血塗れの聖天使(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。
平成17年5月8日。この日、龍は雲雀に呼び出されて、定休日の彼女の店にいた。
外の雨音が聞こえてくる中、雲雀は呼び出した用件を語り始めた。
「龍。あんた、今うちらの邪魔をしてるに等しい2人を知ってるか?」
そう問われた龍には、心当たりがあった。
1人は無差別連続殺人鬼。
その人物はこの春頃から無差別に殺人を繰り返し、現場に白い羽根と『Good-bye human』と書かれたカードを残す凶悪犯。
もう1人は『エンジェルゲート』という闇サイトの管理者。
一応龍と雲雀と同じ殺し屋なのだが、問題はその価格だった。
雲雀は彼らについて答え合わせをしたあと、持参したノートパソコンを開き、『エンジェルゲート』のサイトにアクセスして、龍に依頼受付画面を見せた。
「見てみ。昨日でも100円で請け負っとんのに、今日はタダやで?」
彼女の言うとおり、『エンジェルゲート』の管理者は依頼をタダで請け負っており、そのせいか、依頼が殺到していた。
「ほんとだ。いくら安くしたもん勝ちだからって、これじゃあ商売にならないよ」
「せやろ? こんままじゃ、うちら廃業せなあかんようになってまう」
さすがに危機感を感じた龍はその後、雲雀とこの邪魔者対策をどうしようか話し合ったが、集まった時間が遅かったこともあり、結局話はまとまらなかった。
その夜、『エンジェルゲート』の管理者は、依頼者と会ったあと、その足でターゲットである依頼者の旦那のところに向かい、得物であるワイヤー状の刃物・ワイヤーカッターで彼をバラバラにした。
だが、彼の仕事はこれで終わりでは無かった。
「任務完了。さて、人を呪わば穴二つ。原因と依頼者を殺しに行くとしよう。タダで何もないなんて、そんなうまい話あるわけ無いからね」
そう言って『エンジェルゲート』の管理者は高笑いし、その場を後にした。
『前世恋物語~千の星と守護の暴風』を読んだことのある方、お待たせしました。彼らの登場です。




