ゾンビ勇者
今朝弌市で主人公の一宮一君16歳が高校の入学式に行く際校門のおよそ2cmの段差で転び病院に運ばれ先程亡くなった事が確認されました
この事に御両親は「HP1だったから仕方ない、ここまで生きてこれたことが奇跡としか言えません」と述べています
気付くと俺は宇宙空間の様な場所にポツンと1つおかれた椅子の上に座っている、見えないが地面があるらしい
俺は今朝転んで死んだ、今居る何もないこの場所が死後の世界なのだろう
まぁHP1だから仕方ないな、今まで生きてこれたことが奇跡なんだから仕方ない、生まれ変われるのなら今度はHPカンストがいいな
コツッコツッとヒールの音が聞こえてくる
誰かが近づいてくるがまだはっきりとは見えないがそれが人間ではない事は確かだ
「勇者に選ばれから頼んだ」
髪は純白、前髪は目にかからないくらいで横髪は胸のあたりまで伸び、後ろ髪は腰の下まであった
身長は170くらいだろう顔は黒いベールの様な物を被っていてはっきり見えない、服装は黒いドレスの様な物を着ていて純白の髪がより強調されている
彼女が女神なのだろう、俺の本能がそう教えてくれる
「えっ?」
「まぁそうなるだろうな」
そういいながらいきなり現れた椅子に座り説明を始める
「とりあえず異世界に送ってやるからそこで魔王を倒してこい、そしたらお前の願いを一つ叶えてやる」
はい?説明されても訳が分からない
某異世界転生作品で見かけた展開だが実際に自分がこの状況に陥ってみるとパニックになって何をどうすればいいのか分からなくなる
今の俺には彼女が白髪なこと以外確認出来ていない状況なのだ
「いってらっしゃい」
最後にあの場所で聞いたのは励ましの言葉では無く
見送りの言葉だった
目の前には大草原が広がっている
風が気持ちよく何もない、人気も無く道も無いのでどうすればいいのか分からない、そして何故か腰に剣とポーチが付いている
「まじでやるの?俺HP1なんだけど」
とりあえず状況を確認してみるがやはりあの女神様に言われた通りらしい
ポーチの中にメモ帳が入っていてそれには周辺の地図と注意事項が書かれていた
注意事項
その1 LvないからHP1のままだから気をつけろ
その2 死んでも大丈夫だから安心しろ
その3 ポーチの金は自由に使え
500と彫られたコインが3枚入っているメモ帳には1J=1円と書いてある
他にも色々書いてあるが後々読むとしよう、ここで止まっていても仕方ない、とりあえず近くの町に行ってみようかな
あっ
足先に段差の様な物に躓いた事に気付いた時には既に遅かった
頭の中に白い靄がかかり意識が遠ざかっていく
まだ異世界に来て5分立ってないのにもう死んだらしい、HP1を俺自身が舐めていた
「おかえり」
「ただ…いまかえりました…」
やってしまった、きっと女神様も呆れているのだろう、流石にそんなに早く死ぬとは思っていなかった筈
「なかなかに面白いなお前、これは予想外だよ」
女神は勇者を馬鹿にする訳でも呆れて居る訳でもなく、只今の状況を楽しみ笑っている
「間抜けな顔をしている君に説明してあげよう」
「君は女神の加護を受けている」
効果は何度死んでも生き返れる事だ、死んだ場所もしくはセーブポイントで生き返る事が出来る
「それはつまり」
HPなどと言う概念など存在しないのと同じだ
毎回この場所に戻ってくる事にはなるが死んだ時間とのタイムラグはおよそこちらで1分過ごすと向こうで10秒と言った所だろう
「そういう訳で改めて君には魔王を倒してもらう」
これは俺にとっての救いだった、本当に神様が俺に手を差し伸べてくれた
「俺やります!絶対に魔王を倒してみせます女神様!」
「では改めて自己紹介をさせて貰おう、女神様は性に合わない」
クールな声で言った後黒いベールを脱ぎ捨てる
「私は生命を司る女神ラプイ・フラフティ」
「皆フラフと呼ぶのでお前もそう呼べ」
彼女の顔立ちは整っていた。鼻は小さめだが目はくっきりとした二重で、瞳は大きくやや黒目がち。まつげも長く、やや上向きにカールしている。
「フラフ様質問良いですか?」
様は辞めろと言い頷く
「俺本当の意味で死ねないんですか?」
「死とはなにか、生きる価値を無くしたらそれは生きていても死と等しいとも言える、私は生命を司っては居るが死は操れぬ、故にお前の言う【死】の意味が分からない」
「じゃあ俺は老けないんでしょうか?」
「そう言う事なら話は別だ、お前は老ける、だがある一定までだ、それ以上老けたいと願うなら、またその時私に言え」
つまり俺は死ねない、ならなんどでも挑戦できる
それならもしかしたら可能性はあるかも知れない
そう思うと自然と興奮しやる気が出てくる
「俺成し遂げて見せます!」
フラフは彼の眼差しを受け改めて彼の意気込み覚える
そしてまた見送りの言葉を送る
「いってらっしゃい」
あの時励ましの言葉じゃ無かったのは俺が戻ってくる事を知っていたからかも知れない
「いってきます!」
再び大草原に戻ってくる、風が心地いい
今日から新しい人生が始まる
今度こそ最初の1歩
「あっ!」
「おかえり」
「ただいまかえりました」