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100話「究極完全体爆誕! そして底知れぬ絶望!」

 夕日も完全に地平線に沈み、夜空の下で荒野となった大阪に冷たい風が吹く。

 空母を前に不動の仁王立ちしていたマイシの側へ、ナッセが並ぶように歩み寄った。ザッ!


「……待ってたし!」

「ああ!」


 そして後方にはモリッカ、フクダリウス、ノーヴェン、コハク、アクトが立ち並ぶ。



「みんな頼むぞ……!」


 学院の司令室でヨネ校長の側でヤマミ、ウニャン、リョーコとくっついているマミエが立ち、スミレに抑えられてブーたれるエレナ、あぐらをかくコマエモン、気弱になっているミコト。

 そして学院外で守備を固めるのはクスモさんを筆頭に、応援に来ていた創作士(クリエイター)たち。

 大阪駅周辺で固唾(かたず)を呑む創作士(クリエイター)たちと、高台で静かに佇む黒マフラー女。


 夜という事もあり、妙な静けさが逆に緊張させられる気がした。

 空母はなおも鳴動を響かせており、不穏な気配を見せている。(いびつ)(よこしま)な何かが漂う雰囲気。


 ナッセたちはその空母を、緊張を解かず見上げていた。



「フフフ……、サンライトセブン……と言った感じのメンツだね」

「ウホホッ! 我らを前に無謀(むぼう)やね」


 声がしたと思ったら、空母が突然大爆発。赤々と爆煙が広がり、火に包まれた破片が四散する。

 その余波が荒野を駆け抜け、地を揺るがす。


 誤操作で自爆した…………?


「な、なんなんだぞ……??」



 気付けば爆煙の中から何かが見えた。

 肌色の不気味な肉団子(にくだんご)がドクンドクン脈打ちながら浮いていた。それを見ていると不安と胸騒ぎが(もよお)す。

 肉団子(にくだんご)の上でオカマサとドラゴリラが浮いていた。


「みなさん悔いなく万全な状態で、この決戦に(のぞ)んでるかい?」

「あ……ああ! おかげでな」


 ナッセたちはそれぞれ得物を手に、腰を低くして身構える。

 それを見て、オカマサとドラゴリラはニヤニヤと邪悪な笑みを見せていた。やけに余裕だ。


「じゃあ、ワイが開発した『究極完全体』をお披露目(ひろうめ)するやわ」


 上空へ掲げられた【融合体(ゆうがったい)】のカードから、閃光が溢れた。


 するとマー坊がヒュンと飛んできて肉団子(にくだんご)へ飲み込まれる。次は上半身だけのカイ斗が飛んできて、これまた肉団子(にくだんご)に飲み込まれる。

 更にジダ公、バイオ、レンス、コータロ、ケン治までもが続々と吸い込まれていった。

 肉団子(にくだんご)は震え、メコメコと歪み出す。


「俺、オカマサ!」

「ワイ、ドラゴリラ……。融合体!」


 オカマサとドラゴリラは恋人のように手を繋いで下降、(うごめ)肉団子(にくだんご)へ沈んでゆく……。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!


 激しくなっていく鳴動で大気が震えている。ビリビリ静電気のような弾けが肌を撫でる。

 地面の揺れも大きくなっていって、あちこち亀裂が走っていく。破片が少しずつ浮いていく。まるでラスボスと対面するかのような緊張感が体を走っていく。

 これはゲームなどではない。現実で、目の前に起きている事だ。


「なに……これ…………!?」


 亀のようにボコッと肉団子(にくだんご)の側面から四本の足が四方から生え、正面からは長い首がズズズズッと伸び、先端にはタレ目が特徴のドラゴリラの頭。

 肉団子(にくだんご)の左側上部にジダ公、右側の上部にケン治の上半身が生え、それぞれ不相応な巨大な片腕が生えてきて、両腕となる。


 左右の側面からバイオとレンスが祈りを捧げるような感じで両手を組んで生えてきた。

 後方はマー坊とその無数の触手がニョキッと生えて尻尾のように揺らめく。

 下の方からはカイ斗が逆さまで生え、両腕から曲線描く刃を生やす。


 なんと肉団子(にくだんご)の上部から、巨大なオカマサの上半身がニョキニョキ生える。腹には赤い『刻印(エンチャント)』が赤く灯っている。

 邪悪な笑顔で牙をひん剥き、髪の毛は全て放射状に逆立っていて、頭の左右からツノが大きく伸びている。



「見よ!! 我らが人造人間の集大成(キメラ)『究極完全体クラッシュオーガ』をなッ!!」


 ビシャアアアアン!! 周囲に稲光が轟いた!


