化物
ギルドは主に酒場として普段は機能していて冒険者のクエストボードとカウンター以外は只の酒場だ
今日はいつもより昼間から酒を飲む人が多いい
普段は無職もしくは仕事のない冒険者が飲んでる程度だが今日は町中が活気に溢れている
「今年も来たかあの時期が」
この状況とアカメの台詞から察するに祭りか何かなんだろうが流石にこの状況は凄いな
まだ午前中にも関わらず酒場のお姉さんやクエストカウンターの人にセクハラする親父共が酔っ払っているこの状況
日本の飲み屋だったら退場もしくは警察沙汰になっていたかも知れない
「うえ~い兄ちゃんも飲みなぁ~」
俺は飲めないと断るがこの世界では13から酒を飲んでいいらしく、無理やり飲ませようとしてくる
しかしそれをアカメが相手を殴って黙らせている
酔っ払いとは別に退場させられそうなので先を急ぐ
因みにボデン偵察クエストだが勿論失敗した
偵察クエストはやはり無理があった、予想通りアカメが直ぐに見つかった、本当に敵引き付けるスキルとか無いよな?
とりあえずクエストボードを見に来たは良いものの多くはまだ俺達には出来そうにない物でクリア出来そうなものは報酬が少ない物だらけだ
どうしたものかと悩んでいるとカウンターのお姉さんがあるクエストを勧めてくる
依頼内容
ミラノの森中心部の調査
報酬
15000J
美味しいクエストなんだろうが明らかに怪しすぎる
ミラノの森と言うのはこの街の付近にある綺麗な○の形をした森の事で神メモによると森の内部は外部、中部、中心部の3段階に区切られているようで、中心に近づけば近づく程危険度がある森の事だ
この様な形の森はこの世界には多いらしく、ダンジョンの1つとして扱われているらしい、魔王の城の周りも沼や森他にも山などにも囲まれており、籠城するにはうってつけの地形らしい
つまりこれはダンジョンの中心部(ボス部屋)に言ってボスの様子見てきてと言うことなのだ
勿論俺達には出来ないので断ろうとしたが、アカメが断る前に「事情だけでも聞いてみようと」言うので一応聞いてみる
「実はこの森の中心部に居たモンスターが何物かによって殺され、ボスが新しくなったようなのです、それだけなら問題は無いのですが新しく来たボスが今まで居たモンスター達を追い払っているようで、ボスモンスターに関しての情報をと思いまして」
更に詳しく聞いてみるとどうやら現在この森は元居たモンスターの8割が逃げ出しており、その逃げ出したモンスターが街付近で暴れているとの事で元凶を叩きたいらしい、その為にも少しでも情報が欲しいと言う事らしい
「現在ある情報なのですが、中心部に居るモンスターは人型をしていた事しか判明していません」
つまり人型で大きさも正確な強さも分からない以上このクエストは危険だ、それに2割のモンスターは残っていてどれも協力なモンスターだと思われる
とかなんとか俺が脳内で色々考えていた間に物事は進んでいたようで何故か既にアカメがクエストを発注していた
「なにしてるのアカメさん」
アカメは頭を傾かせてキョトンとした顔をしている頭の上に?が見える
「なにが不満なのだ?」
不満?強いて言えばこの現状が不満かな
「アカメ分かってるのか?危険な任務なんだ残っているモンスターは恐らく危険度の高いモンスターだろう」
アカメを説得しようとしていると、カウンターのお姉さんが俺とアカメの会話に割って入ってくる
「残っているモンスターの事なら安心してください恐らく彼らはウィンと言うモンスターで習性上自分より弱い生き物を襲わない種族ですから」
あれから何時間が経った頃だろうか、俺は目が覚めると森の入り口に経っていた
「全く大変だった、お主がここに来るまでに何回死んだ事か」
アカメの言葉にふと記憶が蘇る
「貴様は何回死ぬのだ?」
女神フラフが呆れた顔で言っている
「ごめんなさい女神様」
「何馬鹿な事を言っている、早く行くぞ」
森に入ると降っていないはずの雨が降った後のようにジメジメしていて所々が濡れている
アカメも疑問に思ったのかクナイをずっと両手に握っていた
