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アンタでいいから行ってこい!  作者: 一奏懸命
第2章 分身&合体
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第27話 分身の術!


「はぁ!? ひとみちゃんが、アンタを好きになった!?」

 晴海が食べていたポテトチップスを口から飛び散らせて叫んだ。

「汚ねぇな! バカ!」

「それどころじゃないわよ! それで、どういう展開になったのよ!?」

 純平は一通りの流れを説明した。

 ひとみは家で会った純平に、一目惚れしてしまったそうなのだ。以前から、学校に近くで純平の姿を見ることはあったが、晴海の双子の弟とは露知らずというわけだった。

 高校入学後、純平そっくりの晴海を見てドキドキしたそうだ。純平もたまに感じるひとみの視線が少し気にはなっていたが、そんなに意識するほどでもなかった。

「それで? 流れはわかったわ。何が大変なのよ」

「デ……」

「デ?」

「デートの約束、取り付けてほしいって……」

 晴海が真っ赤になる。それからすぐに大笑いし始めた。

「アッハハハハハハハ! えぇ!? 何! アンタがひとみちゃんとデート……アハハハハハハハハハ!」

「わ、笑ってる場合じゃねーよ!」

「ゴメンゴメン! それで? いつデートすんの?」

「明日」

「アハハハハハハハ! ずいぶん突然じゃーん! やだぁ、もう! 頑張ってね!」

「そ、それだけじゃねーんだよ!」

「今度は何よ~」

 晴海は呆れた様子で耳掃除をしながら聞き返す。

「堀越くんにも、明日デートしようって……言われた」

「……え」

「こ、断る理由なんて『晴海』にはないし」

「で、OKしたの?」

「断ったら、またお前俺を半殺しにするだろ?」

「……。」

 図星だったので何も言い返せない。

「でもどうすんのよ。あたしは……まだ行けないよ?」

「そのケガ、いつ治るのさ」

「3ヶ月だから……夏休み入ってしばらくしてからじゃない?」

「あと半月ちょいだろ? もうほとんど治ったも同然じゃん! お前も行けよ!」

 純平は必死だ。

「何言ってんのよ! 治りかけてるのに、また変に折れたりしたらどうしてくれるの!? 行き先が遊園地なんでしょ? 激しいアトラクションではいまた折れました~! 入院ですー! 3ヶ月ガッコ行けませんなんてもう冗談じゃないわ!」

「だからって、俺はどうすればいいんだよ!」

「ダブルデートよ!」

「はぁ!?」

「ほら、コレ見て!」

 晴海は鏡を純平の顔の前に出した。

「何、これ」

「アンタの髪型よーく見て」

 ちょっと伸びてきて、元々サラサラの髪の毛なので艶もある。

「はい! これは女子野球選手の片岡安祐美さんです!」

「それが何」

「よーく見て。髪形。アンタとそっくり!」

 晴海は片岡選手がボーイッシュなのか、純平が女の子っぽいのかどちらが言いたいのか純平にはよくわからなかった。

「それをどうしろっつーんだよ」

「つまり~、アタシがカットしたことにして、服装だけ替えて、アンタが堀越くんとひとみちゃんと入れ替わり立ち代わり、デートするの!」

「バカ言ってんじゃねーよ! どうすんだよ、変にバレたりしたら!」

「しょうがないじゃない! 元はといえば、無用心にひとみちゃんと会ったり、何も考えずに堀越くんとデート取り付けるアンタが悪いんだから!」

 何とも理不尽な理由だ。しかし、翔希のほうはデートを断れなくもなかった。ただ、晴海に怒られるのが恐ろしく、OKにしてしまっただけだったのだ。確かに、純平にも非はあった。

「じゃあ……」

「そう! デートもアンタが行って来い!」

「そんなムチャクチャなぁ……」

 純平が溶けるようにして床に寝転ぶ。すると下から涼子が晴海を呼んだ。

「晴海―! 今日は病院の日でしょう? 早く行ってらっしゃい!」

「あ、ハーイ! ねぇ、アンタも付いてきてよ。何かいろいろ情報つかめるかもしれないし」

 純平は大きくため息をついて、まだ変な足取りをしている晴海の後についていった。


 大森医院に着くと、久しぶりに来た晴海に賢輔が胸を躍らせていた。あからさまに警戒する晴海をよそに、賢輔はここぞとばかりに二人に絡んでくる。

「あれ?」

 賢輔が声を上げた。

「晴海、ちょっと痩せた?」

 ギクッと二人は体を震わせた。

「え、そ、そうかなぁ?」

「絶対痩せてるよ。何でだろうな。家でずっとジッとしてるなら、太ってもおかしくなさそうなのに」

 晴海の握り拳が賢輔に飛んだ。同時に賢輔の意識も飛んでいく。

「ヤバいじゃない! ねぇ、あたし痩せてるんだって!」

 晴海は嬉しそうにしているが、純平にしてみればそれは危機的な言葉だった。

「何よ~! アンタ暗いわね!」

「あのさ。喜んでるところ悪いんだけど」

 純平はソッと晴海に耳打ちした。

 ラグビーをやっている純平。実は体力が落ちたり体型が悪くなったりしないように、筋トレは継続していたのだ。高校生の年齢に差し掛かり、成長期も相まってここ2ヶ月で純平の体格は少し良くなった。つまり、少しだけ「太った」ように見えるし、実は周りにも太って困っている、という設定にしていたのだ。

「えぇ!? じ、じゃああたしが学校に戻るまでには……」

「ちょっと太ってもらわないと困る……かも……」

「あああああああ! ア、アタシが太るですってぇ!?」

 小声でも周りに聞こえそうな勢いで晴海が言った。

「しょーがねーだろ! 俺は女装してまでお前の学校に通ってるんだぞ! 大変なんだから……お前も太るくらい、できるよな!?」

 珍しく形勢逆転。純平の勢いに押され、晴海は「わかりました……」と落ち込んだ様子で答えた。

 大森医院からの帰り。二人は明日のデートの打ち合わせをしていた。

「万が一、何かがあった時のためにお前も来いよ」

 純平がサラリという。

「でもさぁ、変にバレたりしたらややこしくない!?」

「大丈夫だよ。お前、今は髪の毛長いだろ? 明日、俺は髪を切った設定で堀越くんに会うんだから、お前はグラサンでもかけて変装してれば、問題ないよ」

「あぁ! なるほど……」

 その後も二人は違和感が出ないよう、細部まで打ち合わせをして、万が一の非常事態には、晴海本人が翔希をカバーするということになった。

 明日のデートはトワイライト・アイランドでひとみとは10時に待ち合わせ。翔希とは9時に待ち合わせることになっている。純平は不安でいっぱいだったが、半ば当たって砕けろ!という躍起な感じにもなっていた。







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