 地上まで一気に急降下してズズンと着地。巻き上がった粉塵。次いで地響きが広がる。

 ズシンズシン太い足を踏み鳴らし、その圧巻とも言える巨体をこちらに見せつけてきた。思わず息を飲む。


「お、おお……!」


 全長は十メートルを超えているんじゃないか。まるで怪獣だぞ……。



「ごはははははっ!! 言葉が出ないかい?」


 腕を組んで、哄笑(こうしょう)するオカマサ。


「せやな……、更にもう一つサプライズ見せたろか?」


 今度は股間……、いや中部から生えたドラゴリラがニカッと下卑て笑う。

 両脇のバイオとレンスの目が輝き、何か得体の知れない呪文を唱える。オカマサの上半身と一緒に万歳(ばんざい)するように巨大な両腕が上空へ向かってかざされる。

 その間から眩く光が生まれると、尾を引いて上空へと急上昇していった。


 ズズズズ……!


「な、なにを?」

「あれを見ろ!!」


 上空へ登った光が遥か上空で、丸い輪郭を渦が周回しながら黒い穴を広げてゆく。

 すると光り輝く尾を引いた光球が穴を通って落ちてこようとしている。その正体は、炎に包まれた大きな隕石……。誰もが絶句した。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ…………!!


「い……、隕石を召喚したし…………?」


 まだ遥か上空だと言うのに、ピリピリと空震と地響きが伝わってくる。

 ヨネ校長らが唖然とする最中、ヤマミはモニターへ駆け寄り食い入る。



「禁忌魔法『エクス・エンドーラ』! 約一時間後……! 日本は確実に跡形もなく消し飛ぶぜ!!」


 クックックとオカマサは肩を上下させて薄ら笑う。

 一気に絶望が押し寄せ、一瞬にして血の気を引いてしまう。足が震える。

 巨大隕石なんか落としたら日本滅亡どころじゃない! 地球レベルで壊滅的打撃を受けて人類絶滅するんじゃないかぞ!



「なぜ、貴方(ユー)は……自分(ミー)を巻き込んでまで日本(ジャパン)、いや地球(アース)を消したいのですカ?」


 冷や汗をかくノーヴェンに、オカマサとドラゴリラは息を合わせたようにフッと笑む。


「……俺たちはこの地上へ戻れない。魔界オンラインの住民となった時点でね」

「せや。もはや未練あらへんのや……。せやから人類滅ぼしたって、な~んも痛くも痒くもあらへんなぁ~」


「外道が……!!」


 吐き気を(もよお)す身勝手な理由。怒りと嫌悪が胸中に沸く。

 フクダリウスも頭をカッカさせて歯軋(はぎし)りし、その怒りに反応して上半身の筋肉が膨れていく。


「ごははははっ! モンスターの俺らも巻き込まれるだろうが、例え死んでもレベルを下げて復活できる『リバイバルシステム』がある。

 だが、生身のキサマらはどうかな? 仲良くみんなであの世へ行けていいじゃないか!」

「せやせや、いわばこの究極完全体はキサマらと遊ぶための最高傑作や! 有終の美を飾るべき、絶望に嘆き、苦しみ、悔しがるあんさんたちの最期を脳裏に焼き付けたいんや!!」


「どのみち、キサマらはバッドエンドって事だ! ごははははっ!」



 カーッて激情が湧き上がってきて、剣を握る手が震える。これほど許せない事はなかった。


「オカマサッ!! ドラゴリラァ────ッ!!!」


 激怒したオレは地を爆発させるように蹴って飛び出す。同じく激情に駆られたマイシも「てめぇ、ぶっ殺すしッ!!」と後に続く。

 土砂の飛沫(しぶき)を巻き上げながら、ナッセとマイシはエーテルを纏い超高速(マッハ)で飛びかかる。

 それに対して、クラッシュオーガは何故か両腕を左右に広げて無防備をアピール。


 まるで好きなだけ攻撃してどうぞ、と言わんばかりである。



「待……、くっ!」


 ノーヴェンは事前に伝えた作戦と(たが)える事に苦慮(くりょ)するが、オカマサとドラゴリラの身勝手なやり方に「冷静になれ」というのが無理だと悟る。

 あそこまで非人道的な性格だとは思わなかった。

 確かに奴らにしても二度と地上へ帰る事は叶わないのだから、最後に人類を滅ぼしたとて罪悪も後悔もないだろう。


「サンライト・フォールッ!!!」


 急降下しながら太陽の剣(サンライトセイバー)を振り下ろし、オカマサの大きな頭をガゴォンと粉々に粉砕。

 更にマイシが「火竜(かりゅう)炸裂剣(バーストソード)ッ!!!」と横薙ぎの一撃をドラゴリラの顔面に見舞い、派手に爆裂が吹き荒れる。ドガッ!!


