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HP1の最弱勇者  作者: 黒宮祐助
6/6

一魔


「魔集されど魔は召されず」


この国で有名なことわざの1つ


意味は一魔が去っても魔物は消えないと言う意味

起源は国が出来た当初、首都が一魔を逃れ隙が出来た時に他の魔物に襲われた際、初代国王が残した言葉として今も遺されている


空は黒く染まり……不穏な空気が漂い……アンデッドが叫び……魔法が放たれ……静まり返る……そしてまたアンデッドが叫び……魔法が放たれる…………


空から雨粒が一滴……また一滴……しばらくすると魔物声と共に雨が降り注ぐ音に変わる


「もうすぐ皆に合えるかな」


涙がまた頬を伝って落ちていく


「どうしてだろうっ……嬉しっ……いのにっ……まだ…………生きたいっ…………」


上がっていた口角が少しづつ下がり涙がまた1つ落ちていく


「暇じゃ~暇じゃ~暇じゃ~♪」


一魔が去ってもやる事がある訳じゃない、逆に一魔が去った後は町から出られなくなる為、いつもり暇だ


「どうして一魔が去った後は出られないんだよ~」


間の抜けた声がギルドに響く


「魔集されど魔は召されずじゃからの」


ラトが説明してくれたっぽいが意味が分からない為アカメに目を向けるとテーブルに顔を伏せ、寝息を静かに立て、眠っていた。きっと疲れているのだろう


「どういう意味?」

「一魔が去っても魔物は居るから危ないのじゃ、特に一魔の際の雲は一定の時間魔物を狂暴にさせるから特に危のうて外には出れぬ」

「それじゃあ仕方ないな、俺が行っても死ぬだけか」


それからやる事も無く只時間だけが過ぎていく

最近フラフ様と会う回数が減ってきたな、良い事何だろうけど、フラフ様の顔を見るとなんだか安心してしまう自分がいる

フラフ様に甘えてばかりじゃ駄目だと咄嗟に思い頬を両手で強く叩き急に立ち上がる


「うわぁっ?!なんじゃいきなり?!」

「俺を鍛えてくれ」


ラトは呆れた顔で溜息をついている


「お主、HPが上がってないのは分かるがもしやステータスが見えぬのか」

「へ?」


予想を裏切る答えに間抜けな声を出してしまう


「お主はしっかり強くなっておる、証拠に日常的に死ぬ事は減ったはずじゃ」


確かに最近フラフ様とも会えてなく、ちょっとした痛みでは死ななくなった


「えっ、ステータスとかあるの?!」

「耳に響くから大声をだすでない、妾は特別にステータスが見えるだけじゃ」


まさかそんな後付け設定の様な物があるなんて、と言うかそう言うのはもう少し早く思いついて欲しかった


「昔と比べたらどんな感じなんだ?」

「そうじゃの~」


ラトは俺をじっくり見たあと、空中に指で文字を書き出した


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

HP   1

MP  24

防御力 26

攻撃力 20

運    8


スキル 魂無

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これが今のお主じゃ、前までは全て1桁じゃったがこの数日でかなり上がっておる、これも雑用のおかげじゃな」


無邪気な笑顔で伝えてくれるが、なんか納得いかない、もっとモンスター倒したり、修行したりするもんじゃないの?!


「それよりも魂無ってのはなんじゃ?見たことないぞ」


思い当たる節は1つしかない


「多分、フラフ様の加護だと思う、生き返れるんだ俺」

「それでお主は死んでも死にきれぬのか」


余り人には言わない方が良いのかも知れないが鬼だから大丈夫だろう


(そういう問題ではない!)


今フラフ様の声が聞こえた気がするが気のせいだろう


「余り加護の事は言うでないぞ」

「どうして?」

「加護を持つ者は王都に集められ、強制的に騎士団や王都専属の宮廷魔術師として雇われるのじゃ」


別にたいした理由では無い気がするが少し大げさに感心しておく


「あの場所は地獄だ!」


いきなり眠っていたはずのアカメがテーブルを強く叩き罵倒を始める


「あそこは人が住むような場所じゃない、地獄だ!」

「とりあえず落ち着け、どうしたんだいきなり」


水の入ったコップを私慰める


「失敬、つい抑えられなくなってしまった、忘れてくれ」


ラトと目を合わせ、深く追求するのは辞めようとアイコンタクトを取った


「それで王都はどんなところなのじゃ?!」


アイコンタクトは鬼には通じないのかな?


