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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第五章:モンスターだらけの世界

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二十六:ジンの大剣


「ふぅー……っ」


 動かなくなったグラノスを前に、俺が大きく息をついていると、


「ジンさん!」


「おっさん!」


 アイリとヨーンが駆け寄ってきた。


「二人とも無事で何よりだ」


 体中に小さな傷はあるものの、そのどれもがかすり傷――命に関わるものではない。

 村に戻ってポーションを飲めば、たちまちのうちに治るだろう。


「本当に……本当によかった……っ」


 アイリは目尻に涙を浮かべ、俺の胸に飛び込んできた。


「おっとっと……。あー……すまん、心配を掛けてしまったな……」


 彼女の頭を優しく撫でながら、心労を掛けてしまったことを素直に詫びた。


「いえ……ジンさんが無事ならば、もうそれだけで私は大丈夫です……っ」


 消え入りそうな声でそう言ったアイリの体は小刻みに震えていた。

 本当に心の底から心配して、不安でいっぱいだったのだろう。


「ありがとう。俺もアイリが無事でいてくれて、本当に嬉しいよ」


 俺は胸の中で震える彼女を優しく抱き締め、安心させてあげられるよう優しく声を掛けた。


「……っ。は、はい……っ!」


 彼女は何故か耳まで真っ赤にして、控え目に俺の背に手を回した。

 一方その頃、ヨーンは不思議そうに俺の体をツンツンと指で(つつ)いていた。


「……さっきから何をしているんだ、ヨーン?」


 そうあちこちを突かれては、何というかくすぐったい。


「いやさ……自爆した側が無事って、何か理不尽だなぁって思って……」


「あぁ、今回はこれまでの積み重ねが活きた戦いだったな」


 ハンターは常に死と隣合わせの仕事であり、実際俺もこれまで何度も瀕死の重傷を負っている。そして死の淵から復活するたび、俺の体は少しずつ丈夫になっていったのだ。


「……いくら積み重ねても普通人間は、ここまで丈夫にはならないと思うけど。……まぁ、勝ったなら何でもいいか」


 そう言ってヨーンは、大きく伸びをした。

 彼女もいろいろと気を張って疲れたのだろう。


 いつも気怠(けだる)そうだが、今はその三割増しでぐったりとしている。


 二人でそんな平和な会話をしていると、アイリがポツリと呟いた。


「それにしても……静かになりましたね」


「……だな」


 ついさっきまでの喧騒が嘘のように、辺りは静まり返っていた。


 俺たちを襲って来た大量のモンスターは、そのほとんどが爆発で消し飛んだ。

 危機察知能力の高い数匹は森に逃げたようだが、まぁその程度ならば大きな問題はないだろう。


「さてと……そろそろ帰るか」


「はい!」


「ふへぇ……やっと帰れるー……」


 そうして一歩、歩みを進めたところで違和感を覚えた。


「おっと……。すまん、ちょっと待っていてくれ」


 大きな大きな忘れ物をしていることに気付いた。

 俺は二人から離れて、動かなくなったグラノスの元へ足を向ける。


「ジンさん?」


「……どしたの?」


 首を傾げる二人に右手をあげて応え、グラノスの体に視線を向けた。

 奴の体は今や原型を保っておらず、黒い(すす)の集合体となっている。


「残っていてくれると助かるんだがな……」


 山のように積もった煤を両手で掻き分けていくと――目的のブツが顔を覗かせた。


「……おっ、あったあった!」


 俺が長年の愛用している大剣だ。

 傷一つついていないそれを二三度振るって煤を払い、いつもの定位置に背負った。


「やはり……これがあると落ち着くな」


 長いハンター生活で、俺は一度も武器を変えたことがない。

 小さい頃からずっとこの大剣一筋だ。


 別に名のある刀匠が打ったものだとか、そういうものではない。

 ただ昔から家にあったものだ。

 斬れ味は良くも無く、悪くも無い。


 ただ恐ろしく丈夫だった。


 巨大な岩石を斬ろうが、鉄のように硬いモンスターを斬ろうが、刃こぼれ一つしない――自慢の愛刀だ。


 黒い煤から大剣を取り出す光景を見たアイリは、驚きの声をあげた。


「あっ、ジンさんの大剣!」

「ありゃりゃ、何でそんなとこに?」


 二人はそのとき必死に逃げていたため、グラノスが俺の大剣を飲み込んだことは知らないようだった。


「んー、まぁいろいろとあってな。それは帰りながら話そうか」


 そうして俺たちは、ユークリッド村への帰路についたのだった。

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ライトノベルは発売後一週間の売上(初動)が命です……。

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定価1200円――四か月に一度の発売――つまりひと月300円!

一年掛けて作り上げたこの一冊――月300円を遥かに越える価値があると思います!


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とらのあな・ゲーマーズ・メロンブックス様だと特典付き+大展開中なので、見つけやすいです!

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書き下ろしSSリーフレット:リューの料理! リューが一生懸命ジンのために料理をするが……?

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さらに有償特典としてB2タペストリー! こちらかなり肌色成分を多めの非常にエッチな一品となっております!

【ゲーマーズ様】

松竜様の美麗イラストを使用したブロマイド(下着姿のアイリ・スラリン・リューです!)

【メロンブックス様】

書き下ろしSSリーフレット:スラリンのプレゼント スラリンがジンのためにプレゼントを用意するが……?


どうか紙の書籍版をお買い上げいただきますようお願いいたします……っ!

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