3. 魂の探査
「頭を上げてください。前世がどうか私には判りませんが、今の私はただの人間ですから。」
<< お恐れながら申し上げます。神と人間は魂の挌が違います。トモミ様の魂を視れば今世でも神であることは疑う余地がありません。それも私の様なひとつの惑星を管理しているだけの下級神ではありません。明らかに上位の存在にあらせられます。>>
さっきから何かとんでもないことを言われている。
「いや、だって、何かの間違いですよ。私ただの人間です。なんの力もありませんし。 ねっ、ハルちゃん。」
いや、だって私に世界を救うとか出来るわけないじゃん。そんな力があったらこれまでの人生で苦労してないって。
ルーテシア様は信じられないという顔でハルちゃんを見る。そのまましばらく無言だったからハルちゃんと念話で話しているんだろう。少しして真剣な顔で再び私に視線を戻した。
<< トモミ様。トモミ様が神の力を使えないとすると、これは誠に不可思議なことでございます。恐れ多いことでございますが、トモミ様の魂を探査させていただいてよろしいでしょうか。>>
魂を探査? じっくり観察するということかな、それとも何かの機械を使って診察するのだろうか。ちょっと怖いけどこの状況から抜け出すためなら覚悟を決めよう。私も少しは興味があるし。
「はい、お願いします。」
<<失礼します。>>
という言葉と共にルーテシア様は私に向かって手をかざした。特に機械とか使うのではなさそうだ。始めは何も感じなかったが、しばらくすると身体の奥の方がゾワゾワとして来て思わず鳥肌が立ったけど我慢した。1分ほど頭から足まで順に手を動かしていたルーテシア様は、終わるとはぁ~と息を吐いた。
<<驚きました。魂と身体をつなぐインターフェースが曲げられています。明らかに故意になされたものです。そのため魔力が魂から身体に流れることが出来ず亜空間に放出されてしまっています。これでは力を使えずとも無理はありません。>>
「そうなんですか。」
<<魂というのは世界にとって貴重なものです、そのため強固なプロテクトが掛かっており改変は自分自身の魂であっても一切不可能です。 まして神の魂となれば....。 いったい誰がどの様にしてなし得たのか....。
そういえば、トモミ様は前世の記憶をお持ちではないのですね。だとすると、それも不可思議なことです。神の魂が前世の記憶をなくすなどあり得ませんから。>>
ルーテシア様は少しがっかりされた様だ。眉が下がって眉間に皺が寄っている。申し訳ないがどうしようもない。私に世界を救うなんて出来っこないのだ。
それにしても綺麗な顔だな、スタイルもスリムなのに出るとこは出てるし。これで25歳のハルちゃんの母親なんてズルい。きっとこういうのをチートと言うんだ。と余計なことを考える私。
<<トモミ様。 私はまだ望みを捨てたわけではございません。トモミ様はこの危機に瀕した惑星にまさに救世主が登場する様なタイミングで来られました。これは天啓に違いありません。私はなんとしてもトモミ様のお力を取り戻す方法を探し出す所存です。お会いしたばかりで申し訳ありませんが、しばらくその方法の探索に集中させていただきます。失礼の段ご容赦下さい。今日はお疲れになられたと思います。部屋や食事の手配を神官長に申し付けております。今宵はごゆるりとお過ごしください。>>
というとルーテシア様は私に一礼して早足で部屋を出て行った。結構思い込みの激しい人(神)かもしれない。
段落1行目の字下げが反映出来ていなかったので修正しました。