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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★プロローグ 【サイン】
5/56

5.妹

「……て、起きて……だから……」

 

 またベンチで眠っちゃったのかな。 いやでも昨日確かにお父さんと家に帰ってお母さんと莉紗子は先に眠っていたからそのまま就寝したんだ。ご飯も食べずに。

 

「あぁ、またボクベンチで……」

 

「なにが『あぁ、またボクベンチで』 よ。お兄ちゃんには珍しくエッチな夢でも見てたのぉ? でもベンチであんなことやこんなことなんてもしかしてお兄ちゃん趣味変わった?」

 

 何故か寝ているボクの膝の上に馬乗りしてニシシといった表情を浮かべている妹、莉紗子がいた。うわぁ……もしかして寝ぼけて変な誤解をさせた? 大体趣味ってなんだよ。まるでボクの趣味を熟知しているような物言い、第一そんなの莉紗子に教えた事なんか誓って一度もない。うん、絶対に!

 

「なんでボクの膝に馬乗りしてるの。しかもこれだけは誤解して欲しくないから弁解しておくけどいかがわしい夢なんてみてないから。そんなおかしな事をその歳でいうのはやめなさい」

 

「う〜ん!? おかしなことってどんなコトぉ??」

 

 そう言ってボクの額に莉紗子の額が当たるぐらいの距離まで顔を近づけて疑うような視線で数秒ボクの目を見つめた。屁理屈が減らない妹だこと。ボクは内申少々呆れモードに入っていた。

 

「っま、そういうことにしといたげるぅ。それより朝ごはん出来たよっ!大体さっきから10回以上朝の目覚ましコールしてるのにお兄ちゃん全然起きてくれないからこうして馬乗りして必死に起こそうと努力してるんじゃない?! 朝から妹に大変な迷惑をかけて申し訳ないと思わないのかなぁ、まったく。加えて今日引っ越しだしぃ……」

 

 莉紗子はむくれてそんな事を言った。そういえば今日は雪穂さんの邸宅(お城?)に家族みんなで引っ越す日だ。

 

「あの……莉紗子?」

 

「ん!? 何。どうかしたの、お兄ちゃん」

 

 さっきからずっと思ってたんだけど

 

「重いからよけてもらいたいんだけど」

 

 莉紗子の表情が一瞬固まる。少し間が空いてから、

 

「あ、ごめんなさい、んにょいしょっ」

 

 平然と全く心のこもってない謝罪の言葉を述べつつゆっくりとボクの膝から身体をどかしてゆく。

 

「じゃあ、あたしは下に先にいってるねぇ。早く来ないと祝引越し莉紗子特製とろろ汁が冷めちゃうから着替えたらすぐ下に下りてきてねぇ!」

 

 そう言って莉紗子は部屋を駆け出して出て行った。全く、こんなシチュエーションを毎朝繰り返してたんじゃ朝からどっと疲れるよ。待てよ、さっき特製とろろ汁がなんとかとか言ってなかったっけ? そもそも莉紗子って料理できたっけ?

 

(お兄ちゃ〜ん、まだぁ〜!?)

 

 下の階層から妹の催促の声が聞こえる。

 

「いま行くよぉ〜!」

 

 大きな声で下にも聞こえるように通る声で言った。また催促されないうちに早く着替えなきゃ。催促を3回くらい(平均で)莉紗子から受けると大体一週間コキ使われるんだ。これはもちろん過去の実績から言うんだけど……。ボクは素早く服に着替えた。ジーパンに薄手の白いTシャツに半袖の青いシャツを羽織った服装というなんともありふれた服装。でもいくら雪穂さんと今日、本屋に行くっていった理由だっておしゃれしたんじゃ自分らしさがないし……。うん、これで今日はいいんだ。変じゃない、多分……。

 

 それから朝食のため階下かいかに降りていった。そういえばお母さんや莉紗子はなんでお父さんが引越しを提案した事に対して同意したんだろう。少しは拒んだっていいと思うのに……。階段を下りながらそんな事をボクは思っていた。

 

『ガチャッ』

 

 

