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99話「最後の人造人間ケン治の末路!」

 夕日が地平線に沈みかけ、空は赤く紫に(にじ)んでいる。

 大阪駅周辺は、大阪駅や高架橋と線路を除けば数十キロ範囲まで壊滅状態だ。立ち並んでいたはずの高層ビルは全部崩れ、土砂が覆い、ほぼ平らな荒野になってしまっていた。


 大阪駅を囲むように数十人の創作士(クリエイター)がそれぞれグループで組んでいた。

 近くに二階建ての簡易テントなどがあり、いくつかタイマツを模した灯りが設置されて丸い明かりが滞っている。


「ふう……、さっさと終わってくれよ」

「そうね」


 三日間続く戦争。


 最初はアニマンガー学院の校長から知らせを受けて、急遽(きゅきょ)準備を行い奇跡的に犠牲者は少なくてすんだ。

 少なくとも創作士(クリエイター)として登録していない一般人に犠牲者はいない。これは幸いだ。


「黒マフラーの女。三日三晩飲まず食わず寝ずで戦ってたらしいな」


 大阪駅の前方の建物の上で静かに佇む黒マフラーの女に目がいく。

 何も声も発さず、翼のように黒マフラーの両端が風になびいている。その周囲を漆黒の小人が不気味に舞踏しながら周回している。


「あいつ……一体何者なの…………?」




 ジダ公、コータロ、カイ斗、バイオ、レンス、マー坊は全員白目で倒れている。


 ノーヴェン、ミコト、コマエモン、コハク、リョーコ、エレナも駆けつけた医療班(ヒーラー)から治療を受けていた。

 上半身を起こしたオレは医療班の回復魔法を受けながら、アクトとヤマミと一緒にモニターを見上げていた。

 残る戦いは……、マイシとケン治!


「マイシ、がんばれ!」




 ヒュウウ……、煙幕が風に流されていく。マイシとケン治は未だ動かず対峙している。


「やってくれましたね。学院の皆さん……。まさかこの私以外の幹部を全滅させるとはね。これはとっても誤算でしたよ…………」


 ケン治は不敵に笑いつつも、どこか怒りを漲らせている気配だ。

 マイシは未だ黙り込んでいる。


「まさかこんな結果になろうとは、いまだ信じられませんよ……」


 フルフル震えていくケン治。拳に握り、歯軋りする。

 ビリビリ……、地面が震え上がっていく。破片が徐々に浮遊していく。


「キサマら絶対に許さんぞ!! 一人残らず虐殺してくれるッ!!!」


 拳の赤い刻印(エンチャント)が輝き、全身から赤くオーラが噴き上げ、周囲に衝撃波の津波が吹き荒れ、大気が唸り、地面が揺れる。

 それは県外にも地鳴りが及び、人々を不安や恐れに陥らせていく。

 だがマイシは不敵に笑む。



「……あたしの猛攻にも平然としてたけど、何粒使ったし?」

「ぬ!?」


 ケン治はピクッと見開く。


「最初に畳み掛けて、それでも平然とあたしを呼び止めた時は戦慄した。けど、薄々おかしいって気付いたし。実はこれまで瀕死に陥るたびに劇薬で何度も復活を繰り返してきただけっしょ?」

「…………フン! 気付いていましたか!」

「これで分かったし……。何も頼らず戦ってたジダ公の方が一番強いって!」


「な、なにぃ~!?」


 妙に冷静になっているマイシに、ケン治はうろたえ始める。同時にこき下ろされているように聞こえて憤慨も湧いてくる。

 これまで最強の人造人間として周囲を震え上がらせてきた。

 ジダ公だけは対等に張り合ってきて気に入らないと思っていたが、同時に敬意も払えていた。


 堂々と話せるのは製作者のコータロ、ドラゴリラ、オカマサ、そして同僚のジダ公。


 それでも自分は帝王として君臨するに相応しい最強格と自負していた。

 それに特殊な体質で、寿命を縮める劇薬を何粒も服用できる。そう私のテロメアは無限です……。



「もしかしたらチートに頼りまくってるアンタが一番弱いかもなし」


 笑むマイシに、ケン治はプチンと理性を吹き飛ばしてしまった。


「いちいちムカつくアマだ────ッッ!!!」


 激情を(あら)わに、凄まじいオーラを纏って音速で殴りかかる。マイシは炸裂剣(バーストソード)を振るって、それと激突。爆ぜる衝撃波が広々と放射され大地を大きく揺らした。衝撃波の余波が荒れ狂い、周囲の瓦礫や残骸を粉々に吹き飛ばしていく。


「ぎ……ぎっ……!?」

「ぐ……ぐぐうっ……!」


 額に血管が浮かぶほどの競り合いで、足元の地面がズゴッと土砂を巻き上げて陥没していく。更に断続的に陥没していって深くなっていく。

 尚も両者から高々とオーラが激しく噴き上げ続ける。ゴゴゴゴ!!


