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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
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3.怪奇

 手塚渉。17歳。高校2年生男子。パソコン部所属。性格……現時点ではよく分からない。でも話した感じではいい人っぽい。その人の好意で放課後に学校を案内してくれるっていうからそれに甘えて現在最初の目的地、理科室に案内してもらっている。

 

「手塚くん、ホントにありがとう」

 

「気にするな、それと『手塚くん』 って呼び方やめてくれ。渉様と呼びたまえ!」

 

「……あっ、渉様」

 

「じょっ、冗談だよ。普通の呼び方でいいから」

 

「うっうん。……でもまだ慣れないから時期が経ってから自然に変えていくね……」

 

「わかった。んでこれから行く理科室だけどホント注意しろよ、とだけ言っておく」

 

 まぁ確かに薬品とか人体模型とか試験管とか結構高価なものもあるだろうし何より危険だよね。ちゃんと今から少し心を緊張させなきゃ。

 

「……うん、注意するよ」

 

「あの人がいないことを願おう……」

 

 手塚くんは不安な面持ちでそう呟いた。

 

「あの人?」

 

「いっいや、会わなきゃいいんだ、会わなきゃ……」

 

 さっきあった先生(痛すぎる担任)と同じたぐいなのかな? だとしたら今のうちに精神力を高めておかなきゃいけないけど。

 

「それって女の先生?」

 

 だとしたらもってきたビタミン剤を飲んでおかないと。ボクは自分の制服のふところを見た。

 

 今朝、莉紗子にもらった。第一なんで中学生の莉紗子がこんなもの持ってるんだか……。『お兄ちゃんっ、お父さんが持ってたビタミン剤あげるぅ。これ飲むと身体がビンビンになるんだってっ、疲れたときに使ってぇ!!』 蛇足だそくかもしれないけどお父さんの了解は得てないらしい。

 

「何言ってんだ。男の先生に決まってるだろ」

 

「良かったぁ」

 

 女の先生じゃないんだ。さっきみたいの類じゃなくて良かったよ。

 

「何が良かっただ、全然良くない! あんな危険な……」

 

 手塚くんは言葉に詰まった。それ以上口に出せないのか良く今のところ分からない。

 

「危険?!」

 

「っまぁ、行けば分かる」

 

 なんか不安になってきたよ。さっきの痛すぎて触れる事が躊躇ためらわれる人を思い起こして心配してたけど、今は……。ボクと手塚くんは隣の建物と繋がっている3階の連絡通路に向かった。結構建物の中が広くて中々そこまで行くのに時間がかかったけどやっとここまでたどり着いた。

 

「結構この校舎広いんだね……」

 

「まぁ確かにな。俺も入学したばっかの時はチビりそうになった。

 

 まぁここの学校はただの私立じゃないしな。どっかの御曹司おんぞうしやら御令嬢ごれいじょうやらの家の莫大な寄付金があるとかないとか、噂だけどな〜」

 

 御令嬢って……一人心あたりがあるよ。

 

「ほら、噂をすればその一人と噂されるお方がやってくるぞ」

 

 渉は前方を指差した。その先をよく見ると今から行こうとしてる隣の建物から雪穂さんが歩いてきてた。何か本や辞書を持っているようだ……。なにやら浮かない表情をしているようだ。朝のこと気にしてる……訳ないよね? なんであんなの持ってたのかは分からないけどボクはもうそんなこと気にしてないし、明日になれば忘れる事だって可能です。雪穂さんのことを見ていたら雪穂さんはこちらに気づいたようだ。ボクは軽く一礼した。そうすると雪穂さんは少し小走りでボクの方にやってきていきなり……

 

「ごめんなさいっ」

 

 雪穂さんは口元に手をやりながらそういった。目線は横を向いていた、そうか……。いやっいきなり謝られても困りますって。ボクは自分の手ワタワタさせながら

 

「謝る必要ないじゃないですか……悪い事したわけじゃないですし」

 

「でも、あんな間違い……」

 

 確かになんであんなものを雪穂さんが持っているのか疑問に思ったけど、でも少なからずボクに迷惑を掛けたわけじゃないんだし

 

「と、とにかく早く忘れますから気にしないでください」

 

「……分かりました。あら?」

 

 雪穂さんは渉へと視線を移した。

 

「お友達ですか?」

 

「ええ、今日知り合ったんです。えっと、手塚……」

 

 そう言おうとした瞬間に思いがけにないことが目の前で起こっていた。少し隣で距離をとっていたはずの渉がいつのまにか雪穂さんの真ん前まで移動していた。手塚くんは片膝かたひざを立てて雪穂さんの右手をとって口づけをした。

 

「なっ何をっ」

 

 ボクは思わず声を出してしまった。雪穂さんは顔を真っ赤にしていた。

 

「手塚渉17歳、高校2年、B組随一の男前と称される男です。お見知りおきを! 安心してください、独身、一人身、加えて家のお風呂は広いんです。一緒に日ごろの汗を洗い落としませんか?? 私があなたの心まできれいさっぱり洗い流して差し上げます。ちなみに希望を言えば私の背中を流して欲しいんですけどね。まぁそこはステップを踏んでからという事で。あぁそうそう、賞味期限もまだ過ぎておりません。どこかでお会いしませんでした? 初めてあった感じがしないんですよ、これって運命って言うんじゃないですかね?!」

 

 途中までは真実だと思うよ。でもさB組随一って言うのは……、なにより独身って当たり前だからね。賞味期限って何!? よく分からない……。分かる人がいたら今ココに来て説明して欲しいよ。っていうか、いきなり口説くんですか? しかもベタ過ぎない!? 80年代の人が使ってたようなクサい口説き文句。雪穂さんは少し対応に困ってるようだった。笑顔が微妙に引きつっている。

