27. 決着
別室で待っていると、なんと殿下が到着したとの知らせを受ける。目を覚ました後すぐに、金貨を運んできた浮遊馬車に乗り込んで来たらしい。
わけの分からない様子の殿下に、口の立つアレフさんの部下の女性(トルクさんと言うらしい)が経緯を説明する。結構毒舌だ、殿下相手に大丈夫なのだろうか。
何とも言えない表情の殿下が私達に加わる。いつもの自信満々の殿下の面影がない。無口である。自分が馬鹿にしていたアレフさんにしてやられたことが理解できない様だ。もしくは理解したくないのか。
沈黙が部屋を支配するが、そうこうしている内にカトリーさんの隷属の首輪の解除に成功したとの連絡が入る。カトリーさんは目覚めているが、自室で誘拐されてからのことは何も覚えていないらしい。
アレフさん達はそれを聞くと、全員で歓声を上げハイタッチを始める。殿下と私はカトリーさんのいる部屋に駆け付けた。
カトリーさんは殿下が入室すると満面の笑顔で迎えた。
「トリーさん! あなたが助けてくださったんですね。」
トリーと言うのが殿下がカトリーさんと会うときに名乗っていた偽名らしい。
殿下は苦しそうな表情で答えた。
「私はあなたの救助に尽力した人達のひとりというだけです。」
「いいえ、私には判ります。あなたは私の命の恩人です。ありがとうございました。」
おいおい、と思った。恋する乙女の願望による妄想だろう。
その時、アレフさんと部下の人達が入室する。途端にカトリーさんの表情が硬直した。
「アレフ子爵様、なぜここに?」
「い、いや、お見舞いにと...。」
「そうですか、それはありがとうございました。でも、アレフ様の求婚はお断りさせて頂いたはずです。申し上げにくいのですが、こちらに来られると迷惑です。」
「そ、そうでしたか、そ、それは、し、失礼いたしました。」
アレフさんは、そう言うとあわてて部屋から出て行った。アレフさんの部下達も後に続いたが、引きつった笑顔のトルクさんだけが残った。
トルクさんはカトリーさんに深々と頭を下げ、
「初めまして、アレフ子爵の下で働いておりますトルクと申します。この度は私達の主任がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。正直いって、私達部下も主任には困っているんです。その気になれば世界征服でも出来そうなくらい頭が良いくせに、ヘタレでビビリで無欲なんです。そのくせ、すぐに突飛な行動をして私達部下を振り回してくれます。今回も惚れた女のために命がけで助けに行ったりして。バカですよね。フラれた女なんかほっとけばいいのにといっても聞かないんですよ。愛する女性助けるのに、フラれたか、フラれなかったかが判断基準になるなんておかしいだろう、と言いましてね。部下の私達も付いていくしかないじゃないですか、いい迷惑ですよ。まあ、主任がいなくなったら今の居心地のいい職場もなくなってしまいますから仕方ありませんけどね。というわけで、あんなバカのへたれ男は気にしないでください。私が責任をもって二度とあなたには会わせませんので。主任はあなたにはもったいないですから。それでは失礼します。」
と一気にまくしたてて出て行った。相当頭に血が上っていたな。アレフさんはカトリーさんにはもったいないと言っていたよね。最後にさらっとカトリーさんをディスっていったわけだ。トルクさんはアレフさんが好きなのかな。好きな男が理不尽に無下にされたらそりゃ腹が立つよね。三角関係は難しいな。
男女関係のことは置いておいて、私はある決心をしてアレフさん達の後を追い、
「アレフさん、お話があるのですが、少しお時間を頂けないでしょうか...。」
と話かけた。