「かあッ!!」


 爆裂が余波を広げ、ケン治は弾かれる。クルクルと宙返りしつつ着地、惰性で後方へ地面を滑っていく。ズザザザ……!

 竜を象る燃え上がるオーラを宿し、悠然と歩むマイシ。

 ケン治は頬に汗を流し、戦慄を帯びる。




 ヨネ校長はその様子に驚愕していた。


「まだ……体力が持つのか…………?」


 今まで通りなら、とっくにスタミナ切れしてるはずだ。なのに、まだ余力さえ感じさせられる。

 いや、何かが彼女(マイシ)を強く突き動かしているように見えた。

 もはや独り善がりじゃないようにも見えた。


「そうか……、マイシもまた成長しておるのだな……。いやはや生徒の成長には驚かされるばかりだのう…………」フフッ!




 訝しげだったケン治はニヤリと笑む。


「ほっほっほ。こうなったら変身するしかありませんね……」


 両足を重ねるように立ち、両手を万歳するように構え、バレエのようにクルクル回りだす。するとボコボコッと筋肉質に膨れ上がって巨人のように肥大化していく。

 ゴゴゴゴ……、全身を纏うオーラもスパーク気味に(ほとばし)っていた。


「お待たせしましたね。安易(あんい)ですがフルパワー・MAX(マックス)ケン治とでも言いましょうか?」

「……マジ安易だなし」

「ムッ!」


 呆れるマイシの言葉に、ケン治は顔を(しか)める。


「じゃあ、あたしもその安易な変身とやらをするし!」

「なに!?」ピクッ!


「かああああッ!!」


 地響きと共に赤々と燃え上がる竜のオーラが激しく噴き上げ、その表面を連なるウロコを模したようなエフェクトが流動的に上昇し続け始めた。

 それに煽られるようにマイシのセミロングが逆立っていく。


 ゴウッと周囲に旋風が激しく吹き荒れ、破片が流されていく。

 圧倒的威圧感で大地が軋み、ケン治は冷や汗をかき始める。



「な……なに!? エ、エーテルだと……!?」

「ただエーテルを放出する変わり映えしない安易な変身っしょ?」

「う、ウソだ……!」


 ケン治はワナワナと身を震わせ、驚愕の表情に顔を歪めた。

 それを見てマイシは、独り善がりだった自分が重なって見えてしまう。


 これまでのように独り善がりだったら、このエーテルは会得できなかったし。

 あのゴン蔵にも勝てなかったかもしれない…………。

 ……ナッセが孤独の寂しさを吹き飛ばしてくれたおかげっしょ。ホントマジ助かるし。


 しみじみと感慨(かんがい)を感じて、彼女(マイシ)は笑みをこぼす。



「もし、アンタも友情の絆を育むとかそういうのあったら、この戦争の結果は大分違ってきたたかもなし……」

「な、何を戯言(ざれごと)をッ!! こ、この私は最強の帝王ッ!! そんな絆などッ!!」

「……アンタは他力本願なくせに、独り善がり! それで最強の帝王だなんてバカみたいっしょ?」


「目線の上から何様だァ────!! テメ────ッ!!」


 血眼で怒り任せとマイシへ突進して、ムキムキの豪腕による強烈なフックで頬を殴る。その余波で岩盤が捲れ上がり、土砂が噴き上げていく。しかしマイシは平然と立っていて、ケン治は「なに!?」と見開く。

