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死獣神~血の書~  作者: 天馬光
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再会のノクターン(5)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の物語。

 信じ難い事実に直面した奏は、慌てて自身の荷物から携帯電話を取り出し、青龍を撮影した。


「どういうつもり?」


「動かないで、龍。動いたら、この写真を警察に送る。写メだって十分証拠になるんだから」

 姉の命懸けの脅しに、龍は哀れむようなため息をつき、本来の自分を偽らずに制止を呼びかけた。


「……姉さん。無理だよ。姉さんが送信ボタンを押すより先に、僕は間違いなく携帯を切断できる。ヘタをしたら、姉さんの指まで切り落とすことになる。それは困るだろう?」


「切れてもいい! 私は、龍にこういうことしてほしくないから……どうして? どうして、龍……?」

 そう聞かれて青龍は、この稼業に手を染めた理由を語った。


 と言っても、彼自身、いつからこうなってしまったのかよく思い出せない。ただ、それでも足を洗わなかったのは、強過ぎる殺人衝動と家族に捨てられ孤独となったからだった。


「……僕は孤独に不幸に生きていい。こんな狂った僕にはそれがお似合いだ。だけど、姉さんは違う。姉さんは、僕の分まで幸せに生きなきゃいけない。姉さんには姉さんが思う幸せを奏で続けてほしい。それだけが僕の願いなんだ」

 弟の願いと心を聞き、奏は撮った写真を消去した。


「……わかったよ、龍。あんたの事情も、あんたの気持ちも。なら、望み通り奏で続けてみせるよ。ピアニストとしても、あんたの姉としても。あんたの幸せを願いながら、ね」


「姉さん……」


「だからあんたも約束して。不幸になったり狂っちゃったりしたのは、あんなことがあったし仕方ないけど、孤独なんて金輪際言わないで。あんたのまわりには雲雀ちゃんや武文君達がいるでしょ。もちろん、私もその1人のつもりだよ」

 そう言われて青龍は約束し、願いを聞いてくれた礼を言って去っていった。



 後日、龍の口座に奏から2000万振り込まれていた。あまりの大金に驚いたが、姉からの気持ちと思った龍は何も聞かず受け取り、雲雀に4割渡した。

 今回の依頼は予想以上のお金を貰ったのもそうだか、彼にとってお金とは違う大切なものを受け取った気がする一件となった…………

 朱雀は当初、龍が自分に断りなく値切ったことで荒稼ぎできるという目論見が外れ、激怒していましたが、予想以上の報酬にご機嫌になりました。

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