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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
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38.異常メイド

  ボクと深戸ちゃんが玄関口に着くと、いつも待っていてくれる平賀さんはいなかった。雪穂さんを送っているとの事だけど、それが長引いているのかな。だとしたらそれまで待っていよう。

 

 それにしても、深戸ちゃんは未だにメイド服だけどいつ制服に着替えるのだろうか。ふとボクが深戸ちゃんに目を移すと、目の前にいたはずの深戸ちゃんが忽然と姿を消していた。彼女はボクのバックを持ったままなのに。

 

 あぁ、そうか今着替えに行っているのか。深戸ちゃんは頭が良いね、こういう時間を有効に使うんだ。もしかして平賀さんが遅れる事を予期していたのかも。だとしたらボクに深戸ちゃんは時間を取らせないという感心に値する事を成し得ているわけだから……、出来たメイドさんだよ。特殊技能、『予知』を習得している口がたつ不思議な超絶メイドさん。うん、なんかいい響き!

 

 数分待っていると急スピードで走ってくる黒塗りの車が激しい轟音とタイヤがアスファルトに擦れるような音も立てながら目の前の玄関口の車寄せに止まる。ひ、平賀さんってこんなに獰猛な運転していたっけ?

 

 ま、まぁ、やっと、平賀さん帰途に着いたんだね。しかしその車はいつもの乗っているものとはどうやら違うもののように感じる。次の瞬間、ウィーンという機械音と共に車のルーフが開し、その車はオープンカーへと変貌を遂げた。近づいてみるとどこぞの高級そうなスポーツカーで、アイドリング-ストップを行っていた。

 

「お待たせ致しました」

 

 運転席には黒タクシーの運ちゃんがよくつけているあの白い手袋(?)らしきものを付け、黒のサングラスを掛けた人がこちらに向かってそう言ってくる。助手席には何故かボクが先程どこぞのメイドさんに渡した鞄と信玄袋らしきものが置いてあった。運転者をよくよく見てみると頭には見覚えのある白のカチューシャが備わっている。まさか……

 

「み、深戸ちゃんっ?」

 

 ボクがそう投げかけるとその運転席のメイドは黒のサングラスを額に掛けて、運転席から出てきてすぐさま助手席の扉を開けた。

 

「お待たせしました、車の選択に悩みまして」

 

「いやいや、そうじゃないでしょ。なんで深戸ちゃんが車運転してきてるの? ダメでしょ。まぁなんか駐車場かなんかだと年齢に関係なく運転しても捕まらないとかいう嘘っぽい事聞いたことあるけど、にしてもここは駐車場じゃないでしょ」

 

 ボクがそう焦り気味に聞いてみると、深戸ちゃんは不思議そうな顔を浮かべてボクを見つめる。

 

「はい? それはそうです、ここは確かに駐車場ではありませんよ。分かっております、して何故私が運転してはいけないのでしょうか」

 

 な、何故に把握していないのよ? 浜辺 深戸……、確かに日本人だよね。外見も決して日本人から逸脱したような外国人という雰囲気も醸し出されていないし、ハーフという事もありえない。ボクは目の前のドアに手を添えている深戸ちゃんをじっと眺める。

 

「だ、おかしいでしょ? 深戸ちゃん、日本人でしょ?」

 

 すると目の前の不思議ッ子メイドは戸惑いつつ首を縦に振った。

 

「…、えぇ、そうですが。日本人ではいけないのですか?」

 

 こ、このままでは不思議ッ子メイドさんはわっぱさせられてしまう、主であるボクが教えてあげなきゃ。

 

「いけないも何も、深戸ちゃん運転できないでしょ?」

 

「あぁ、今馬鹿にしましたね? メイドだから運転なんて、車なんて動かせる訳がないって今そう思っていらっしゃる訳ですか」

 

 不思議ッ子メイドさんは頬を少々膨らませて目を細めながらこちらを見つめてくる。

 

「そういう事じゃなくてさ、というかメイドだから運転できないとかそれって差別でしょ」

 

「あぁ、そうですね。あゆむ様はそんな人ではないですものね」

 

 安心した面持ちとなった不思議ッ子メイド。ボクはこんな話にもって行きたいんじゃない。何故、深戸ちゃんが悪びれもなく車を乗ることが出来るのかである。だって深戸ちゃんは……

 

「って、そういうことじゃなくってさ。深戸ちゃんはまだ18歳じゃないのになんで車に乗ってるのって事だよ」

 

「はい? 私はもう18歳ですが……」

 

 不思議ッ子メイドさんはドアに添えていた手を離して、畏まって前で手を重ねる。

 

 18? 目の前にいるこの子が、精々いってボクと同い年かと思っていたのにまさかのボクより先輩って事? そんなバカな、いやバカって事じゃないんだけどちょっといや、物凄く驚いているだけ。先入観ってやっぱりいけないと心の中で深く思った。

 

 するとこの目の前の不思議ッ子メイドさんは高校3年生、いやもしかしたらこんなサプライズに乗じて実は大学生でしたなんて事もあり得るよ。いやいや、もしかして今言った事はフェイントで、実ははたまた失礼かもしれないけど、まさかろ、浪人してるとか、さ。幾浪もしてて隠蔽のために……。

 

「ろ、ろろ浪人してるんですか?」 

 

「しっ、してませんよ! じゃ若干失礼じゃないでしょうか」

 

 不思議ッ子メイドさんは序盤は驚きのあまり冷静さを突出してしまったが、後に戻ってゆかせた。

 

