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おじいちゃんは、

『何もないが……』と言いつつ、永遠に朝食を準備してくれた。


炊きたてのご飯に、豆腐の味噌汁、近くの畑で取ってきた

ほうれん草のお浸し、後、鯵の開き……


永遠は、「いただきます」を言ってから、

凄い勢いで朝食をたいらげた。

鯵の開きを除いて、だが……


『永遠、魚は嫌いか?』

おじいちゃんの問いかけに小さく頷く永遠。


おじいちゃんは大笑いした。


『苦手な物まで親子して似てるんだな』


「お父さんも、魚嫌いだったの?」


『うん。こっそり庭先に放りに行ったり、植え込みに隠したりしとった』


そうか。僕の魚嫌いはお父さんのDNAなんだ……

永遠はクスッと笑った。


『涼しいうちに畑の草むしりに行くが、ついて来るか?』


「はい!」


永遠は元気に返事をした。


***


朝の日差しは優しいと思っていたが、とんでもない!

日陰のない畑には、夏の日差しが容赦なくサンサンと降り注ぐ。


さっき食べたほうれん草の畝の周りの草を、おじいちゃんが黙々とむしり始める。

永遠も真似をして、むしってみる。


すぐに汗が全身の毛穴から吹き出し、ますます暑さが体に纏わりつく。

おじいちゃんは毎日こんな事をしてるのか。

たった1人で……


拭っても拭っても、顔からの汗が止まらない。

俯いて作業をしてるから、汗が顎の辺りに集結して、地面にポタポタ滴り落ちる。


『今日はこれくらいにしようか』

おじいちゃんがそう言った時、もう太陽は真上まで昇ってきていた。


家に着くと、おじいちゃんが、冷たい麦茶を出してくれた。

永遠はたくさんお代わりした。


『近所に綺麗な川があるんだ。お前、昔 お父さんと行った事があるんだが

覚えてるか?』


「うん。後で行ってみてもいい?」


『もちろん。ただ気をつけるんだよ』


昼食は冷たい素麺だった。

これもまた、ペロリとたいらげると、一目散に川へ出かけた。


水の音を頼りに歩いて行くと、道路の下に川が流れているのが見えた。

ガードレールの隙間から、下へ降りれる道を滑るように降下すると、

急いで水に足を浸した。


「ああ!生き返る‼︎」

永遠は思わず大声で叫んだ。


『大袈裟だな』

その声に振り返ると、カースケが気候に不似合いな黒ずくめの人の姿で現れた。


「今迄どこにいたの?草むしり、大変だったんだから‼︎」

少し不機嫌に永遠が言った。


『俺はカラスだから、な、手伝えないでしょ?』


「今、人間になってるくせに……」


『まあ、俺にも都合ってのがあるんだよ。許せ!』


「カースケも入る?気持ちいいよ‼︎」


カースケは、ズボンの裾をまくり足を浸した。

永遠が足で水面を蹴り上げ、カースケに飛沫をかけた。


カースケも負けずに応戦し、2人はずぶ濡れになって戯れた。

遊んでいるうちに興奮したのか、カースケがカラスの姿になっていた。

陽の光に照らされた黒くて艶やかな羽根から、いくつもの水滴がコロコロとすべり落ちている。


ひとしきり、水遊びを楽しんでクールダウンした2人は、

岩場で身体を乾かしつつ、休憩した。


ちょうど木陰になって、涼しい風が抜ける岩の上で

カースケがうたた寝を始めた。


確かに、水遊びの後はとても疲れる。

永遠も何だか眠くなってきた。


カースケの隣で、永遠もウトウトし始めた時だった。

『庄吉……ごめん……』


カースケが寝言を言った。

驚いてカースケの顔を覗き込んだ。


眠るカースケの瞼から一筋涙がつたった。


「ショウキチ……?」


永遠の知らない名前。

よく考えたら、カースケの事なんて何ひとつ知らない。


人間になれる不思議なカラス、という事以外何も……


「お前は一体何なんだ?どこから来たんだ?」

永遠はそんな事を考えながら、そっとカースケの頭を撫でた。


カースケが目を覚ました。

『あれ?寝てたのか……』


ブルっと身震いすると、カースケは岩の上に立ち上がった。


そこへ、おじいちゃんが迎えにやって来た。

永遠とカースケを見て、おじいちゃんは目を丸くした。


『お前は……永斗や、省吾と遊んどった、あのカラスか?

いや……そんなはずない!もうずっと昔の事だ。しかし……』


「おじいちゃん、今、永斗と省吾って言ったの?」


『あ?あぁ……うちの永斗と、待田さんとこの省吾は、ここで育った

幼馴染みだ。二人でよくこの川へ遊びに来とった。それに、その

カラスにそっくりなカラスも一緒だった』


お父さんとお義父さんは、カースケを知ってるの?


それって、どういう事?


永遠の頭は疑問だらけになった。











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