2.学友
それからボクは外にいる水島さんを呼び出し、その部屋の中で色々な事を話しあっていた。いままで住んでいた家ともう一つ家があったらしくその家で執事をしているらしい……。加えて他にも何人も召使さんがいるらしい。詳しくは時間がなくて聞く事が出来なかった。その後ボクは教員室のドアの前に立っていた。少し緊張して開けるのに手間取ったがやっと決心がついてドアを開けようとしたとき内側から開いてしまった。
「あらっ」
中には女の人が立っていた。しかも露出度マックスな服装。胸元開けすぎじゃないかと思わせるほど開けてるし、下を見下ろすと赤いハイヒール履いてるし……、メガネは側面がつりあがったものをしてるし。ここはどこかのキャバレーですか。外見からして痛すぎるよ、この人。でも多分教員室から出てきたんだから先生だろう。早く担任の先生に挨拶しなきゃ。
「おっおはようございます。あの、ボク転校生で、登校日初日にここに来いって言われて来たんですけど」
「お名前教えてくれる」
「源あゆむです」
「あらっ、私のクラスの子だわ」
口元に手をやってそう喜び驚きする先生。先生はボクの頭を撫で始めた。この人がボクの担任ですか……。第一印象から感じるに出来る限り関わりあいたくないんですけど。
「いっらしゃぁい。私のクラスになるってことは私のどれぇーになるのよぉっ。あゆむちゃん、まず手始めにクラスに行く前にあゆむちゃんを食べちゃっていいかしら。私朝ごはん、まだなのぉっ」
先生。ボク食用生物じゃありません。朝ごはんにしないください。しかも雌じゃありませんし。
「柊先生。セクハラですよ」
先生の後ろから初老で白髪の男性の人がこう言った。
「きょうトゥ〜には関係のない事ですわ。私は若いエッセンスを取り入れないと身体のピチピチさが保てないんです。ほら、ここの胸元の肌なんてもうツヤツヤで、やっぱりこれは生徒に愛撫してもらってるせいかしら……」
自分の胸を持ち上げて谷間を見ていた。先生、愛撫という言葉を公の場で言ったら即刻、監獄へと誘われると思いますよ。おそらくですけど、ボクが相手だったら完璧にひきます。
「ピチピチどころか、もうビチビチでしょうよ。ご自分の実年齢を弁えた上で発言して欲しいものですな」
教頭先生は自分の眼鏡を少し掛けなおしながらそういった。
「いまカッチーンきました! きょうトゥ〜もその白髪の量を弁えた上で発言なさったらどうかしら。河童になるのも時間の問題ですわ」
「わっわたしの一番気にしている事を……」
「ほら撫で撫でして差し上げますわっ、ほらもうすでに薄いじゃありませんかぁっ」
「ムッキーっ! 柊先生には一週間の謹慎処分を言い渡しますっ!」
「そんなぁ、冷たいじゃないのきょうトゥ〜ちゃん。ほら髪が生えるように旋毛を三回押してあげるから。いち、にい、さん。ほらっ」
そういって先生は恐れ多くも上司である教頭先生の頭の旋毛を親指で押した。
「……。柊先生……」
「何か?」
「それはより禿を促進させる行為です」
「ええ。だからなんですか」
元々知ってての実行犯ですか。
先生、教頭先生が可哀相です。先生だって朝、育毛剤を頭に塗り手繰ってるかもしれないのに……。少ない髪をどうこれから死ぬまでもたせるか、教頭先生だって毎日寝る前に思案している筈です。教頭先生の事を考えてあげましょうよ。そう心の中で思っていた。
「……。ええい、もう二言はありませんっ、自宅謹慎ですっ!」
「そ、そんなぁ」
「きょうトゥー、それだけは」
「撤回なしですからね。これ絶対です」
◆◆◆
それから先生は教頭先生に許しを乞うためにあれこれして、結局今度植毛で有名なサロンに先生が連れてゆくということで決着したようだ。その一部始終を全て目の前でじっくり見せられたよ。おかげで1時間目HRなのに30分も遅刻してしまいましたよ。まぁ先生も一緒だったけど。今ボクは先生と共に教室の扉の前に立っている。
「あなたのクラスはここよ、2年B組」
なんだろう……なんか緊張する。
自分の前の扉がやけに大きく思える。ボクは少し躊躇った。そんなボクを見かねてか後ろに立っていた先生がいきなりボクの前に出てきて扉を開けた。
「はぁ〜い、皆。今日も欲情してるぅ〜?」
ボクは堂々とそんな事を言いながらボクより先に教壇に歩き出している先生をドア入り口付近から垣間見ていた。先生、さっきの教頭先生の訓示はしっかりと真摯に受け止めたほうがいいと思います……。教室の中は閑散としていた。やっぱり皆も痛いと思ってるのかな……。
「え〜っ、私、ピッチー可奈子が転校生を紹介しちゃうっ、ほらっいらっしゃぁ〜い」
そういってボクに向かって手を拱いている。ピッチーってお笑い芸人みたいな名前やめたほうが……。しかも下の名前可奈子って言うんだ……。色々とツッコミどころ満載だったけどそこは置いておいてボクはゆっくりと先生の隣に歩き出す。教室の中の人間の視線が一点に集中する。その対象であるボクはここに入る前の緊張に加えて閑散とした空気がやけに緊張を高めた。
「今日からこの学校に転入してきました、源あゆむです。よろしくお願いします」
少しの間沈黙が続く……。
「キャーっ、カワイイっ!」
「なんか母性本能をくすぐるわっ」
「触ってみたい……」
そんな言葉がいきなり飛び交い先ほどの閑散とした空気が嘘みたい、辺りは騒然としていた。
「源クンの席は窓際から2列目の後ろから3番目の空いてる席ねっ」
「はい」
そう言ってボクは自分の席へ歩き出す。まだ辺りの視線はボクに集中していた。席に着いたところで隣を向いてみるとそこには見た事がある顔があった。赤髪……、さっき会ったあの子? つまらなさそうな表情。頬杖をつきながら前を向いていた。
「あの……」
上体をおこしながらこちらをむいた。
「さ、さっき会いましたよね」
「話しかけないでくれる。今色々考え事してて邪魔されたくないの」
さっきと同じ、嫌な感じ。ものすごく話しにくい。っと後ろで指で突付かれた。後ろを向くと頭がスポーツ狩りの男がいた。
「やめとけって。志倉はいつもそうなんだ」
「志倉さんって言うの?」
「志倉季節。成績優秀、容姿端麗だがコミュニケーション能力に欠ける。そこがいいという奴もいいやという奴もいる。まぁ俺としてはお勧めできないがな」
小声でそう言った。いつもこんなに冷たいの?
「俺は手塚渉。よろしくな!」
「よ、よろしく」
この出会いでやっと初めての男友達ができた。ボクの心配は解消されつつあるの、かな……。
更新が遅れてホントごめんなさい。
いや〜最近仕事に追われてて執筆活動が進まなくて。
ちょっとこの先も更新が多々遅れることがあるかもですがそこのところは了承してもらいたいです。
あと、感想、評価等の方を送っていただければ励みになりますし、創作意欲も湧き出て執筆活動にも影響してくるかもなのでどうかよろしくお願いします。
それでは次のストーリーをまた見ていただければ幸いです。