そして森の中部に入り込んだ辺りだろうか、周りから殺気の様な物が感じ取れる少しづつ中心部に近づくにつれて空は暗くなり、晴れているはずの空は雨が降り出していた
「ひゃうっっ!」
「うぁぁぁぁぁぁぁ!」
アカメの声に俺が反射的に叫んでしまう
「何故お主が叫ぶのだ」
目を見ると涙目になっていた
「ごめん、どうした?」
「足元に虫が居ただけだから気にするな」
全く心臓に悪い虫ごときでそこまで反応しないで欲しい
そう思いアカメの足元を見ると生き物の目が俺達を見ていた
「ゔわぁぁぁぁぁぁぁっ」
「キャァァァァァっ」
それからは二人で無心で走っていた、別になんどでも死ねるからと言っても痛みはあるのだ
死ぬ瞬間どうなるか知ってるか?壮絶な痛みの後急に意識が遠ざかり、謎の快楽に満ちる
これだけ聞いたら薬物乱用してるのと何ら変わりない
あれから数分間は走り回っていただろう、途中でアカメとはぐれてしまった、正しくは置いて行かれたんだけど、
デュラハンの時の台詞が蘇る
「仲間を置いて行ける訳無いだろう、このクナイは絶対に渡さん!」
「全くあの時の台詞はなんだったんだ」
本来の道から大きく外れ、現在どこに居るのかも分からず、森の中心部には化物が居ると来た
俺はともかくもしアカメが敵に遭遇したら……したら……
「無敵じゃん」
あいつ逃げ足だけは速いからきっと見つかっても瞬殺されない限りアカメが死ぬ事はないだろう
その時数キロ前から光の柱の様な物が現れた
「なんだあれは」
その時後ろから何物かによって暗殺された
気付くとそこは見慣れた宇宙空間
「なにが起きたんですかフラフ様」
女神フラフは説明しようか悩んだ末にあの出来事について説明した
「えっとつまりは、フラフ様のミスで魔法を放ってしまったと言う事ですか?」
女神は気まずそうな顔で頷く
「悪い、ちょっと手が滑って魔王の城に撃つはずの魔法の位置がずれてだな」
「フラフ様が魔王倒した方が速くないですか?」
「神は人を直接助けたりなどしない、それは悪魔どもの仕事だろ」
なんだがフラフ様が分からなくなってきた
「さっきの魔法は魔王挑発して遊んでいたただけだから気にするな、そんな事よりアカメも巻き込まれて怪我をしているようだ」
何事も無かったかの様に話を放って進めるが要するに
「フラフ様お言葉ですが、魔王挑発して遊んでだんですか?!」
「その…なんだ…悪かった、この薬あげるから許してくれ」
母親に怒られた子供の様な表情でカプセル状の薬を4つ渡してくる
「二度としないでくださいね、それで何の薬なんですか」
「それは神薬の1つで怪我をあっという間に治す薬だお前には使えないかも知れんがアカメには役に経つだろう」
そういう事なら貰っておこうあの時貰った卵はまだ謎だが嫌な予感しかしない
フラフ様に一応お礼を言って元の世界に戻る
あの女神様尊敬していいのだろうか、そんな事を考えてしまう
それからは、アカメを見つけて撤退と言う流れが最適だったのだが、フラフ様の魔法で出来たクレーターまで行くと、近くにアカメが倒れており、酷い重症だった、奇跡的に直撃はしておらず、魔法の余波の様な物を受けたのだろう
頭から血が出ており、マスクは血の色に染まりかけていた
きっとフラフ様はこの状況を分かっていた上で神薬を渡したのだろう
神薬を飲ませると血は止まり傷口は直ぐに閉じたが気絶したままだ
アカメを運んで撤退しようとも考えたが引きずるのが限界だった為森の外まで運ぶの難しかった
幸いにもモンスターの危険は少ない為アカメが目覚めるのを待つことにした
暇つぶしに神メモでウィンと言うモンスターの記載を調べて見た
名称ウィン
見た目は黒いチーターの様な姿をしており、夜になると非常に索敵しづらくなる
生息地は主に森や樹海など、地上に存在するダンジョン
自分より弱い物を襲わないと言う習性があるが縄張りに入ったならば強さなど関係なく襲う
ウィンは魔力の欠片を大量に浴びる事で凶暴になり無闇に人を襲うのでウィンの居る森での魔法は極力使わない事
気になったので魔力の欠片についても調べてみる
魔力の欠片とは魔法を放つ際に術者と放った魔法の周囲に散らばる光の様なもの
もしかして周辺にウィン居ないよね?
