表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリスは外の世界へ行きたいようです  作者: 吐 シロエ
4章 クリーク帝国編
60/62

四十三話 「選んだ道の末」

短いですが更新しました。今年もありがとうございました! 2022.12.31

「……今、何て言いました?」


 ヴァイオレットのスミレ色の瞳が光る。ジェリエナも空気が重くなったのが嫌にでも分かるほどだ。


 闘技場での戦いの最中(さなか)。それは唐突に起こった。ラパンの挑発でヴァイオレットの威圧感が飛躍的に上がったからだ。


「ヴァイオレット様……?」


 そのヴァイオレットの部下であるフミも、ジェリエナの兄であるヘンリーも、あまりの異様さに戦いを中断したほどで。


「心配する必要はありませんよ、フミ。ボクは怒っているだけです。えぇ、ここまで腹立たしいのは久しぶりですよ……!」


 はは、と乾いた笑みを漏らすヴァイオレットは異質だ。ふらつきながら顔を手で覆う様は良くも悪くも大袈裟で、演者のような仕草は今にも踊り出しそう。


「――邪魔なんですよ」


「避けて、ラパン!」


 瞬間、ラパンの目の前にヴァイオレットが現れる。あともう少し反応が遅かったら、ラパンの首が彼の剣で吹き飛んでいたところだ。

 それでも構わずヴァイオレットは剣を振るい、笑う。

 彼の斬撃は止まらない。一切の隙も無く、文字通りうさぎ狩りとでも言うようにラパンを追い詰める。


「弟さん、知っていますか!? 貴方のその赤い目は不吉の象徴だと言われているそうですね! ()()()()()()()()()()! 遥か遠い異邦の国ではボクのようなスミレ色――紫の瞳は悪魔の象徴だと! そう、ボクの目も呪われているんです!

 ボクは『兵器』になるべく育てられました。貴方は自分で暗殺者の道を選んだそうですが、結局ボク達は自分の手を血で汚すことしか出来ない人間だ! 呪われているんですよ、ボク達は!」


 変わらず赤髪の青年は笑う。初めて飛び散る血の愛おしさを知った時のように、目を見開きながら光悦した顔で剣を振り、魔法を解き放つ。


――だが。そんなもの、ラパンにとってはどうでもいい。


「それが、どうした――!」


 剣とナイフの刃が交わり合う。

 そうだ。()()()()()()()()()()()()

 己の手が血で汚れていようとも、この目が呪われていようとも。ジェリエナを選んだからには茨の道を突き進むのは分かっていたことだ。


「上等だ! 俺の手が血で汚れていようが、俺の目が呪われていようが、そんなもの――

 守ると選んだからには当然の末路だ! たとえそれが操られた運命だとしても、俺は自分の意思でエナを選んだ!

 お前はどうだ、ヴァイオレット! お前は自分の意思でロワ皇帝やディリットの野郎を選んだと言えるのか!?」


「それ、は」


 がくん、と大きくヴァイオレットの動きが鈍くなる。そんな彼を見て主人のディリットは何も言わない。心配すらしない。


「ちょっと、ディリット!?」


 ジェリエナが声を上げてもディリットは堅く口を閉ざしたままで。


「終わりだ、ヴァイオレット」


 ヴァイオレットの顔目前にナイフが留まる。膝から崩れ落ちて立ち上がれないヴァイオレットをよそに、ラパンは振り返ってジェリエナに声をかける。


「これで良いか、エナ」


 ジェリエナは驚きで開いた口が塞がらない。

 ヴァイオレットは何も言えない。

 ディリットは何も言わない。


 再起不能となった青年の姿……それは、敗北を意味していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