おじいちゃんの家で
***岐阜県***
一晩中飛び続けて、カースケと永遠は元村家に辿り着いた。
「カースケ、どうしてぼくのおじいちゃんの家知ってたの?」
永遠は、おじいちゃんの家が岐阜県にある事しか話していない。
それなのに、カースケは迷う事なくここへ辿り着いた。
『そんな事どうでもいいから、早くおじいちゃんに会いに行けよ!』
再び人間の姿になったカースケが永遠を促した。
「うん……」
いざ家に行こうと思うと、永遠は急に不安になった。
おじいちゃんと会ったのは、永遠がうんと小さい時だ。
おじいちゃんは自分を覚えているだろうか……
しかも、こんな早朝に突然押しかけて、おじいちゃんはさぞかし
驚くだろう。
玄関先でモジモジしていると、中から朝刊を取りに
おじいちゃんが出てきた。
『おはよう』
おじいちゃんに挨拶をされて、慌てて永遠も
「おはようございます……」
と挨拶を返した。
おじいちゃんは、暫く永遠を舐めるように見て、
『お前、永遠か?』と言った。
「はい!」
永遠は元気に返事をした。
『本当に、本当に永遠か?そうだよな、永斗の小さい頃にそっくりだよ。
どうやって来たんだ?学校は?おお、夏休みか……
それにしても遠くまで、1人で来たのか?ん?』
おじいちゃんは、答える暇がないくらい、あれこれ質問した。
「1人じゃないです。そこにいる人と……あれっ?」
振り向くとカースケの姿はなかった。
少し離れた木の上から
『カーー!』と返事のように声がした。
「……1人で来ました」
『そうか、そうか。よく来てくれたな』
おじいちゃんはニコニコしながら、家に入るよう永遠に勧めた。
『美和さんは、お母さんはここへ来た事知ってるのか?』
「え?いいえ……」
『黙って来たのか?よし、後で電話しておこう』
永遠は返事をしなかった。
*****
傷の手当てを終え、帰宅した省吾と美和は、永遠がいないのに気づいて
慌てていた。
『どこか、心当たりないのか?』
すっかり酔いが覚めた省吾が美和に問う。
「今、考えてるから!」
『俺のせいだな……俺があいつに上手く接してやれないから……』
「……」
『俺も父親を知らない。父親が子供にどう接したらいいか分からない』
「そうね。でもそんな風に思わないで。あなたは私を永遠とセットで
受け入れてくれた。あなたに受け入れてもらえてなかったら、私達……」
『そんな立派なもんじゃないよ。戸惑うことばかりだ。情けない……』
「朝になったら、あの子の友達の家に電話してみる」
『俺はその辺見てくるよ。子供の足でそう遠くには行ってないだろう』
省吾は家を飛び出して行った。
ダイニングテーブルの上を、東の窓から入って来た朝日が照らし始めた。
そのテーブルの上の携帯が鳴った。
「はい」
飛びつくように美和が電話に出た。
『あー……美和さん、かね?久しぶりだね……』
「あ、お義父さん!ご無沙汰しています」
『こちらこそ。元気そうで何よりだよ。ところで永遠の事なんだが……』
「永遠、そっちに行ってるんですか?」
『ああ。今朝方玄関先に突っ立ってた』
「すみません。すぐに迎えに行きます」
『いやいや。こっちは全然構わんよ。美和さんさえ良かったら
こっちで暫く預ろうと思うんだが……』
「ご迷惑じゃないですか?」
『たった1人の 孫だ。迷惑なもんか。せっかく来たんだし、
こっちでゆっくりさせてやりたいんだ。
いいだろう?』
「はい……では宜しくお願いします」
電話を切った後、暫く携帯を握りしめたまま、美和は茫然としていた。
そこへ省吾が戻って来た。
『もしかして、何か連絡あったの?』
「あの子、岐阜に行ったらしいの」
『え?』
「元村の家にいるって。今、お義父さんから連絡があった」
『良かった!でも、あいつ1人でどうやって?』
「分からない。とにかく、暫くは向こうで ご厄介になる事になったわ」
『そうか、居場所が分かって本当に良かった。様子見て迎えに行こう』
省吾はにこやかにそう言った。