ふと思い周囲を見回してみる、神メモによると黒いチーターの様な姿をしているので夜には見つけづらいと書かれている為簡単には見つからなかった
恐らくだが魔法の威力と範囲が広ければそれだけ広範囲に魔力の欠片も散らばる筈、ならば直ぐに移動した方がいいかも知れない
そう考えた者の森内部(中心部手前)には安全な場所も無く、と言って直ぐに出られるわけではない
どうするか考えた末に俺はアカメを引きずって中心部に行く事にした
中心部に向かう際いたる所から鳴き声やモンスター同士が争っている声などがしたが気にも止めずに中心部に向かう
森の中心部には巨大な千年樹と呼ばれる木が立っておりその周囲には木が無く森の中央には千年樹を柱と天井に見立てたドーム状になっていた
ここに人型のモンスターが居ると言っていたがどこを見渡してもそんな者は居らず代わりに千年樹の根本に空洞を見つけた
そこまでアカメを連れて行くとその空洞の中にはには2本の角が生えた中学生位の女の子が眠っていた
恐らくこの子がこの森に来たボスモンスターなのだろう、だが眠っている今ならこの子を討伐出来るそう考えた俺はアカメを置いて剣を構える、人の型をしているこの子切る事に躊躇う
「仕方ない仕方ないんだこの子が悪いんだ」
そう何度も自分に言い聞かせて遂に剣を振りかざす
剣は人型のモンスターでは無く地面に突き刺さっていた
突き刺さった剣に月の光が差し剣が輝いて見える
剣に自分の汗だくで疲弊しきった顔が写り目が覚める
今の自分の判断には頼ってはいけない、そう考えた俺はモンスターに突き刺す筈の剣を自分の心臓に刺した
「どうした、諦めたのか生きる事を」
女神が真剣な眼差しで聞いてくる
「俺がどうしたら良いのか聞きに来ました」
女神は小さな溜息をついて質問に答える
「それは貴様が考える事だ自分でどうにかしろ」
「神は直接人を助けたりしない」女神フラフが言った言葉を思い出した
「ならあの子は本当にモンスターなんですか?!教えてください!」
怒鳴るように質問するが女神は悲しそうな目で答える
「あの子はモンスターだ…人間がそう決めたのなら…それは人にとってモンスターなんだろう…」
意味深な言葉を言った直後に女神フラフによって強制的に蘇生させられる
目が覚めると隣には血まみれの剣が置いてあり他に代わった事はない
【人がそう思ったならモンスター】
この子は町の人から見たらモンスター、でも俺から見たら只の子供にしか見えない、アカメもこの子をモンスターと言うのだろうか、俺はどうしたら良いのか分からなくなりその場で静止する
時間だけが過ぎていく、すっかり暗くなり町の方では花火の様な音まで聞こえてくる
そういえば今日は街が賑やかだったな、祭りでもやってるのかな
そんな事を考えていたら時間はあっという間に過ぎアカメが目を覚ます
「ここどこだ」
寝ぼけた様子で聞いてくる
「森の中心部だ身体は大丈夫か?」
どうやら痛いところはどこにも無いらしく、アカメは無傷の様だ、流石神薬と言った所だろう
「中心部と言う事はボスモンスターはもう倒したのか?!」
急に立ち上がり俺にの肩に両手を置いて迫ってくる
「そんな事出来るならとっくに魔王の城まで行っている」
とりあえずこの現状と人型のモンスターについて説明する
「この子がモンスターに見えるか」
「お前は知らないのか」
深刻な顔でこの世界の鬼について説明を始めた
この世界の鬼は悪魔として認定されていて、元は魔王が世界を支配しようとした際に人間を裏切り魔王の手先として働いた事から、鬼とは人の知能を持ち強力な力を持った悪魔として知られているそうだ
「子供とはいえ侮れない」
アカメは短刀を手にとり鬼に向かって構える、顔を見るとアカメは目を瞑っており、とてもこれからモンスターを討伐する冒険者の顔とは思えない
「鬼だから殺すのか…モンスターだから殺すのか…違うだろ!怖いから殺すんだ!」
アカメは短刀を構えたまま震えていた、もしもこの子が起きたら自分達は死ぬかも知れないならこの子は殺した方が良いと考えていたからだ
俺のの叫び声に反応したのか鬼が目を覚ます、欠伸をして寝ぼけた様子で周りを確認する
「貴女達も私を殺そうとするの?」
悲しそうな表情で聞いてくる、アカメは無言のまま目を瞑り短刀を構えていた、まだ手は震えている
会話が出来るそれだけで俺にとって戦う事が出来な
い、動物を殺すのとは違う、意思疎通が出来ないだけで人は簡単に生き物を殺せる、でもこの子は会話が出来る、その時の俺にはそれだけで充分だった
アカメを後ろに下がる様に指示をして前に出る
「君はどうしてこんな所に居るんだい?」
そう聞くとこの子は思い詰めた声で語り出す
「鬼は人と仲良くしたらいけないのじゃ、殺されるから駄目だって、お主らも妾を殺そうとするのかの?」
その言葉にアカメは「殺さない」の一言が言ってあげられなかった
まだ俺達は困惑していてこの子が敵なのか分からなかった
只アカメは短刀を握り俺はひたすら考える敵か?味方か?
