカはうわーいと嬉しそうだ。
いつか対戦したいと思ってそう。だって戦闘民族っぽいし……。
「喜ぶのはまだ早ェえぞォ……!」
アクトは油断なく冷静な顔でギラつく眼光で、みんなに警告する。
オレもマイシも「おう!」と身構える。
立ち込める煙幕の中から巨体の影がのそっと浮かび上がり、いくつもの眼光が灯る。
どうやったら……、あの不死身を倒せるのかぞ……?
「いい策が閃きましター!」
ノーヴェンはメガネをキラーンと煌めかした。
あとがき雑談w
アテナと一緒にクッキーとアリエルはモニターで観戦していた。
クッキー「ぐぬぬぬ!! 参戦したい!!」
アリエル「それ止めてよぉ……。こちとら『洞窟』まで用意したのに、アンタが先走って全て台無しっての困るわぁ」
アテナ「こらこらダメですよ! めっ!」
クッキー「ちぇー」(ぶーたれ)
アテナ「今は孫たちの頑張りを応援しましょう! さ、二人とも!」
アリエル「え? ふ、ふれ~ふれ~! がんばるのよぉ~~!!」
クッキー「が、がんばれ! がんばれー!! 絶対勝てるー!」
アテナはにっこり笑顔w
次話『隕石に対してノーヴェンの秘策が炸裂!?』