↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第五章:モンスターだらけの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/91

三十二:エピローグ


 その後も俺は酒を浴びるように飲み、適度に会話に参加しながら、時折チラリとみんなの様子を確認する。


(どれ、アイリとヨーンは……)


 二人は広場の中心から少し離れたところにある倒木の上に、チョコンと座っていた。


■


「ジンさん、本当にお酒が好きなんですねぇ……」


「人間族の『おっさん』はみんなお酒が好きだからなー……。あたしは苦手だけど、アイリは飲まないの?」


「飲んだことは無いですね……。お酒は一万二十歳からしか飲めませんから」


「さすがエルフ、年齢制限がとんでもないね……」


 二人は肉と野菜のサラダを片手に、何やら楽しそうに話し込んでいる。

 特に問題は無さそうだ。


(スラリンとリューは……っと)


 一方の二人は広場の中央で、大量の肉料理囲まれていた。


「お、おいしーっ!」


「こ、これ……おかわり……っ!」


「ははっ! 嬢ちゃんら、すげぇ食いっぷりだな!」


「えっへん! リンのお腹は無限大なんだよっ!」


「まだまだ……足りない……っ!」


「ほほぅ、よく言ったな! 食えねぇって言うまで、作ったらぁ!」


「いやったーっ!」


「……おじさん……いい人!」


 スラリンとリューは楽しそうに肉を頬張っていた。


(……頃合いを見て止めておかないとな)


 あの二人のことだ。本当に全ての食料を食い荒らしかねない。

 そうして全員の様子を確認した俺は、再び酒を一杯あおる。


(ふぅー……こういうのはいいな)


 スラリンがいて、リューがいて、アイリがいて、ヨーンがいて――そして俺の体もまだまだ動く。


(こんな幸せな時間が永遠に続けばいいのになぁ……)


 とは言うものの、時間の流れを止めることはできない。

 老いを少しでも遅らせるように、大怪我をしないように、日ごろからもっと鍛錬を積まねばならない。


(だが……最近少し体が変だ)


 これまでは徐々に衰えていくのがわかったが……ここひと月ほどは、むしろその逆。


(徐々にだが……体が強く、丈夫になっている……ような気がする)


 ……気のせいか。


 俺の『旬』はもう遥か昔に過ぎた。

 後は老化のスピードをどれだけゆっくりと――鈍化させるかである。

 衰えこそすれ、肉体が活発になることはあり得ない。


 そうして酒を一杯あおったその瞬間。


 俺の目と鼻の先に、突如黒い渦が出現した。


「ぬ、ぬぉ!?」


 それは凄まじい勢いで周囲の物質を吸い込み始めた。


 突如として、そんなものが目と鼻の先に来てはひとたまりもない。


 俺は一瞬にして、謎の渦に吸い込まれてしまった。


「じ、ジンっ!?」


「……ジン……ダメっ!」


「ジンさんっ!」


「お、おっさん!?」


 スラリンたちがこちらに走り寄って来るのが見えた。


「来るな! お前たちっ!」


 何とかスラリンたちに指示を出すが、


「わ、わわわ……っ!?」


「何……これ……っ!?」


「き、きゃぁーっ!?」


「何だこれーっ!?」


 一歩遅かったのか、全員が黒い渦に吸い込まれてしまった。


(ぐっ、何だ……これはっ!?)


 渦の中は上下の感覚が無い――奇妙な浮遊感があった。

 どこを見てもただただ黒。一筋の光さえも無く、スラリンたちがどこにいるのかもわからなかった。

 そのまま少しして、気が付くと俺たちは――密林の中にいた。


「こ、ここは……?」


 よくよく周囲を見渡せば、この場所には見覚えがあった。


「もしかして……ロディス樹林か?」 


 いったい何がどうなったかはわからないが、俺たちは無事に元の世界へ戻って来れたようだ。


「……ありゃ?」


「元の……世界……?」


「無事に帰って来れた……ということでしょうか?」


「……」


 全員がキョロキョロと不思議そうに周囲を見回している中、ヨーンだけが暗い顔のまま何もない空間をぼんやりと眺めていた。


(世界を維持できてない……もうあんまり時間がないかもしれないね……)


「どうしたんだ、ヨーン?」


 もしかして大事なものでも忘れてきてしまったのだろうか?

 すると彼女は首を横に振った。


「ううん、何でもないよ」


「そうか、それならいいんだが……何かあったら言うんだぞ?」


「……うん。ありがとね、おっさん」


 どこかスッキリしない表情で、ヨーンは笑って見せた。


(……何か様子がおかしいな。今晩にでも詳しく話しをしてみた方がいいかな……?)


 そんなことを考えていると――突然、スラリンとリューが地面に崩れ落ちた。


「ど、どうしよう……ジン……っ」


「もう……駄目……っ」


「ど、どうしたんだ!?」


 二人が同時に塞ぎ込むなんて尋常のことではない。


 もしかしてあの黒い渦の中で何かあったのではないだろうか。


 慌てて俺が二人の元を駆け寄ると――かつてないほど大きな腹の音が鳴った。


「「お肉が……無くなった……っ」」


「………………そうか」


 二人にとっては、たった今起きた謎の現象よりも肉の方が遥かに大事らしい。


(そういえば宴のときも、えらくはしゃいでいたっけか……)


「うぅ……こんなのあんまりだよぉ……っ」


「およそ人の所業とは……思えない……っ」


 かつてないほど落ち込む二人に、俺は仕方なくあの約束を持ち出した。


「あー……ほら、焼き肉パーティ……するんじゃなかったのか?」


 二人が大人しくお留守番をする代わりに、帰ったら焼き肉パーティを開く。


 これはグラノスとの決戦前に約束したことだ。


 その瞬間、二人の目に光が宿った。


「「っ!」」


 アホ毛がかつてないほどに立ち上がり、翼もバサバサと慌ただしく羽ばたいていた。


「そ、そうだったっ!」


「や、焼き肉……パーティ……っ!」


「あぁ、腹いっぱい食べるんだろ?」


「「うんっ!」」


 さっきまでの――この世の終わりみたいな顔はどこへやら。

 スラリンとリューは、いつも通り元気いっぱいとなった。


 とにもかくにもこれでクエストはクリアだ。


(焼肉パーティは……必要経費として考えるか……)


 二人は既に宴でそこそこの肉を食べている。


(金貨一万枚……いや、二万枚分の肉もあれば十分だろう)


 そんな俺の予想とは裏腹に、スラリンとリューはかつてないほど大量の肉を食い漁り、結局今回のクエスト報酬分――金貨五万枚分の食費となってしまったのだった。

第六章はちょうど三日後――1月11日(金)更新予定!

書き下ろし大量の紙の書籍版もよろしくお願いいたします!

今年は第二巻にコミカライズにと『おっさんハンター』シリーズがいろいろと動きますし、WEB版の更新も活発になると思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。