答えは簡単な筈だ、なのにその答えが2人にはまだ出てこなかった
その直後魔力の欠片を浴びたウィン達に囲まれる唸り声を発しながら俺とアカメと鬼の子に敵意を剥き出してくる
俺達が警戒態勢を取った直後鬼の子がウィン達に向かって走り出した、その後の事は余り覚えていないウィン達が鬼の子に拳1つで撲殺された、それが事実だった
この行動でハッキリしたこの子は敵じゃない
そう考えた俺はまだ怯えているアカメに短刀を納刀させた
「俺達は敵じゃない君と友達になりたい」
鬼の子は目を輝かせて居た
「本当か?!友達になってくれるのか?!」
アカメと俺にもう一度問いかける、アカメも最初は戸惑っていたが俺が鬼の子と意思疎通を始めると段々馬鹿らしくなったらしくこの子に心を少しだけ開いてくれた
更に話を聞いてみると、優しい心を持ち人と仲良くしたいと願うこの子は村から追い出されたらしくこの森にやって来たらしい
流石にアカメも同情したらしく途中から泣きながら話を聞いていた
「これからどうする?俺達の元にくるか?」
そう聞くと考える素振りも見せずに即答してくる
「本当に?!やったぁぁぁ!」
嬉しそうにはしゃぐ鬼の子を見ているとなんら変わりない人間に見えてくる
この子の笑顔を見て2人は心に誓った
【種族なんて関係ない】
「そういえばまだ名前聞いてなかったな」
「妾の名前はラレムビルウィット略してラト」
ラトはどうやら種族に関係なく人と仲良くする事が夢だったらしく町に行ける事がとても嬉しいらしい
「流石に町に鬼の子を入れるのは無理じゃないか?」
アカメに言われて気付くが角が致命的に駄目だ、人にない角は駄目だとりあえずフードを被せて誤魔化しては見る物のずっとこのままと言う訳にはいかない、どうしようか考えていたらいきなりラトが自分の角に手を伸ばした
するとピッキーンと金属音と同時に角が折れた、いやラトが自分で折ったのだ
「角が駄目なら折れば良いのじゃ」
笑顔でそういうが大丈夫なのかこれ?目でアカメに訴えてみるがアカメも戸惑っていてどういう状況なのか全く分からない
「角折っても平気なの?!」
ラトは「へいきへいき~」と陽気に言っているが物凄く心配だ今度フラフ様に聞いてみよう
折れた角は片方が俺もう片方はアカメが預かる事になった
それから町に戻ってみると町中どんちゃん騒ぎでどこを見ても酔っ払いと踊り子が居て凄い状況になっていた
「アカメ、今日はなにかあるのか?」
「今日はフラフ様に感謝する日なんだ、本番は明日だから覚悟しておいた方が良いぞ」
人の町を知らないラトは今起きている全てを物欲し気に見ていた、ラトにとって良い機会で人の町を知る為にもと思い、俺とアカメはギルドには行かずそのまま祭りを楽しむ事にした
沢山の屋台が並んでおり、元居た世界と酷似している部分が多く見られた、リンギアメやチンピラすくい、どれも日本で見られる屋台と同じで俺も楽しむ事が出来る内容だった
「ラト!こっち見てみろ!チンピラだって!チンピラすくおうぜ」
「チンピラが沢山いるぞ!よし!すくうぞ!」
そう言って手で鷲掴みにしようとして怒られたり
氷ゴリと言うかき氷に似た食べ物を食べたり
最後はすくったチンピラが脱走すると言うハプニングで終わったがどれも新鮮でこの町を知る良い機会だった
因みにチンピラって生き物は金魚じゃなく目の周りと甲羅が黒く、亀に似ていて足の速い生き物、最高速度は320km/h新幹線と同じくらい
それからは宿に戻りアカメと別れラトはアカメと一緒に寝泊まりする事になった
これは後々聞いた話だがあの後ラトはアカメに「今日は一生忘れられない日になったの!」と子供の様に満面の笑みで言っていたらしい




