再会
カースケが現れないまま、無情にも時間は過ぎて行った。
省吾と永遠は相変わらずぎこちないが、互いに歩み寄ろうとしていた。
一番の変化は、永遠が省吾の事を
「お父さん」と呼び始めた事……
省吾は驚いて、
『今迄通りでいいよ。俺なんか、おじさんでも何でも。
お前のお父さんは、永斗だけだからさ。無理すんなって』
そう言ったが、永遠は、
「僕を生んでくれたのは永斗お父さん。でも、今僕を育ててくれてるのは
省吾お父さん。2人もお父さんいるとか、ラッキーじゃん!」
そう言って笑った。
省吾は泣きだしそうな気持ちを必死に抑えた。
永遠を思い切り抱きしめたいと思ったが、
頭をクシャクシャと撫でるのが精一杯だった。
たまに2人で釣りに行く。
岐阜へ出かける事もある。
おじいちゃんは、いつも笑顔で迎えてくれる。
同じ時間を過ごしていると、自然と絆は深まっていく。
『私もたまには混ぜてよ』
と美和が拗ねた口調で言うが、男同士の旅はなかなかいいもんだ。
しかも、2人には「カースケ」にまつわる、美和の知らない共通の秘密があるのだから。
肝心のカースケには、あれから全く会えないのだが……
食卓に鯵フライが上る度、永遠はカースケを思い出す。
道でカラスに出くわすと、カースケではないかと足を止め、
確認するのだが、残念ながらいつもはずれである。
カースケに会えないまま、中学生、高校生、やがて社会人へと、
永遠は成長していった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
十数年後……
庭先で少年がカラスとおしゃべりしている。
「一体、誰と話してるんだ?」
部屋の奥から顔を覗かせたのは、永遠。
『あ、パパ!あのねこの子カラスなのに、お話しできるんだよ。
ユキって名前なんだって』
「ユキ……?」
永遠はカラスの姿を見て驚いた。
胸の白い模様……
カースケ⁉︎
永遠は目を丸くして固まった。
見開いた目から涙が溢れた。
『パパどうしたの⁉︎』
息子は、急に泣き出した父を見て動揺する。
『よう!久しぶり!』
カラスは、永遠に向かって話しかける。
「カースケ……お前、突然いなくなっちゃって……
あの時、すぐに魚をやらなかったから、拗ねたのかと思ったよ」
永遠が泣き笑いした。
『バカだな。そんな事で拗ねるかよ。もういいかなって……
俺の役目は終わりかなって……そう、思ったからさ』
「そうならそうと、一言言ってくれよ。心配したんだぞ!」
『ああ、ごめんごめん』
カースケがケラケラ笑う。
『え?どういう事?パパ、ユキの事知ってるの?
ユキはカースケなの?』
永遠の息子が聞いた。
「そう。パパとカースケは昔からの友達!パパだけじゃないよ。
省吾じいちゃんも知ってる」
『すご〜い‼︎ パパとカースケはいつから友達なの?教えて』
「それはね……」
永遠の微笑んだ唇が、昔話を語り出す。
それは懐かしさと、愛しさと、涙の詰まった、
カースケと鯵フライの物語である。
終




