血塗れの聖天使(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。
翌朝。龍は学校の自分の席で、のんびり雲を眺めてぼけーっとしていると、雲雀が血相を変えて走って来た。
「龍! 大変や!」
「ん? どうしたの? 赤羽さん」
柚を彷彿とさせる呑気っぷりにイライラしつつも、雲雀は今朝のニュースのことを話した。
それによると、遺体の身元が判明し、ターゲットである中年男性と、彼の不倫相手と依頼人であることが明らかとなったらしい。
これには、先程までのほほんとしていた龍も驚いた。
「まったく。依頼人を殺すなんて前代未聞やで」
「だね。でも、その人はどうしてそんなことを……」
『エンジェルゲート』の管理者の行動を理解できない龍は彼に疑問を抱いた。
と、そこへ、1人の少年がやってきた。
「んなもん決まってるだろ? 単純に人を殺したいだけなんだろうぜ」
「えっと……君は、確か……」
「田中翔馬だ。入学式で会ったぶりだから、覚えてないのも無理ねぇけど」
隣りのクラスの生徒である翔馬がそう名乗ったのを聞いて、2人は聞き覚えがあった。
中学生でありながら空軍に所属している大佐で、様々な事件に介入している綱手中1有名な男。
若くしてこれだけの実績を重ねられたのには、一説には他の人とは違うあることが関係しているらしい。
「そんな血生臭い話よりさぁ、雲雀ちゃんだっけ? 今日の放課後どう? 俺がご馳走するけど」
もっとも、当の本人はご覧の通り、普段はただの軟派な軽薄野郎だが。
ちなみに、武文や宙らとは小学校からの仲である。
「教室のド真ん中でナンパとは、えぇ度胸やな。あんた。聞いた話やと彼女がおんねやろ?」
「それはそれ。これはこれ。俺が聞きたいのはYESかNOかだ。さぁ……どっち?」
翔馬にそう誘われて、雲雀は呆れながらも了承した。
ガッツポーズをする翔馬だったが、雲雀にデートする気など微塵も無く、彼女の店で龍や武文達も一緒という条件を出されたことで、売り上げに貢献させられただけだと肩を落とした。
それでも諦めないどころか、柚や美夜がいることで女子が多いと喜ぶあたり、筋金入りである。
ちなみに、食事代は各自で払いますが、龍だけは雲雀に言われて彼女の分も払わされました。