「ぬうおおお!! 紅蓮斬ッ!!!」


 アクトが下から斬り上げ、紅蓮の剣閃が一直線と爆ぜる。ズガァン!!



「よーし!! 僕もいっくぞー!!」


 モリッカは上空の暗雲から電撃を自らに落とし、全身に稲光(ほとばし)るエーテルを纏い、髪が青く逆立つ。

 フクダリウスも筋肉を膨張させ、肩幅を広げて巨大化。


 屈折しながら飛び回るモリッカが、飛び蹴りで巨腕ごと胴体の一部を爆発でドガァッと吹き飛ばす。

 フクダリウスは大きな斧を振り回しながら駆け抜け、二本の太い右足を斬り飛ばす。が、それぞれ欠けた部位が瞬時にニョキッと再生。

 ナッセたちは「な!?」と見開く。再生が速すぎる!


 同じく再生されたオカマサとドラゴリラ二つの頭……。瞑っていた目が開かれ、ニッと邪悪に笑む。


「体内に瞬間全回復の劇薬を抱え、常時再生し続ける。その量は……六〇〇〇万粒!」

「なッ……!?」


 そのありえない量に誰もが絶句する。


 これまで一粒だけでも厄介になった経験が有るだけに、これは途方もなく絶望的な量だった。

 十年寿命を縮めるデメリットも、取り込んだケン治によって帳消しにされている。


 オカマサとドラゴリラは用意周到に万全を期して、今ここで投入してきたのだ。絶対勝てるからこそ、わざわざ高みの見物していたのだ。

 ナッセたちの全快を待ったのも、より絶望させるため。


 何をやってもこっちに勝ち目はゼロだと確信していたから……。



「……キサマらはすでに()みだ。最初(ハナ)っから、ね」

「せやから、この決戦は単なる遊びや! せいぜい悪あがきせな~」


 片目を(つむ)るオカマサ、ドラゴリラは共に見下すような笑みを浮かべた。フフッ!


 底知れぬ絶望に青ざめ、体がガタガタ震える。

 上空から降ってくる隕石。そして不死身の究極完全体。どちらか片方だけでもキツいのに、それが同時に襲ってくる。もちろんそれを全て防げなければ日本ごと跡形もなく消えてしまう。

 ヤマミ、マイシ、エレナ、アクト、リョーコなど学友はもちろん、学院も、地元の家族も、そしてこれからの夢も、なにもかも全部吹き飛んでしまう。



「嘘だ……! 嘘だと言ってくれぞ…………!」


 その様子に、オカマサはしたり顔で満足気だ。

あとがき雑談w


コータロー「莫大な財産全てをかけて造った巨大空母が演出の為だけに爆破されやがた」(泣)

オカマサ「魔界オンラインの住民だから、もう要らないと思ってね……」

ドラゴリラ「せや! ワイはオカマサさえいれば何も要らへんのや」


オカマサ「ドラゴリラよ愛してる!!」

ドラゴリラ「オカマサよ愛してる!!」


 はぐはぐちゅーちゅーw


リョーコ「密かにBL(ボーイズラブ)好きなんだけど、それはイケメン前提であって、そーゆーのキモいから止めて~!」(寒気)



 実はこの章にオカマサとドラゴリラは当初出す予定はありませんでした。


 そもそもいずれはモンスター化しながらも再登場する予定ではありました。

 でも人造人間軍団を発案して作成して組織まで作り上げておいて不在でしたじゃ、盛り上がりに欠けるので急遽出番を与えました。

 彼らこそ人造人間侵略編のラスボスとして相応しいでしょう。

 中々の外道として描写できてて個人的に気に入っています。


 今後の展開を楽しみください。(*´∀`*)



 次話『明らかに敵に有利しかない状況! でも諦めてたまるかーッ!!』

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