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死獣神~血の書~  作者: 天馬光
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青龍と朱雀の夏休み(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。

 平成17年7月29日。この日は最高気温が35℃を超えると予想されている上、湿度も高く、朝から蒸し蒸ししていた。


 そんなじっとしているだけで汗が出てくるような午前8時頃。龍はモーニング代わりにと思い、雲雀の店に来ていたが、残念ながら店は準備中でモーニングも普段からしておらず、店内でグダっていた雲雀と一緒にテーブルに突っ伏していた。

 というのも、雲雀が節約のためにクーラーを頑なにつけようとせず、そのせいで店内がほぼサウナに近い状態になってしまっているのである。そのため、2人は茹だるような蒸し暑さで動く気すら起こらなくなっていた。


 そんなバテバテの2人がいる店に、武文が入ってきた。


「2人共、相当バテてるね」


「見りゃわかるやろ。ドアホ」


「正直、海かプールに飛び込みたい気分だよ」

 武文の言葉に2人がそう返すと、武文はまるで読んでいたかのように、白浜の温泉宿のペア優待券を2人の目の前に出した。

 オーナーからの突然の贈り物に、龍と雲雀はすぐさま飛びついた。


「実は昨日、翔馬君から貰ったんだけど、会社の方が忙しくてそれどころじゃないんだ。日頃頑張ってくれてる2人へのボーナスってことで、良かったら使ってよ」

 武文がそう言うと龍と雲雀は大喜びし、これでもかというぐらい感謝したあと、旅支度をするべく家に帰った。



 午後1時過ぎ、勢いで白浜まで来てしまった2人は、縁もゆかりもない土地の地理など詳しいはずがなく、どこの宿がいいかなど全く見当がついていなかった。


 そんなわけでしばらく駅前で考え、とりあえず観光案内所に行こうとしたところで、同じく白浜に来ていた翔馬と出くわした。

 最初は翔馬も驚いていた様子だったが、すぐに武文から優待券を譲り受けたと察した。


「翔馬君はどうしてここに? もしかして、翔馬君も優待券?」

 龍がそう聞くと、翔馬は顔の前で手を振り、この町で出会った新しい彼女とデート中だと答えた。


 鞍替えした新しい彼女と早くもお泊まりデートということに呆れながらも、会話を弾ませた龍と雲雀は、母方の祖父と祖母が住んでいて、多少の土地勘がある翔馬からおすすめの宿を聞き、ペガサスの力でその宿まで瞬間移動で送ってもらった。

 先に言っときます。今回の話は誰一人として死にません。

 龍と雲雀の貴重な夏の恋愛話。どうぞご覧下さい。

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