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アンタでいいから行ってこい!  作者: 一奏懸命
第1章 アンタでいいから行ってこい!
26/40

第24話 問い詰め

「……。」

「……。」

 小樽市への移動中。現在、メンバーはバスに乗っている。しかし、順平と翔希のカップルはバス乗車直後からまったくもって会話がないのだ。

「ねぇ……どうしたのかな?」

 ひとみが心配そうに美砂に聞いた。

「私も全っ然わかんないの。昨日は普通だったんだけど……」

 美砂も首を傾げる。ひとみはいたたまれず、和彦に聞いた。

「ねぇ。堀越くんって急にあんなダンマリになるような人なの?」

「え……いや〜、そんなことないんだけど……」

 和彦もすっかり困っているようだった。

「あ」

 絵磨が思い出したように呟いた。

「どうしたの?」

 花梨が聞く。

「きっと……だと思うの」

「あぁ〜……そうね、そうかもね」

「何々? 二人で解決しちゃわないでよ」

 気になって仕方がない美砂が二人のところへ駆けつける。

「大きい声で言っちゃだめよ。多分ね……」

「……えぇ!? やっぱそう思う!?」

「ちょっと、静かに!」

 花梨が慌てて美砂の口を塞いだ。

「どうしたの?」

 純平が振り返る。美砂が「ううん! 何でもないの!」と首を横に振ると「そう?」と言ってまた前を向いた。

「あの緊張感はきっと……間違いないわ」

「何? 何の話?」

 爽太郎が興味深そうに話に加わってきた。美砂はニコニコ笑い、翔希と純平以外の全員をコッソリ集めて何やら話を始めた。


「着いたぁ!」

 純平はようやく狭いバスから解放され、大きく伸びをした。

「ねぇ! 早速だけどどこに行く……あれ?」

 振り返ると女性陣が気分悪そうな顔をしている。

「どしたの?」

 慌てて純平が美砂の元へ駆け寄る。

「何か……長時間バス乗ってて酔っちゃったみたい……」

「えぇ!? 大丈夫なの?」

「ちょっと休んだら問題ないと思うけど……」

「そっかぁ……。ひとみちゃんは?」

「私……はちょっと、どこかで休んどきたいかも」

「そっかぁ……。絵磨ちんと花梨ちゃんは?」

「私たちもちょっと……」

「そっかぁ……」

 見え見えの演技であるがゆえに笑いを堪えるのが大変な男性陣。しかし、小樽という観光地を目の前にしてさっきまでの緊張感がウソのような純平はその妙な様子には気づいていない。

「俺らは彼女たちを見とくからさ、晴海さんと翔希は観光してきたら?」

「え……」

 翔希が困った顔で純平を見た。純平はごくごく自然にニコッと微笑み「行こうよ!」と声を掛けた。

「じゃあ……行ってくる」

 顔を真っ赤にする翔希。メンバーたちは微笑ましそうに手を振りながら、二人を見送った。

「成功ね」

「でもさぁ……翔希くん、かわいそうな気もする」

 ひとみが残念そうに呟く。美砂はその言葉にギクッと体を震わせた。

「え? かわいそう?」

 それを聞いた拓実が不思議そうに首をかしげた。

「ちょっと、ひとみちゃんいい!?」

「う、うん……」

 美砂は慌てて近くの建物の裏へと連れ込んだ。

「ねぇ、さっきのかわいそうって……」

「……。」

「気づいたの?」

「……うん」

「どこで!?」

「……。」

 美砂はハァッとため息を漏らした。

「とにかく! いい!? このことは誰にもナイショだよ!?」

「え? で、でも……」

 ひとみはかなり困った様子を見せている。しかし、ここで退くわけには美砂はいかなかった。

「とにかく! 絶対ナイショ! 約束だからね!?」

「わ……わかった」

 美砂は言うだけ言って、すぐに全員のところへ戻っていく。ひとみは少し呆気に取られ、ポツリと呟いた。

「なんでだろ。相思相愛なの、丸分かりならみんなで協力したほうが楽なのに」

 一方、美砂は気が気でなかった。ひとみが純平は実は男子だと気づいたのだと勘違いしていたのだ。

「これは……マズいわね」

 美砂はブツブツ呟いて真剣な表情をしながら、全員のところへ歩いていった。

 それぞれの思いが勘違いされた状態で交錯していく。果たして、彼ら彼女らの思いはどこへ行くのだろうか。






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