 

「えっ、あっあの……」

 

「手塚くん……やめなよ」

 

「あゆむ、人の恋路こいじを邪魔するのか? 俺の今までのナンパ成功率を知ってての物言いか? 49,1956パーセントだぞ」

 

 大体二人に一人の確率ね。それに賭けてるんだ、この人は……。でも雪穂さん、あきらかに困った顔してるし。

 

「理科室行くんでしょ? だったら早く行こうよ、ホラっ!」

 

 ボクは跪いている手塚くんを引っ張って隣の建物に向かった。

 

「ゆっ、雪穂さぁ〜ん、次はあなたに会いに行きますからね〜っ!!」

 

 渉は雪穂さんに向かってそう叫んだ。ボクはそんな最中さなか手を振った。雪穂さんはなにか言いたげだった。ボクは渉を早く雪穂さんから遠ざけるためにそれを吹っ切ることにした。隣の建物に入り、雪穂さんが見えなくなると渉は自ら立ち上がり溜息をついた。

 

「あゆむは雪穂さん知ってるのか?」

 

「うん、まぁ……」

 

 流石さすがに雪穂さんの家に居候してるなんていえるはずないけど……。理由まで聞かれたらどうしよう。

 

「そうか……。詩条雪穂、超絶お嬢様、その可憐さかつ華麗さ・しとやかさには誰もが魅了されるといわれている。

 

 ちなみに俺の校内ランキングでもトップ5には入っている。

 

 まぁ一応ファンクラブ実務部長だしな……」

 

 手塚くんは自信満々にそう言い放った。まぁ確かに可憐・華麗・清楚だよね。分かるよ、雪穂さんの部屋の隣に自分の部屋が用意されててきがきじゃないんだから。というかファンクラブ存在するんだ。まぁでもなんかありそうだとは思っていたけど。よくパソコン部なのに両立できるよ。まぁパソコン部だからこそ両立できるの間違いか……。

 

「それって、ちゃんと雪穂さんに許可取ってるの?」

 

 取ってなかったらただのストーカー集団だからね。まぁそこのところはちゃんとモラルをわきまえてるでしょう。わたるはそんな人間じゃないと思う……。勿論コレは初対面の感情だけで思ってる事なんだけどね。

 

「モチロンっ!」

 

 やっぱり。良かったぁ。モラル、ちゃんと弁えてるんだね。

 

「非公認にきまってるだろう!」

 

 そっちですか。ちゃんと許可ぐらい取ろうよ。でもそんな許可、雪穂さんが出すわけないか。だからこその非公認なんだろうね。

 

「心配するな、俺は清純派だ。純真・無垢が好きなんだ。あの清々しさ、う〜ん、あなたの氷をボクの心でメルトしてみせますよ」

 

 そんな事一切聞いてない。一体何を言ってるんだろう……。第一ボクは渉の好みの内容なんてどうでもいいし。

 

「しかし困った事があってな……」

 

 手塚くんは俯き加減にそう言った。困った事? 一体なんだろう。

 

「それって」

 

「おっ、もう着いたか。ここが理科室だ。ちょっと待ってろ」

 

 気づくとそこはもう理科室の教室の真ん前だった。手塚くんは理科室の下窓をしゃがんで見ていた。

 

 何してるんだろう……。

 

「いないみたいだな、今のうちに入るぞ」

 

 渉は立ち上がってボクの先陣を切ってドアを開けた。中は薄暗い。どうやら暗幕あんまくがひかれてて外からの光が遮断しゃだんされているようだ。その場の雰囲気はやけに薄気味悪かった。

 

「でっ電気つけようよ」

 

 ボクは真ん前にいる手塚くんにそう持ちかけた。

 

「あ、あぁ」

 

 手塚くんは電気のスイッチの場所まで行ってスイッチを押した。カチッっという音と共に天井の蛍光灯が、

 

「つっ、つかない……」

 

 手塚くんがそう驚いた口調でそう呟いた。理科室……なんか手に冷や汗かいてきた。色々友達とかから学校の七不思議ななふしぎだとか怪談話かいだんばなしとか聞いたことある。走る人体模型じんたいもけい、喋る骸骨がいこつあやしげな光を放つ自白剤じはくざいを飲ませようとする白衣を着た男の話、思い出しただけで身震いがする。有り得ない話だっていうのは分かってる、でも……。

 

「仕方ない、ココは詳しく詮索せんさくしない事にしよう、いいよな?」

 

 それが上策じょうさくだと思う。やっぱり触らぬ神にたたりなしじゃないけど下手に案内してもらって変なもの見たくないし。

 

「う、うん」

 

「じゃあ次だ」

 

 そう言って渉は入り口のほうに向かっていった。手塚くんが部屋を出ようとした時

 

「そこで何をしておる?」

 

 うっ後ろから低い声が聞こえた。少し声が震えている。薄暗くてあまり顔は見えないが白衣姿の男……、はっ白衣を着た男! まさかあの怪談話は本当マジ? 渉はおどろおどろしていた。手塚くんは目を大きく見開きはその人物を見つめていた。入り口からの明るさ以外にこの部屋の中の光はない。気のせいかこの理科室内は少し冷気があるような気がした……。

 

 薄手の白ワイシャツの袖から僅かにその空気が入ってきてなにか嫌な感じがした。

 

 

 


読破お疲れ様です。

読んで戴けて非常に嬉しく思います。

やっと学校生活的な内容に踏み込め、登場キャラの性格、特徴など様々なモノを伝え始めたところです。

いや〜まだまだですけどね・・・・・・。

これからも応援よろしくお願いします。

指摘・感想等ありましたらご評価の方を通してコメントよろしくお願いいたします。

それではまた次のストーリーも読んで戴ければ幸いです。

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