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アンタでいいから行ってこい!  作者: 一奏懸命
第1章 アンタでいいから行ってこい!
23/40

第21話 熟慮してみよう

 男子浴場。翔希たち男子5名は風呂に浸かりながら、それぞれのカップリングの女子について意見を戦わせていた。

「やっぱさ、高校にもなると女子も胸でけぇよな」

 ニヤニヤしながら潤が呟く。絵磨は確かに、メンバーの中でも胸は大きいほうである。

「でも、僕としては津田さんがタイプかな」

 メンバーでも真面目な拓実が言う。

「どうせタクのことだから、性格重視なんだろ?」

「そりゃそうだよ。基本、性格が一致するっていうのは大事だろ?」

「っかー! 真面目すぎるよ、タクは」

 爽太郎も隣でウンウンと大きくうなずいている。

「そういえばさ、翔希はどうなんだよ?」

「え?」

 翔希は突然自分に話題を振られたので一瞬、答えに詰まった。

「好きなんだろ? 高垣さんのこと」

「ま、まぁ……」

 あっという間に自分の顔が真っ赤になるのがわかる。翔希は昔から何でも顔に出やすいタイプだと言われている。スネたりすると特にわかりやすいらしい。

「それで、一緒にしばらくいてどうだった?」

「……。」

「なんとも思わなかった?」

「いや……そういうわけじゃ」

「じゃあどうしたんだよ。お前、様子さっきから変だぞ」

「ちょっと考え事があるんだよ」

 翔希は顔を赤くしながら答えた。

「そっか。ま、何か相談とかあれば俺たちで十分とは言えないかもしんないけど、しろよ?」

「うん。サンキュな」

 翔希の中では少し、引っかかる部分があった。どこか前から感じていた、晴海に対する違和感。確かにスポーツ系の女子だから、ちょっとくらい快活な部分があってもおかしくはないだろう。それにしても、夕食のときの食べる量と来たら翔希よりも多かった。

「……。」

 それに、先ほど突き飛ばされたときのあの威力。女子にはなかなかない力量だけに、翔希は唖然とした。けれど、あのはにかんだ笑顔などを思い出すと、やっぱり女の子らしさというのはしっかりと感じられる。あの微妙な感覚。あれは一体何なのか、翔希自身、よくわからなくなっている。

「翔希〜。上がって早く体洗えよ」

 潤が心配そうに声を掛けた。

「あぁ、うん」

 まだまだ考えたいことはいろいろある。翔希は潤の声を適当に聞き流して湯船にい続けた。本人に聞いてみれば早いのだが、その勇気もハッキリ言ってないに等しい。

「翔希?」

 ふと爽太郎が何も喋らなくなった翔希のほうを見ると、真っ赤な顔をしてブクブクと湯船に沈んでいく寸前であった。


「……ん」

 次に翔希が目を覚ますと、ホテルの照明が見えた。額には、冷たいタオルが置かれている。

「あ、目ぇ覚ました?」

「晴海さん……?」

「ビックリしたよ〜! お風呂で翔希が倒れた!って腰タオルだけで野田くんと枡森くんが飛び出してくるんだもん」

 クスクスと純平が笑う。翔希はその笑顔に少し胸をキュンとさせていた。

「誰が……連れ出してくれたの?」

 翔希は勇気を振り絞って聞いた。

「え?」

「俺を、誰が連れ出してくれた?」

「あぁ、お風呂場から? 野田くんと鈴木くん。二人とも細いのに、思ったよりパワーあるからビックリしちゃった」

「そっか……」

 連れ出したのが純平であったのなら、思い切って質問をぶつけるつもりだった。「キミ、ホントに晴海さん?」と。

「え? なぁに?」

「いや! なんでもない……」

 純平の声に思わずドキッとする翔希。心を見透かされているのかと思ったのだ。

「何か考え事してたの?」

「え?」

「聞いたよ。ずーっと湯船に浸かって難しい顔してたんでしょ?」

「……。」

「何か悩み事あるなら、一人で抱えずに私にでも……役立つかわかんないけど、相談してみてね!」

 純平の笑顔に、ようやく堅い表情をしていた翔希が笑った。

「良かった。笑ってくれて。それより、喉渇いたでしょ?」

「あ、ちょっと……」

「私、自販機で水買ってくる。待ってて」

「あ、そんなのいいよ!」

「いいから、行ってくる」

 純平は一緒に行こうとする翔希を寝かせ、部屋を出た。

「えーっと……」

 純平はキョロキョロと周囲を見渡す。実は買い物以外に目的があったのだ。それは「トイレ」である。曲がりなりにも女の子を演じているのに、トイレで変な音を出せない。つまり、正直な話大きいほうだ。お通じである。

「夕食食べ過ぎた……やべっ!」

 純平は大慌てでトイレに駆け込んだ。幸い、洋式が設置されていたので一安心。しかも温便座だ。

「は〜……」

 用を終えて純平はウキウキ気分でドアを開ける。手をきちんと洗い、トイレのドアを開けた。

「……。」

「……は?」

 純平は目の前に立っている人物を見て、全身が硬直した。


 目の前に、潤が立っていたのだ。




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