 リビングの扉を開ける。いつもと変わらない風景。庭に面したカーテンを開けた大きな窓からは朝の太陽の木漏れ日が差し込んでいた。これから食事をするテーブル、結構昔から使っていて少し最近調子が悪い大型液晶型テレビ、ボクのひいおばあちゃん(母方サイド)の形見だという食器棚。最近買ったばかりの冷蔵庫。こう言ったらおかしい人かもしれないけど、それ以外にもここだけじゃない、この家に置いてあるものには少なからず全部思いいれがあった。

 

 お父さんが昨日リビングに一緒に入った時に呟いたんだ。これも明日で見納めか……って。ただの物品なのになんか無くなると思うと寂しいね。

 

「ホラ、お兄ちゃん! そこでボヤっとしてないで早く食べてちょうだい」

 

 お母さんがリビングから対面カウンタ越しにボクにそう呼びかけて、ボクは我に返った。

 

「う、うんっ」

 

 そう返事していつもの指定席(それも今日で終わり……)である莉紗子の隣に腰を掛けた。一家の大黒柱であるお父さんの席はお母さんの隣、つまりボクの対角線上に座っている。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

「もう、遅いよ、お兄ちゃんっ!」

 

 やっぱり子供っぽい。そう心の中で思う。中学2年生に今年なったというのに身体は幼児体系とまではいかなくても近いトコには位置していると思う。身長低いし……。しかもそんな幼児体系の妹が今日はいつもとはうってかわって髪を二つあみからポニーテールに変えていた。

 

 これは妹の担任の先生から聞いたんだけど今時の人たちはえっと……『萌え』 っていうんだっけ?その言葉は莉紗子のためにあるとかなんとか中学の全学年の大半の男子が言っているらしく、それは日ごとに熾烈しれつを極め、しかもその中学校には莉紗子のファンクラブまであるんだって。ハッピやウチワを持ってるとか、正式な部活動として認める認めないのって学校側とのデモ活動が行われてるとか言ってたかな?

 

 まぁどちらにせよボクにはそんなことが現在の国立中学で行われているなんて信じられないし、その『萌え』 とかいう意味が分からないのでコメントのしようがありません。でもたまに妹としてカワイイなって思うときもあるんだけどね。

 

「お兄ちゃん、このトマト食べないのぉ? うわぁ〜い、いっただきぃ〜!!!」

 

 有無を言わさずボクの今日の朝食から食物をさらってゆく。知ってるか? 妹よ。トマトにはビタミンCが結構含まれていて、身体の機能を調節したり、各栄養素の働きを円滑にしたりするから絶対ボク達人間には必要なエネルギーなの、分かる??

 

「莉紗子ちゃん??」

 

 ボクはワザと妹の名前をちゃん付けで呼んでみた。

 

「ん〜? なにぃ〜?」

 

 平然とこれっぽっちも自分の罪を恥じる部分もなく箸を加えながらこちらを見た。

 

「お兄ちゃんも……」

 

「お兄ちゃんもぉ??」

 

「莉紗子の卵焼きいただきぃ〜」

 

 サラリとそんな事を喋って、素早く莉紗子の大皿から玉子焼きを一個掻っ攫う。

 

「っあ〜!! それぇ、私の大好物ぅ〜。ヒドイっ! ひどすぎるよぉ。あたしが玉子焼きが一番好きなの知ってるくせにぃ〜。こんな仕打ち、ううん、妹にこんなプレイしていいと思ってるのぉ〜〜!?」

 

 大きな声で若干起こり気味にボクの方に眼差しを向ける。いやいや、ヒドイ仕打ちってやり始めたのは莉紗子からでしょ? それをしっかり忘れないで戴きたい。しかも……朝もちゃんと注意したのに。この娘には『馬の耳に念仏or寝耳に水』 だ、おそらく……。

 

 もしやと思ってお父さん、お母さんの方を見てみると、お父さんはさっきまでゴキゲン調子で鼻歌を歌いながらスラスラ新聞を読んでいた目がいきなり莉紗子の方に向けられ目を大きく見開き、鼻歌も止まり、対するお母さんはさっきまで使い終わったフライパンなどを台所で洗っていたのにその手が止まり、さっきまでいつも通りだったリビングが妹である莉紗子のたった一言で一瞬にしてあ然空間に変わってしまったのだ。

 

「莉紗子……朝も言ったけどさぁ……そのおかしな発言やめなさい」

 