「そうだな、権力がある者だけが恵まれているだけの街と言った所だ」

「やはり人間はろくでもない奴等ばかりじゃのう、一部を除いて」


ラトの一言にアカメも俺も納得してしまうのが情けない

だがそれが人間と言うものなのだろう


何かを告げる鐘のが町中に響き渡る、それは避難の解除か、はたまた危険の合図なのか


「すっ!スライムの群れで町が覆われてる!速く結界を!」


手練の冒険者らしき人物が今にも死にそうな勢いでギルドへ駆け込んでくる


スライムと言えばRPGの序盤に出てくる雑魚モンスターで有名、某ラノベには打撃が聞かない強モンスターとして知られているらしいが、この世界のスライムもやはりそう簡単には行かないようだ


「分析を急げ!速くしないと手遅れになるぞ!」


今度はギルドの職員が大慌てで指示をだしている

それを眺めている俺を察した様にアカメがスライムについて教えてくれる、教えてアカえも~ん


「スライムと言うと頭が良く戦略的なモンスターで知られているが、一体の頭脳と戦力は初心者冒険者でもなんとかなるが、群れとなると話は別だ」


それに続いてラトが語り始める


「あれじゃの、雑魚も積もれば山となるって奴じゃ」

「塵じゃなくて?」

「ラトの言うようにスライムは液体の為融合する、それにより町を囲みスライムで覆いつくすんだ、その後スライムの雨が降り注ぎ、やがてスライムに火がつけられる、スライムは発火しやすい為5分足らずに町は火で埋め尽くされると言う訳だ」


