二十四:ハンターという生き物
砂埃が晴れるとそこには――先ほどとは異なり、余裕に満ちた表情のグラノスが立っていた。
その大きな口には、俺の大剣がしっかりと咥え込まれている。
「んぐ……っ。ぷはぁ……」
奴は大剣を丸々一飲みすると、ポンポンと腹を叩く。
「それにしても、まさか唯一の武器を投げ出すとは……。存外に頭が悪いのだな、小人間よ」
既に自らの勝利を確信しているのだろう。
奴は完全にこちらを見下していた。
「真性の阿呆か……? いや……勝負を諦めたと言った方が適切だな」
もう勝利の余韻に浸っているのか、奴は饒舌に語り始めた。
「まぁ気持ちもわからんではないがなぁ。あの絶望的な状況下でよくやったと言えるだろう。人間よ、貴様の健闘を称え――あの小さき娘どもは八つ裂きにして殺してやろう。ゆっくりなぶるように痛めつけ、生き地獄を味わわせてくれる……っ! ジジジッ、ジャバババババババッ!」
奴は醜悪に顔を歪め、大声をあげて笑い始めた。
あまりにも大きな思い違いをしたグラノスを前に、俺は大きなため息をつく。
「はぁ……グラノスよ。お前も存外に学が浅いな」
「……なに?」
「高度な知能こそ持っているようだが、『ハンター』という生物を全く知らないようだ」
ハンターとは、この世で最もしぶとい生き物だ。
たとえどんな劣悪な状況下でも、どれほど絶望的な戦況でも――決して『生』を諦めない。
土を食い、泥水をすすり、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ。
全てはただ――獲物を仕留めるために。
それがハンターという生き物だ。
まして俺のように年季の入った古いハンターならなおのこと。
どれだけ絶望的な状況であろうと諦めない。
腕が折れようと、足が折れようと、唯一の武器が無くなろうとも諦めることはない。
「はんたー……? 何だそれは? 食い物の名前か?」
「ふっ、まぁいい。それじゃそろそろ――ケリを付けようか」
俺は一歩でグラノスに肉薄し、右手に意識を集中させる。
(身体エネルギーを……一か所に集める……っ!)
すると――キーンという甲高い音と主に、手のひらに光球が発生した。
「こ、これは……馬鹿なっ!? 何故この世界で魔法を……っ!?」
「さて、何故だろうな?」
アイリとヨーンがこの世界で魔法を使えない理由――それはひとえにマナが存在しないからだ。
魔法とは大気中に浮遊するマナと身体エネルギーを織り交ぜて発動するもの。
そして俺は、残念ながら『マナ』を使って魔法を発動することはできない。
(だが、この体に有り余っている身体エネルギーを利用して魔法を暴発させることならば可能だ)
つまり、俺だけはこのマナの無い世界でも疑似的に魔法を発動することができる。
「ぐ、ぐ……っ。じ、ジャァアアアアアッ!」
目を大きく見開いた奴は大きく口を開き、丸呑みにせんと首を伸ばしてきた。
「その反応……どうやら当たりみたいだな」
やはり奴が鉄壁の守りを誇るのは、物理攻撃に対してのみ。
魔法に対する耐性は無いと見た。
俺は迫り来る噛みつきを軽く躱し、奴の弱所――がら空きの腹の前に右手をかざす。
「さて、お前の誇る<憤怒の剛鱗>と俺の体……どちらが丈夫か勝負しようじゃないか」
「や、やめ――っ!」
「――<爆発/エクスプロージョン>」
次の瞬間、手のひらの光球がまばゆい光を放ち――大爆発が周囲を飲み込んだ。
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明日と明後日は発売後一回目の土日――この作品にとって天下分け目の戦いとなる二日間です……っ。
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次回更新は明日! 今後ともよろしくお願いいたします!




