表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

危機回避

突然のおじいちゃん登場に驚いたのか、

カースケはすぐに飛び立ってしまった。



「おじいちゃん、さっきの話、ちゃんと聞かせて」

家に着いた永遠は、おじいちゃんにそう言った。


『永斗が5、6歳の頃だったかな……待田親子が

ここへ引っ越して来たのは……』


***


待田 省吾が、 両親の離婚を期に、母親の実家がある岐阜県へやって来たのは、

彼が間も無く6歳になる頃だった。


近所に住む同じ年の、元村 永斗は生まれつきあまり丈夫な方ではなく、

家で本を読んだり、絵を描いたりして過ごす事が多かった。


ところが省吾は都会育ちの割にわんぱくで、外で虫捕りをしたり、

用水路でザリガニ釣りをしたりすることを好んだ。


真逆の二人なのに、なぜかウマが合うらしく、いつも二人で遊んでいた。


そして、その姿をいつも見守っている者が……

胸に白いブーメランを逆さにしたような模様の入った、大きなカラス……


カースケだ。

カースケと最初に出会ったのは省吾だった。



越して来たばかりのある日、まだ永斗と面識がない頃、

一人でザリガニ釣りをしていた省吾は、

用水路で足を滑らせ怪我をして動けなくなってしまった。


『大丈夫か?』

俯いてべそをかいていた省吾に、頭の方から声をかける者がいる。

この暑いのに、黒ずくめの服装で白髪の若い男が、省吾に向かって手を差し伸べた。


省吾は少しだけ驚いたが、男の手を掴んだ。

不思議と怖さを感じなかったから……

用水路から引き上げられ、


「ありがとう……」と省吾がお礼を言うと、

『どういたしまして!』と返事をしたのは、男ではなく、カラスだった。

「え、カラス?さっきの人は?人じゃなかったの?」


混乱したが、その堂々とした姿も、たった今起きた出来事も、

省吾の心を鷲掴みにした。


胸元の白いエンブレム、一際大きな身体、

幼い省吾を魅了するのに時間はかからなかった。


それを期に、1人で寂しくしている時、

1人で遊びに出掛けた時、

決まってカースケは現れて、遊び相手をしてくれたり、

話し相手になってくれた。


その内、永斗と出会って親しくなっていくと、省吾はどうしても

永斗にカースケを紹介したくなった。


ちなみに、『カースケ』という名前は、相手が名乗ったわけではなく、

省吾が勝手に思いついて、そう呼んでいるだけだ。


永斗にカースケの話をしてみた。

普段から沢山の本を読んで、おとぎ話のようなものにも慣れ親しんでいるせいか、

彼は躊躇なくカースケの存在を受け入れ、会ってみたいと言った。


学校が終わると、2人は川原で落ち合う事にした。


1人で家路に着いた省吾の前にカースケが現れた。

「あ!あのさ、今日俺の友達に会って欲しいんだけど……」


『へえ……何で?』


「俺の1番の友達、親友なんだ。だから、カースケを紹介したいんだ」


『ふーん……どこで会うの?』


「これから川原で!」


『気が向いたら行くよ』


仕方なく省吾は1人で川原へ向かった。

やがて永斗もやってきた。


『カースケは?』


「気が向いたら来るって……でも嘘じゃないよ!」


『うん。信じるよ』永斗が微笑んだ。


2人はおしゃべりしながら、カースケを待った。

そのうち、永斗が苦しそうに咳き込み出した。


「大丈夫⁉︎」


『うん。いつもの事だから……少ししたら 治るから……』


ところが咳はどんどんひどくなり、胸の辺りでヒューヒューと異音がし始めた。

永斗が省吾の方へもたれ掛かった。


「どうしよう誰か呼んで来なきゃ!永斗、しっかりして!」


『……うん』


永斗の顔から血の気が引いて朦朧とし始めた。

省吾は周りを見渡して、「誰かーー!誰かいませんかー⁉︎」

と叫んだが返事はない。


ふと背後から『呼んだ?』と声がした。

黒ずくめの出で立ちで、カースケが立っていた。


「カースケ……」省吾は涙声だった。


『とりあえずこの子を家まで運ぼう!行くぞ‼︎』

カースケはそう言うと、2人をコートで包むように抱き上げ、

空へ舞い上がった。

カースケは巨大なカラスに変わっていた。


「えーーーー‼︎」

驚く省吾を無視して、永斗の家の真ん前まで2人を運ぶと、

彼等を放し、いつものカースケサイズに戻った。


省吾は、永斗の家に駆け込んで永斗の異変を告げた。


家の中から両親が飛び出して来て、父親が永斗を家に担ぎ込んだ。

家には、呼吸が苦しくなった時に使う吸入器も薬もあるらしい。


省吾はその様子を心配そうに見守っていた。


吸入すると、少しづつ永斗の顔に赤身が戻った。


「良かった‼︎」

省吾は気が抜けて、その場にへたり込んだ。


永斗の両親に何度も礼を言われ、省吾は心から安堵して帰路に着いた。


***


『うちの永斗が喘息で倒れて、省吾がそれを運んで来てくれて、

その頃からかなあ……さっきのカラスもたまに見かけるようになったんだ。

何となくだが、あのカラスが2人を見守ってくれてるような気がしてな、

微笑ましいと思いながら眺めとったもんだ……』


永遠は思った。

お父さんを助けたのはカースケだと……


カースケ ならそれが出来る事を永遠は知っていたから……















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