 今度はみぞおちに豪腕の拳を叩き込み、背中を貫く勢いで衝撃波が後方の地面を抉り散らす。


 それでも平然とするマイシに、ケン治は焦りを募らしていく。



「最初あたしもあんたと同じように最強だと思い込み、孤高で一人閉じこもってたし……」

「だっ、黙れぇぇぇぇッ!!!」


 突っ立っているマイシをガムシャラに殴り続け、周囲の地形がその余波で蹂躙され続ける。



「けど、ナッセと戦って思い知らされたし…………」


 独り善がりな自分(マイシ)に立ち向かい、必死に全力を尽くして引き分けに持ち込むに至ったし。

 それに心を打たれた。こんな感情は初めてだったし……。


 この出来事がなければ、今の自分(マイシ)はいなかったし。


 下手すれば、オカマサとドラゴリラのように悪に堕ちてモンスターになってたかもなし……。



「あたしは殺す気でやってんのに、あいつは一緒にいたいからって最後まで意地で張り合ってくれたし。ホント優しすぎるし……」

「ち、ちくしょお────────ッッ!!!」


 微かに微笑むマイシに、ケン治は自分の攻撃が効かない事に動転して無駄な攻撃を繰り返していた。



「だからあいつと一緒に歩みたいって思うと、底力が湧くしッ!!」


 マイシはギンと眼光を煌めかし、剣を握る手に力を込める。グッ!


 すかさずケン治の腹に横一文字と炸裂剣(バーストソード)で斬りつけ、ドガンと大きく爆裂が広がった。更にもう一発とドカンと弾き、吹っ飛ぶケン治。

 それを追いかけるマイシは「かあああああ!!」と燃え(たぎ)るエーテルを纏って剣を振るう。


火竜(かりゅう)のッ、炸裂焔嵐剣バースト・フレイムストームッッ!!」


 瞬時に駆け抜けながらケン治に炸裂剣(バーストソード)の連撃を叩き込み、天地揺るがす爆裂が嵐のようにボボボボァンとあちこち炸裂して連鎖された。

 それを浴びてケン治は「ぐあああああああ!!」と上空へ舞い踊る。

 通り過ぎたマイシは地を滑りながら屈み込んで、轟々(ごうごう)と燃え盛る大きな両翼を広げていく。そしてロケットのように飛び立つ。


火竜(かりゅう)のォ──、炸裂天翔剣バースト・アッパーヘヴンッッ!!」


 膨らんで巨大化した灼熱の火炎竜を身に包み、急上昇するマイシは渾身の剣でケン治の腹を突き上げた!

 その強烈な一撃でケン治は「ごぼはあああッ!!」と盛大に吐血をぶちまけた。

 なおもマイシは「かああああ!!」と気合いを燃やし続ける。


 ゴオォォンッ!!!


 薄暗い大空に灼熱の大爆発が広がり、空震と共に昼間のように地上を明るく照らした。

 爆炎が収まり、黒焦げとなって白目にひん剥いたケン治がゆっくりと地面に落ちていった。ドサッ!


 火竜の翼で羽ばたきながら着地したマイシは、モニターのナッセにガッツポーズを見せて笑いかけた。


「へっ! サクッと終わったし!」

「ああ。お疲れさん! さっすがマイシだなぞ!」


 (ナッセ)の真っ直ぐな笑顔に、こっちも心がスッキリしていく気がした。

 なんつーか友達みたいな気軽な関係が、好きだし!


 もう怖がられたり、(かしこ)まられたり、へりくだられないってマジ最高だし……!



 これにてケン治撃破ッ!! これで人造人間、全滅だァ────!!




 だが空母は不気味に鳴動を響かせていた……。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!

あとがき雑談w


作者「実は黄金(ゴールデン)に身を変えて変身する予定でしたが、やっぱ()()なのでボツにしましたw」


ケン治「その名は『ゴージャズリッチ・ケン治』です」

作者「いや、名前変えても同じ()()っすっからw」

ケン治「……マッチョになるのも同じですけどね。ほっほっほ」

作者「それは言えてるwwww」


最暴愚(サイボウグ)ケン()格闘僧(モンク))』

 眉間の少し上に角が生えている。胸と肩と、ブリーフのような股を覆う黒い甲殻。腕と足には線のような模様。顔は冷酷そうな表情で、真紅が左右の頬と額を部分的に染まっている。

 テロメアが無限の特殊な体質で、寿命を縮める劇薬を何粒も服用できるチート。

 マッチョになるだけの安易なパワーアップでは、マイシに歯が立たなかった。

 威力値73000


ケン治「そろそろ次で100話になりますよ」ニコッ!



 次話『黒幕とラスボス登場!! 究極完全体人造人間!?』

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