再会のノクターン(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。
翌日午後9時。龍と雲雀は奏のコンサート会場の近くに待機し、終わるのを待っていた。
龍としては、できればチケットを買って、彼女のピアノを間近で聞きたかっただろうが、チケットを買う金などなく、人殺しは蚊帳の外がお似合いかと自嘲した。
そんな龍に対し、いつも通りの雲雀は、
「龍。わかってると思うけど、手伝ったる代わりに、報酬の4割は払ってもらうで。それでツケはチャラや」
と、釘を刺した。
「わかってるよ。じゃあそろそろ……」
そう言うと、龍は手で顔を覆い、殺意を高めた。すると、髪が黒から青に変わって逆立ち、青龍の姿になった。
「楽しい仕事の始まりだ。奴が外に逃げたら頼んだよ」
雲雀が了解すると、青龍はこっそりとコンサート会場に入った。
一方、弟の裏の顔を知らずに依頼を出した奏は、コンサートを終えると、龍の家に帰る準備をしながら、自分を狙う人物の殺害依頼が届いたのか、少し不安になっていた。
それでも、情けない顔で帰って弟を心配させたくないと思った彼女は、前向きに考え、持参した荷物に手をかけた。
その時、背後からエアガンを10発近く乱射された。
痛みに耐えながら撃たれた方を向くと、そこには見知った人物がいた。
「久し振りだなぁ。奏」
「あなたは……坂上さん!」
奏は驚いた。まさか犯人が、かつて同じピアノ教室に通い、自分より早く世に出たピアニストで先輩の坂上だったとは思ってもいなかった。動機は武文の推理通り、奏人気のせいで影に追いやられたことに対する嫉妬であった。
「お前のせいで人生台無しだ! だから!」
そう言うと坂上はエアガンを全弾撃ち、奏を押し倒してサバイバルナイフを取り出した。
「お前の指を全部切り落として、お前の人生も台無しにしてやる。そのあとで、俺の奴隷として一生飼ってやるよ。優しいねぇ俺は」
男の凶行に奏は恐怖し、助けを呼ぼうと口を開きかけた。
奏が一番気に入ってる曲はショパンの『夜想曲』で、このコンサートでも当然弾いています。