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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第二章:おっさんの世界

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十、相談


 自宅へ帰ると、ちょうど洗濯物を干していたアイリが出迎えてくれた。


「おかえりなさい、ジンさん。今日はお早いですね」

「あぁ、ただいま。ちょっと、いろいろあってな。スラリンとリューは?」

「二人ともまだ寝室でグッスリと寝ていますが……。起こした方がいいでしょうか?」

「ふむ……。いや、もうすぐ起きてくるだろうし、そのままにしておこう」


 最近どういうわけか、あの二人は少し……ほんの少しだが、朝型の生活になりつつある。以前は夕方までグッスリと眠っていたのに、最近は昼頃になればモソモソと起き上がってくる。何でも『アイリを一人にするわけにはいかない』という理由かららしい。見知らぬ土地に来て心細いアイリのことを思っての行動というわけだ。それを聞いて、俺はとても嬉しく思った。


「それじゃ、俺は昼メシの準備をしてくるよ」

「あっ、それでは私もお手伝いを――」

「い、いや、大丈夫だ。アイリはそのまま他の家事をやってくれると助かるな。俺は、なんというか……そう、料理を作るのが好きなんだよ」

「そうですか、わかりました! それではジンさんがお料理を作ってくれている間は、倉庫のお掃除をしておこうと思います」

「ふぅー……。ありがとう、助かるよ」


 俺何とか彼女を傷つけることなく、無事に危機を回避することに成功した。

 その後昼メシを作り終え、アイリと一緒に完成した料理を食卓へ運んでいると――。


「ふわぁー……。ジン、アイリおはようー。いいにおいだねー」

「……ふわぁ。……二人とも、おはよ」


 パジャマを着た二人が眠たそうな目でやってきた。


「おはようございます。スラリンさん、リューさん」

「おはよう。まだ、ずいぶんと眠たそうだな。ほら、昼メシの準備もじきに終わるから、早く朝支度を済ませてくるといい」

「「はーい」」


 その後、料理を食卓に並び終え、水を注いだグラスを全員のところ並び終えたころ。普段着に着替えたスラリンとリューが戻ってきた。顔も洗って歯も磨き、さっぱりとした表情となっている。


「さぁ、それじゃ食べようか」

「「「「いただきます」」」」



「「「「ごちそうさまでした」」」」


 あれほど食卓にあった料理も、あっという間になくなった。


「あー、おいしかったっ!」

「……満腹満腹」

「とてもおいしかったです。ジンさんは本当にお料理が上手ですね」


 スラリンもリューもアイリも満足そうだ。


「ふふっ、お粗末様でした」


 さて昼メシも食べ終わったところで、そろそろ本題に移ろうか。


「みんな、少し大事な話があるんだが、聞いてくれるか?」

「うん、どうしたの?」

「……大事な……話?」

「いったいなんでしょうか? ぜひお聞かせください」


 そして俺は彼女たちに全てを話した。


 大聖典と呼ばれる不思議な予言書のこと。

 このルーラル王国全土に七つの穴が出現したこと。

 七つの大罪と呼ばれる恐ろしい化物を全て葬らなければ、この世界が滅びてしまうこと。

 おそらくこのクエストは、かつてないほどに危険なものになること。

 クエストを受ける場合は、スラリンとリューにも来てほしいということ。


 タールマンさんからは、最重要機密のため他言無用と言われているが、身内についてそれは適用されない。そんなことは彼も承知の上だ。だから俺が『相談する』と言った時も、彼は止めなかった。


「俺は現状、このクエストを受けるかどうか非常に悩んでいるところだ……。ぜひみんなの意見を聞かせてもらいたい」


 すると――。


「おもしろそーっ! いこいこ、ジンっ! すぐ行こーっ! 今日行こーっ! 今行こーっ!」

「ふふっ、久しぶりの……旅行……っ!」


 スラリンとリューは大喜びではしゃぎ始めた。


(この二人はちゃんと今の話を聞いていたんだろうか……)


 若干の不安が胸に押し寄せる。


「あー……アイリはどう思う?」


 この中で唯一の常識人である彼女に問いかける。

 すると彼女は少し悩んだ後に、口を開いた。


「私は……危険だと思います」

「……ふむ、確かにな」


 それがごく普通な意見だと思う。


「――ですが、その謎の穴の先で、私たちエルフ族のような――苦しんでいる人たちがいるのならば、助けにいきたいと思います」


 アイリは強い意志を感じさせる口調でそう言った。


「ふむ……つまり、賛成三票反対ゼロ票ということでいいんだな?」

「おっけーっ!」

「とても……楽しみ……っ!」

「はいっ!」


 全員の意見が一致したため、俺はこの特級クエストを受けることにする。


「それじゃ、スラリンとリューは身支度を整えてくれ。アイリはすまないが、少しの間留守を頼――」

「いえ、私も連れて行ってください」


 彼女は俺の目を真っすぐに見ていた。そこからは強い決意を感じられる。


「いいのか? これは本当に危険なクエストだ。俺だって守り切れるかはわからないぞ……?」


 当然ながら、全力で守り切るつもりだが。


「大丈夫です。私だってエルフの村で学んだ『魔法』があります。少しはお役に立てるはずです」


(なるほど……。確か<恵みの水/ブレッシング・ウォーター>だったか……?)


 エルフの森を消火していたときに、彼女たちエルフ族が使用していた不思議な力を思い出す。


(確かに、万が一飲み水を確保できないような過酷な環境だった場合には、あの魔法は助かるな……)


 それに彼女の口振りだと、他にもいくつか便利な魔法が使えそうである。戦闘はスラリンとリューに任せて、彼女にはサポート役を任せる構成も悪くない。


「そうか、わかった。危険な旅になると思うが、よろしく頼むぞ、アイリ」

「はいっ!」


 さてやるべきことも決まったし、ひとまずタールマンさんに報告しにいくか。


「それじゃ、俺はタールマンさんにクエストを受注したことを伝えてくる。一応、今のところ明日には出発する予定だ」

「はーいっ!」

「……ワクワク」

「わかりました」


 そうして俺は、再びハンターズギルドへと向かった。


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