プロローグ 合格発表は悲劇の始まり
「じゃあ、お互いに健闘を祈る!」
女子中学生が敬礼をして男子中学生にそう言った。
「オス!」
男子中学生も敬礼を返す。そして、向かうは彼が受験した高校の門前。桜が咲き誇る中、少年の笑顔も明るいものだ。
彼には自信があった。必ず合格できる。中学2年生の10月からかなり頑張って受験勉強をしてきた。手応えだって十分あったから、きっと予想どおりの結果が自分を待っている。そう思って今日はウキウキ気分で歩いている。
そして学校へ到着した。掲示板の前には人だかりができている。少年も掲示板を覗き込み、5分ほど見て回った。
「あれ? 見落としたかな」
少年はもう一度見て回る。そうこうしているうちに、人だかりが減っていく。みんな合格発表後の手続きをするために散っていったのだ。しかし、彼だけはいつまでたっても掲示板の周りをウロウロするばかり。
しかし、何度見れども見れども、目的の「モノ」は見つからない。
「あのぉ……」
少年は意を決してそこの先生らしい男性に声をかけた。
「はい?」
「合格発表の掲示板って、ここだけですか?」
「そうですよ。ここ以外には設置していません」
「そ……そうですか」
少年はもう一度戻って掲示板を見てみる。
彼――高垣純平は、受験した星蘭男子高等学校の合格発表へ来ていた。純平の受験番号は、1051番。
しかし、何度見ても掲示板には
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1049
1050
1052
1053
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無惨にも、純平の受験番号のみが飛んでいた。
つまり――。
「浪人だ……」
急に目の前が真っ暗になるのを、純平は感じ取っていた。
そして、これが純平を変える試練の訪れでもあった。