14. 謎の魔法陣
翌日から10日間、私は弁当持参で魔晶石のチャージを続け、ついに満タンにすることが出来た。ハルちゃんの話ではこの10日間災害は発生していない。
再度、魔力ライン網を通じて状況を確認する。以前確認した時よりも、痛みや熱がましになっている。魔法陣の働きは確かなようだ。制作したのはアレフさんだったっけ、大した腕かもしれない。
あれ、今何か変な感じがした。わずかだけど魔力ライン網から魔力が引き出されているのを感じる。引き出されている量はわずかだが、これが魔晶石の魔力が枯渇した原因かもしれない。前回気付かなかったのは、魔晶石の魔力が枯渇していて、引き出すだけの魔力が流れていなかったからだろう。
引き出されている場所を確認する。人間族の国の南にある大森林の中だ。モンスターがいるので滅多に人は入らないところのはずだ。何があるというのか。一度行って見る必要があるな。
まだ日暮れまでには少し時間がある。私はすぐに瞬間移動で現場の上空に移動した。上空からみて驚く、回りに何もない大森林の中に開けた空間があり、その中に巨大な魔法陣が設置されていた。
なんだこれは? 何のための魔法陣なんだ? だれが設置したんだ? 知識のない私では、魔法陣に書かれている複雑な文様の内容はまったく解らない。破壊するのは簡単だが、それでは犯人についての手掛かりもなくしてしまうかもしれない。ここは一旦引き返してハルちゃんに相談しよう。悔しいけれど私は神殿に引き返した。
部屋に戻った私は、例によって料理長の心のこもった豪華な食事を食べながらハルちゃんと話をする。今日は何とかいうカクテルみたいなお酒を試してみる。最近は毎晩お酒を頂いているな。
森林の中に合った魔法陣の話をすると、ハルちゃんは一度写真を取って来て欲しいと言ってきた。なんと地球のカメラに似た魔道具があるらしい、最近発明されたものだとか。写真が取れたら王都送り、魔法省の専門家に見てもらうそうだ。明日にでも写真を取りに行ってくる旨返事した。
「それと、トモミが良ければだけど。人間族の国の王様から何度も謁見の申しいれが入っているんだ。これまでは女神は多忙であるとして断っていたんだけれど、魔晶石のチャージが終わったのなら時間はあるかな。」
「でも女神が人間族の国の王様と先に合っちゃったら、他の国より人間族の国を優先していることにならない?」
「まあ、それに関しては非公式の場でたまたま出会ったという建前にすれば問題ないと思う。こちらとしても顔見せしておいた方が色々と依頼をし易いしね。」
「それならいいよ。王宮にいけばいいの?」
「いやいや、トモミの方が上だからね、王様がこの神殿までトモミに会いにくることになる。」
「えっ、そうか、そうだよね。」
なかなか実感が湧かないが、私はこの惑星で一番偉いのだ。女神なんだから人間より偉いと言われればそうなんだろうけど、王様を呼びつけるなんて、元小市民の私としては違和感が半端ない。
「それと、王様より先に神官長と聖女さまがご挨拶したいそうだ。神官長には前にも会ったと思うけど、女神になってからはまだだよね。明日の午後くらいでどうかな。」
「了解、それなら午前中に魔法陣の写真を取ってくるね。」
ここで簡単にこの惑星の説明をしておく。この惑星に大陸は1つだけで、その大陸に人間族の国、ドワーフ族の国、獣人族の国、鱗人族の国、エルフ族の国と5つの国がある。といっても大陸全体が大森林と呼ばれるモンスターが跋扈する森林に覆われていて、その中にまるで島の様に開けた土地が5つあり、ここにそれぞれの国があるという表現が適切である。国と言うくらいだからかなりの広さがあるのだが、それでも大陸全体と比べると人の住む領域は小さなものだ。
各国には代表者としての王がいるが、その政治形態はまちまちである。人間族の国の様に封建制に近い政治形態をとっている者から、エルフ族の国の様に大きな町は無く、村々の長老が合議制で政治を行い、王はそのまとめ役でしかないというものもある。
それぞれの国には女神ルーテシア様を崇める神殿があり、その周りは門前町が形成されているがこれらは女神ルーテシア、現在は女神トモミが治める直轄領となっている(実質的には神官長が統治している)。また各国には多くの信徒とその教会があり、それらの信徒を纏める教団はこの惑星の最大勢力と言えるだろう。もちろん教団は人々の信仰を正しい方向に導くためにあり、直轄領以外での政治的な活動は一切していない。だが、教団の発言が政治に及ぼす影響は計り知れず、国々としては無視できない勢力となっている。
ちなみにこの惑星には他の宗教は存在しない。禁止されているのではない。地球の神様と違い、女神ルーテシア様は頻繁に人々の前に姿を現し、人々の幸せな生活を願い多くのことを成し遂げてこられた結果、この惑星で神と言えばルーテシア様であり、他の概念的な神様を信仰するという風土が育たなかったんだ。当然各国の王や支配者階級も女神様の信徒である。
また、国と国との間には街道があり、大森林の中を進むという冒険をしたくなければ、他の国に行くには必ずこの街道を通る必要がある。必然的に、これらの街道は貿易を行う商人達の往来が集中し、それらの商人を目当てとする宿場町があり、中には荷物の中継地として大きな都市になっている所もある。それらの町や都市はどの国にも属しておらず、さまざまな人種が住んでいて、町や都市が小さな独立国の様に自治を行っているところも多い。
食事後もハルちゃんと私はしばらく歓談したのち、お風呂にはいってから寝室に向かう。今日もハルちゃんは私の部屋にお泊りだ。嬉しい♪♪




