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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第五章:モンスターだらけの世界

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十五:ゴブリンと人間


 それから俺たちは簡単に自己紹介を済ませた後に、ゴブシャマからたくさんの話を聞いた。


 古来より人間とゴブリンは共存関係にあったこと。

 グラノスは人間に生贄を要求したこと。

 生贄を捧げる場として、古来よりゴブリン族が祭事に使ってきたあの祭壇が指定されたこと。

 祭壇の下は螺旋階段になっており、生贄に捧げられた人間をこっそりとゴブリン族が匿っていたこと。


「ふむ、なるほど……。――しかし、どうやってグラノスたちの目を欺いたんですか?」


 こっそり匿うと言っても簡単なことではないだろう。


「はい、中々に骨の折れる仕事でした……。あの祭壇に生贄が捧げられると聞いた我々は、まず檻の製作から始めました。頭上が見えないように天板を作り、それから脱出口として下の部分が開く仕組みのものを作りました」


「ほぅ」


 どうやらあの檻はゴブリンたち手製のものらしい。


「そしてグラノスの配下が檻を踏み壊し、人間を殺そうとする直前に――祭壇の地下に潜む我々が檻の中身をすり替えたのです。生贄に捧げられた人間を、近くで狩ってきたモンスターに」


「……なるほど。しかし、ずいぶんと危険な賭けに出ましたね。もし奴等が生贄を食べるつもりだったらどうするつもりだったんですか?」


「いえ、奴等が人間族を食べるつもりが無いことはわかっておりましたので。その点については問題ありません」


「ん? それはどういうことですか?」


 何故それほどまでに言い切れるのだろうか?

 こちらの世界では飛龍種が人里を襲うことなどザラにある。

 その目的はもちろん――人間を食べることだ。


 するとゴブシャマは「これは以前、この地に住んでいた飛龍から聞いた話です」と前置きしながら説明を始めた。


「食物連鎖の頂点に君臨する飛龍種は、わざわざ人間族や我らゴブリン族のような脂身のない骨張った種族を食べないようです。まぁ、それも理解できる話です。そんなまずいものより、この森には脂の乗った美味しいモンスターが山ほどいるのですから」


「ふむ、なるほど……」


 確かにこの世界には驚くほど多くのモンスターが存在する。

 飛龍種のような上位種族がメシを選り好みするのも理解できる。


 だがしかし、今の話が全て事実だとするならば。


(このゴブリンたちは、スウェンの言う通り『いいゴブリン』ということになってしまう……)


 果たして、そんなことがあっていいのだろうか……?

 ゴブリンは醜悪で卑劣で、世界中のハンターたちの嫌われ者。人が狩った大切なものを横からかすめ取っていく――存在そのものが悪の種族。


(いや、待てよ……。今の話が全て、ゴブシャマの作った嘘だという可能性は……?)


 顔を上げて、念のためゴブリンに匿われていた村人の顔を見てみる。


 しかし、彼女たちはみな一様に頷いており、その顔にはゴブリンに対する信頼のようなものが見て取れた。


(ふむ……ゴブシャマの話に偽りはないようだな……)


 つまり、結論としてこのゴブリンたちは『いいゴブリン』ということになる。


「……話はわかりました。ゴブシャマさん、生贄に捧げられた村人を匿っていただき本当にありがとうございました。どうやらあなたたちは『いいゴブリン』で間違いないみたいですね」


 俺がペコリと頭を下げると、


「……い、いいゴブリン? い、いえいえ、とんでもございません。こちらこそ、先ほどはゴブレッドたちが大変な御無礼を働き、本当に申し訳ございませんでした」


 ゴブシャマさんは不思議そうに首を傾げた後にペコリと頭を下げた。


「気にしないでください。いきなり訪ねてきたのは、こちらなのですから」


 それからお互いの緊張をほぐすように一言二言、軽く雑談を交わしたところで――そろそろここから切り上げることにした。


「さて、それではこの辺りで失礼いたします。匿っていただいていた村人は、俺が責任をもって村まで送り届けますのでご安心ください」


「さ、左様でございますか……っ。し、しかし……いえ……何でもございません」


 ゴブシャマは何か途中まで言いかけて……そのまま黙りこくった。

 突然多くの人が村に戻れば、グラノスたちに勘付かれる危険性がある――彼はそのことを危惧したのだろう。


(……本当に賢いゴブリンシャーマンだ)


 しかし、その点については問題ない。

 俺はゴブシャマさんを安心させるために、一応伝えておくことにした。


「その件は問題ありません。近日中にグラノスは仕留めますので」


「な、なんと……っ!? それはジン殿が……っ!?」


「えぇ、もちろんです。俺はそのためにここへ来ましたから」


 それから俺は匿われた村人たちへ声をかけた。


「それではみなさん、ひとまずユークリッド村へ帰りましょうか」



 ゴブリンたちの住む洞窟から、ユークリッド村までの道中。


 少し後ろにいるザリが興奮した様子で、匿われていた村人に伝え聞かせていた。


 俺が飛龍を狩ったことや、試しの剣を引き抜いたことを、大袈裟な手振りで鼻高々に話していた。


(そういうのはできれば俺がいないところでやってもらえると助かるんだがな……)


 ……さっきから背中がむず痒くてたまらんな。


 そうして俺は、背中に突き刺さる村人たちの熱い視線に気付かないようにしながら獣道を進んでいく。


「……しかしなぁ。いいゴブリン、か……」


 世界はまだまだ広いな……。


 ぼんやりとそんなことを考えている、目の前にユークリッド村が見えてきた。

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