12. 秘密の部屋
翌朝、目が覚めるとハルちゃんに抱きかかえられていた。嬉しくなって私もギュッと抱き返す。
「「おはよう。」」
挨拶が被った。
「そろそろ起きる?」
この惑星に来て不便なのは時計が無い事だ。腕時計やスマホは地球から持ってきたが、今手元にはないし、5年も経てば電池が切れているだろう。ここでは神殿の職員が1日に4回鐘で時刻を知らせているらしいが、次の鐘がなるまでは今が何時なのか判らない。ちなみにこれはルーテシア様が私の脳に書き込んでくれた情報だ。とりあえず目が覚めたときが起きる時と割り切りベッドから立ち上がり服を着る。今度は何とかひとりで着ることが出来た。
リビングに移動し、ハルちゃんがサイドテーブルの上にある魔道具のボタンを押すと、すぐにノックの音がしてエリスさんが入って来た。
速! 部屋の前で待機していたのかもしれない。 エリスさんはちゃんと休息を取っているのかな。まさか24時間勤務じゃないよね。ブラック反対!
「失礼いたします。」
「朝食をお願いできるかな。」
「畏まりました。」
エリスさんは出ていくとすぐに朝食が乗ったワゴンを押して戻ってきた。なんと有能なメイドさんなんだろう。
朝食はパンとベーコンエッグ、サラダ、スープと地球とよく似た献立だ。おいしくいただきました。
朝食が終わると、ハルちゃんは町の再建計画の打ち合わせに出かけて行った。ちなみに昨夜ハルちゃんは私の部屋に泊まったが、ハルちゃんの部屋は隣りにあり、寝室どうしが小さなドアでつながっていて、いつでも行き来できるらしい。嬉しい情報である。
私は、ハルちゃんを送り出すと瞬間移動で神殿の地下にある秘密の部屋に向かった。実はルーテシア様の魔法に関する情報の中にこの部屋についての記述があったんだ。なんと私の為に新に作った部屋らしい。
出入り口はなく瞬間移動でしか入室できない秘密の部屋だ。広さは10畳くらい、日本の基準だと十分大きいのだが、女神の部屋に比べるとこじんまりしている印象だ。照明は無いが壁全体が発光しており暗くはない。部屋には家具や装飾品はなく、壁際に透明なクリスタルで出来た作り付けの大きな椅子があるだけ。
この椅子は惑星の内部にある魔力ライン網(私の魂にある触手みたいなものだろうか)と繋がっており。座るだけで惑星の状態を知ることが出来る。惑星の神経網がこの椅子に繋がっていると考えれば良いだろうか。座ることで惑星全体を自分の身体として捉え、問題のある場所を痛みやだるさとして認識できる。
ちなみに、驚いたことにルーテシア様の身体は惑星そのものだった。だから魔力ライン網は元からルーテシア様の身体の一部として存在していたもので、私用に新に作られたのはこの部屋と椅子のみである。
私の会った人間バージョンのルーテシア様はアバターと呼ばれるものらしい。昔ルーテシア様は惑星の住民とのコミュニケーションに苦労された。何せ惑星と人ではサイズが違いすぎる。ルーテシア様からみれば人は小さ過ぎて個々を識別できない。人から見てもルーテシア様の念話を聞くことができても、神の声なのか、悪しき者の囁きなのか確信が持てない。
そこで人と等身大のアバターを作ることで、お互いのコミュニケーションの改善を図った。アバターの構造は基本的には人と同じであるが魂は入っておらず、ルーテシア様の遠隔操作で動く。人間族タイプのアバターだけでなく、ドワーフ族タイプ、獣人族タイプ、鱗人族タイプ、エルフ族タイプのアバターがあり、それぞれの国の神殿に保管されているらしい。
ただ、その中でも人間族のアバターはある意味特別な存在だ。ルーテシア様はこのアバターでハルちゃんを出産したんだ。ハルちゃんにとってのお母さんのイメージはきっとこのアバターの姿だろう。
私は部屋の椅子に深く腰を下ろした。クリスタル製なので、正直いって座り心地は良くない。次回はクッションを持って来ようと考えながら、惑星の魔力ライン網と接続する。途端に身体が一気に巨大化する感覚に襲われる。
今私は惑星そのものになっていた、もちろん感覚としてだ。すぐに身体のあちこちが痛くなって来る、熱を帯びているところもある。どうやら地震や火山のエネルギーが蓄積している箇所らしい。
そして、さらに重大な異常に気付いた。