 ボクはこの空気で呆れた風に莉紗子に再びこの言葉をおくった。

 

「お兄ちゃん、そういえば莉紗子特製のとろろ汁飲みたくない? ううん、ぜったい飲みたいでしょ? うん飲みたいハズぅ〜! ルンルンル〜ン♪」

 

 ボクは一言も飲みたいとも飲みたくないとも言っていないのに、勝手に一人で乗り気になっている妹が席を立ち、洗い物をようやく再開したお母さんがいる台所へと歩いていった。というかボクの話、ちゃんと聞いてるのかな? 昔からそうなんだよね、人の話半分のトコ。

 

 −−−−−−

 

 朝食後ボクは自室にいた。莉紗子の作ったとろろ汁……飲まされたよ↓↓↓ しかも強制的に。ヒドイ仕打ちをされたのはこっちだよ。はい、自称莉紗子特製とろろ汁が作成者莉紗子さんの手で運ばれてきました。まず、ボクの目の前に出されてボクの第一声『これ……ドロロじゃん』 続けて二声目『……正直、飲まなくていい?』 最後に第三声『……絶対身体によろしくない成分入ってるよ……』 

 

 お母さん、お父さんがいる前なのにそんなボクの本心を聞くなりいきなり何処からかナプキンを持ってきて椅子にボクを縛りつけ、『お兄ちゃんがそんなに喜んでもらえるとは思ってなかったよ、うん!それでこそ作り甲斐があったってもんだよ』 心の底から……褒めてない。

 

 そうニヤつきながらボクの口に無理やりその…… ドロロ? (もうその名前でいいや)をかき込まされた。妹がいない今だからいえるけど『作り甲斐がい』 じゃなくて『作りがい』 じゃないの。さっきからお腹痛いしさぁ。やっぱりよろしくない成分入ってたよ。 しかもそのシーンを見ていたお父さん、お母さんは止めるのかと思って期待してたらお母さんは

 

「莉紗子が折角作ったんだし、お母さんはいいけどお兄ちゃんなんだから飲み干さなきゃダメよ!」

 

「そうだぞ! 父さんはいいけど、ドロロ、いやとろろ汁を飲み干すんだ!」

 

 さてこの二人の会話には2点ほどおかしな点があると考えられる。まず一点目、『父さんandお母さんはいいけど』 この最後の『〜はいいけど』 という部分に着目してみると、次のように解析することができます。『お父さん、お母さんは飲まないけど、重ねて言うけど飲まないけども……』

 

 いや、ボク一人にこんなことを押し付けるんですか? 第一知ってるんです。ドロロ汁の誕生秘話。お母さんが口頭で(莉紗子はそれをメモる)レシピを間違えてできてしまったんですよね。たまたま風呂から上がったボクが牛乳を飲もうとリビングに入ってくる時に聞いちゃったんですよ。ボクも前お母さんに教えてもらって覚えてたし。

 

 だからお母さんにも責任はあるわけです。責任逃れ……しないでください。お父さん……見捨てないで下さい。

 

 二点目、『飲み干すんだ』 の部分。一見普通の文章に見えます。ですがこれを解析すると、『ただ一口飲むだけではない。言葉の通り最後の一滴までその恐ろしい液体(通称:ドロロ)を胃の中におさめるんだ』 こういう意味があります。二回目だけど次こそはボクを助けて……。

 

 その数時間後ボク達は荷物と共に詩条家に引っ越していった。さっき思ってたことは勘違いだったみたい。たまたまお父さんの会社の専務さんが家を探していてボク達の家を貸し渡す事になったんだって。モチロン、物品もね。ボクは詩条家に向かう車の中少し浮かばれた気持ちに浸っていた。

 

 

 


Prologue fifth を読んで戴き至極の至りです。

本当にありがとうございます。

毎日アクセス数を確認すると意外とユニーク数が多く、読者の方々一人一人に感謝しております。

読者の皆様にはこのストーリーにあまり過度な期待を寄せず気軽な気持ちでこれからも末永く(長編となると思うので)見ていただければ有難いです。

私と致しましては今後一人でも多くの読者の皆様に読んで戴き、興味・関心を持っていただける様、一生懸命に頑張って参りたいのでよろしくお願いします。

それでは次のストーリーを見ていただければ幸いです。

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