閑話-4 アレフ視点
私はエタルナ伯爵領の魔道具開発部で主任をしているアレフという者だ。
誘拐されていたカトリーナ嬢を無事に取り戻すことが出来、先ほど隷属の首輪も解除されたと聞いて心底ホッとした。今回の件は完全な私の我儘だったのに、チームの皆は一丸となって協力してくれた。私は良いメンバーに恵まれた、女神様に感謝だな。と考えていると、
「アレフさん、お話があるのですが、少しお時間を頂けないでしょうか...。」
と声が掛かった。殿下と一緒に居たタチハさんという冒険者だ。
「ご、ご用件は何でしょうか?」
「それが... ここでは言い難いことなので場所を変えてよろしいでしょうか? もちろん皆さんご一緒に。」
いきなりこんなことを言われると面食らう。それにコルヒの話では彼女の正体は不明らしい。要注意だ。さっそくトルクさんが口を挟む。
「申し訳ありませんが、面識の無い方に要件も分からずに付いて行くのははばかられますので。」
「そうですよね。分かりました。少しだけ失礼しますね。」
と言うなり、いきなり周りの景色が切り替わった。
「すみません、ここは神殿にある私の部屋です。少々強引かとは思いましたが、私を信じて話を聞いていただくにはこうするのが手っ取り早いと思いまして。実は、私女神なんです。」
彼女はとんでもないことを言い出した。だが、確かにここは先ほどまで居た魔術学院の廊下ではない。
「神殿? まさか女神様の神殿ですか?」
「はい、そうです。」
まさか、6人の人間を領都から神殿まで瞬間移動させたと言うのか! 信じられない。
「そ、外に出てここが神殿かどうか確かめても良いですか。」
「それは構いません。ただ私が女神かどうか確認するためなら、もっと簡単な方法があります。いまから少しの間だけ、私の周りに張り巡らしている魔力遮断結界を解除します。」
「驚かないでくださいね。」
!!!!!
それから記憶が無い。気が付くと私はソファーに寝かせられていて、傍ではタチハさんがしきりに謝っていた。私は気を失っていた様だ。
「御免なさい。御免なさい。本当に御免なさい。」
ソファーの周りにはチームのメンバーが真剣な顔をして立っていた。皆顔が蒼い。いや無理はない。本当に女神様だったとは。しかし、女神様が唯の人間にこんなに謝るのか?
それから改めてソファーに座り直してから聞いた女神様の話はとんでもないものだった。私に女神代行官に成れというのだ。
じっくりと女神様の話を聞いた。意外にも女神様の話には合意できるところが多い。確かにこの世界は一見平和だが問題もある。一番の問題は大森林のために各国の耕作面積を広げられないと言うことだろう。前の女神ルーテシア様のご指導である。ルーテシア様は大森林の開発をさせないため、鉄製の農機具も禁止された。木製や銅製の農機具では国内にすでにある畑は耕すことができても、大森林を開墾することは難しい。耕作面積を広げられないなら、養える人口にも限りがある。人口抑制のためルーテシア様は婚姻に新婦又は新郎のどちらかが跡継ぎでなければ結婚できないとの制限を設けた。そのため長男、長女でない者は結婚をあきらめる者も多い。ほとんどの者はルーテシア様のご指導を当然のことと考えているが、本当に大森林以外に戦争を抑制する手段は無いのだろうか。
トモミ様は別の世界から来られたからか、この世界の者が当然と思っていることに疑問を持たれた様だ。私は、自分には解決策を考えられないと素直に認めるトモミ様に好感をもった。
私は決心した。やってみよう。この女神様の為に。