俺の知ってるスライムはまんまるお目々の雑魚だが、実は頭が良かったらしい


「それでどうするんだ?」


返答を待っているとギルドの職員に冒険者なら外に出ろと言われ、強制的に働かされる、これが冒険者と言うものか

外に出てみるとスライムの姿はなく、冒険者はパーティーを組み警戒し、町の住人は日本で台風が訪れた時の様に避難の準備をしていた


「俺達はどうすればいいんだ?」

「拙者達は魔道士がパーティーに居らぬ故、魔導具の調達、住人の警護がメインとなる」

「と言う事はカムナは来るのか?」


そこに待っていたかのように、街中にいつものお姉さんの声でアナウンスが入った


「カムナさんの生存不明、魔道士の皆さんギルドに置いてある魔石の予備を配布致しますので、直ちにギルドへ急行してください!」


俺達3人はアナウンスが終わると同時その場から走り去った


「生存不明なのじゃぞ、なら墓場に行ってもどうにもならぬじゃろ」

「手掛かりくらいは見つかるかもしれない」

「2人とも拙者に掴まれ、その方が速い」


アカメに言われるがまま手を強く繋ぐと、ありえない速度で走り出した


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


まるで乗り物に乗っている時の様な速度で、ゴーグルが無いと目が殺られそうな勢いで


墓場まではアカメのおかげでものの数分で辿りついたが、その場の光景を目にした時、もう既に遅かったのだと心のどこかで感じていた

墓石は崩れ落ち、カムナの家があった場所にはクレーターが出来ていた、周りを見渡すと、モンスターの骸が無数に散らばっており、ここで戦闘が起きた事を物語っていた


「遅かった様だ、ハジメ殿……その……今回ばかりはどうしようも無かったのだ」

「諦めのは早かろう、この骸を良く見るのじゃ、これは恐らく狂鬼共の仕業じゃ、彼女の死体が見当たらないと言う事は巣に持ち帰ったのかもしれん」

「助けられるのか?!」


二人はなんとも言えない顔で見つめ合うととりあえず「やるだけやってみよう」と乗り気ではない様子で言った


「とりあえず妾の嗅覚で臭いを辿ってみるかの」


墓場から5分程歩いた所で臭いは狂鬼の臭いと同時に別の臭いが混ざり始めた


「これは血の臭いじゃ、それも最近の物、おそらくこの先にいるじゃろ」


そして数十分程歩い先に狂鬼の巣だと思われる、古びた教会に辿りついた

教会には人の気配どころか周りには生き物の痕跡さえ無いにも関わらず、血の臭いが人間の俺でさえ分かるほど臭っていた


「とりあえず窓から見てみよう、拙者は上のステンドグラスの方から、ハジメ殿達は他を」


アカメの指揮で全員別の位置から偵察を始めようとした時、アカメの居た筈のステンドグラスが粉々に割れる音が、教会中に響いた


「キィェェェェェェ、キィェッ!キィェッ!」


狂人の様に中に居た、狂鬼達がアカメの姿を捉えると同時に叫び出した


そう、完全に忘れていたのだ、アカメが隠密行動を出来ない事を


「突撃!そしてカムナの救出!」


俺の掛け声と同時にラトが狂鬼の群れに飛び込んで行く

アカメが誘導し、ラトが少ない力を振り絞り、狂鬼を一体、また一体と倒して行く

ラトは余り戦闘で役に立たないと自分で言っていたが本当に役に立っていなかったのは俺自身だった


「ハジメ殿、今の内にカムナ殿を探せ!」


アカメの声で本来の目的を思い出した、だが狂鬼の死体だらけでカムナはどこにも見当たらない

もしかしたら、もう遅かったのかもしれない


「ハジメ!ステンドグラスの真下に隠し通路がある、そこに行くのじゃ!」


ラトの言うとおり、木の板が僅かに一部分だけ盛り上がっており、そこを開けると隠し通路があるようだ

でもいつ気付いたんだ?ラトは戦闘中で教会をゆっくり見渡す時間は無かった筈、もしかしたら鬼は観察力も優れているのかもしれない

木の板を持ち上げて見ると、埃などは余りたたず、メキメキと言った音もしない、木の板はどうやら新しく、最後に開けられてから余り時間が立っていない様だった

中は一本道で迷う事も無く進んで行く、明かりは10m間隔で松明がかけてあった

ゆっくり進んでいくと通路の奥には前までは盗賊が使っていたと思われる痕跡がある広間に縄で拘束されたカムナと半透明の液体で出来た人型の生き物が居た


「オマエ、アイツラノナカマカ?」


謎の人型をした生物は片言で質問をしてくる

その光景はエイリアンと初めて遭遇した時の様だ


「その子を返せ!」


大きな声を出してもカムナはピクリともせず、謎の生物は戦闘態勢に入りうとしている


「ワタサナイ」


謎の生物の言葉に耳を傾けた途端、心臓を抉られた


「っ!!!」


声にならない叫び声がほんの一瞬広間に響いた


気付くといつも通りフラフ様が目の前に座っていた

ここはいつ来ても背景が変わらない、なにもない宇宙空間に椅子が2つ


「感想は?」

「どうせ生き返るなら痛み必要ないじゃないんですか?」

「死の恐怖は忘れるな」


フラフ様は真面目な表情で俺に言葉をかける


「それよりあれなんなんですか?」

「水神キルラミに使えていた魔族の生き残りだ」

「と言いますと?」


フラフ様は俺の質問には答えず人差し指で俺の腰にあるポーチを指差した

神メモを読めということらしい


水神キルラミ

文字通り水を司る神の事。2400年前、神々の黄昏で狂神クロンに負け肉体は既に滅びており、魂だけの存在となった

現在は水の都クラリエに祀られており、クラリエ都内に水神の魂が彷徨い続けている


「それであいつはなんなんですか?」

「最後までしっかり読め」


残魔

かつては神や人、何かに使えていた魔物を指す

種類は豊富で人型から異様な形をしたモンスターもおり、ある伝説には魔王も残魔だと言う逸話が残っている


「結局、詳細が分からいないんですが?」


そう言うとフラフは右手を神メモにかざした

すると神メモは急に光りだした


「更新した、読んでみろ」


いつも俺の知らない間にこの様にして新しく書かれいたのか


「話してはくれないんですね」

「今私は眠たいんだ」


神様も眠るんだと思いながら続きを読みすすめる


再び目を覚ますと広間には何も無かった、言葉の通りこの短時間で広間にあった道具なども全て綺麗に消えていた

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