「じゃあ大学生ですか」

 

「いえいえ、まだあゆむ様と同じ高校生です」

 

 そうか、やっぱりそんなハズなかったよね。ボクは胸を撫で下ろした。しかし、まだ消えぬ質疑があったのだ。

 

「まさか留年してボクと同学年とか、はたまた下級生とかそういう類だったりします?」

 

 すると不思議ッ子メイドさんは溜息混じりに

 

「いい加減、普通に見てくださいません? メイドだって面倒だと……いえ、なんでもありません。加えて、貴方様は私の主なのですから歳など関係ありませんので、今までどおり普通にしてください。では、車にお乗り下さい」

 

 そう言い直して、不思議ッ子メイドさんは手を助手席の方に差し出した。

 

「そ、それはゴメンネ。なんか色々考えちゃって」

 

 そう言いながら言われた通り車に乗り込み、シートベルトを締める。それを不思議ッ子メイドさんは確認した後、ドアを閉めて運転席に搭乗する。そして車のエンジンを掛けなおし、大きな轟音が再び鳴り響く。そして不思議ッ子メイドさんはブレーキを踏みながら幾度かアクセルを踏みボクに視線を送る。

 

「と、ところで深戸ちゃんは免許持ってるんだよね?」

 

 すると腕を曲げて握りこぶしを上から下に引き込むような動作をしながら自信満々に

 

「3日前に取ってきました。公道を走った事は教官と一緒の時しかありませんが大丈夫ですっ」

 

 その自信はどこから? だって、教官の足元には当然ブレーキが設置してあるわけでしょう。しかし、この車は愚か一般乗用車にさえあろうはずが無い=危険を自らが回避させる事は出来ない、つまり……

 

 ボクは額に手をやる。

 

 心配なのである、しっかりしてそうだけど先程の有り得ない程の獰猛な運転を見せたこの不思議ッ子メイドさんが運転する車に乗って果たして無事であるのか。保証書を発行できるのならそうして欲しい。ん? ちょっと待てよ。保証書って例えば家電とか買うと付いてくるよね。もし欠陥があったら交換してくれる……。人間に置き換えよう。ボクがもし事故に遭って欠陥だらけになったら、交換……、あぁっ。ダメだ、ボクは交換できない。電機屋に頼んで『すみませんでした、はいどうぞ〜』的なノリでお手軽に済ませられる程の事じゃないんだぞ。車がオシャカ=御釈迦様の御元へ……。

 

 ぼっ、ボクは男だ、決める時は決めるんだ!決意を固めようじゃないか。ボクは背後を振り返りアレがちゃんと貼ってあるか確かめたがしかし。そこで、今にも発進しそうな不思議ッ子メイドさんを制止する。

 

「ちょ、ちちょっとま待った!わ、若葉マーク付けて無いじゃんっ!!」 

 

「えぇ、なにか問題でも?」

 

 なんの悪びれもなくそう応える。いやいや、貼ってなきゃいけないから。いや、これだけじゃない。他にも気になる事があったのだ。

 

「し、シートベルトはっ?」

 

 すると不思議ッ子メイドさんはハッと何か気付いたような面持ちを浮かべながら、シートベルトのある斜め上方の金具を一目見やるとゆっくりとボクの方に視線を移し、その場でどう見ても取り作ったような引きつった笑顔を向けてきた。

 

「い、いやですわ。い、い今しようと思った所、いえ間違えましたわ、オホホホ。私、発進の0コンマ6秒内にシートベルト付けられるか自分に試練を課してるいるのですのよ」

 

 既に固めたはずの決意が揺らいでゆく。

 

 あきらかにミスったでしょうよ。ボクも引きつった笑いをしながらふとオートマチックトランスミッションを見やった。不思議ッ子メイドさんは自分の信玄袋から若葉マークを後方のボンネットの片隅に貼り付けて満足げな顔をしながら、アクセルを踏もうとする。依然としてシートベルトはまだ装着しようとしない。

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

 ボクが大声でそれを静止する。

 

「どうしたのですか?」

 

 今度こそ不覚は一切ないと自信持っているのか、素っ頓狂な顔をボクに向けたのだった。

 

「どうしたのですか? っじゃないでしょう。ちょっとオートマチックトランスミッション見てみてよ!」

 

 ボクがそう言うと不思議ッ子メイドさんはその方に目をやって、空で手を幾度がブンブンさせた。

 

「い、い嫌ですわぁ、オホホホ。私とした事が、いえ、あぁ、あっ。で、ですからこれも私、発進の0コンマ6秒内にNニュートラルに即座に帰られるか自分に試練を課してるいるのですのよ、察してくださいな、察して、ウフフフ」

 

 そう、お察しの通りオートマチックトランスミッションがRリバースレンジになっていたのだ。いまの供述から言うと、この目の前にいる不思議ッ子メイドさんは発進から0コンマ6秒の間にシートベルトを締め、バックしているこの車のオートマチックトランスミッションをRからNに切り替えて、後方の壁にあたる前に前方発進させようとしているのだ。しかもこの車は普通の車と違って恐らく馬力が半端ないppsであろう。故にちょっとバックさしせようアクセル踏んだだけだとしても相当な距離進んでしまう。後ろを見やれば『shijo coporation』のロゴが入った大理石造のエントランス壁。その距離ざっと2〜3M。む、無理だ。

 

 オートマチックトランスミッションはRのまま。……この子やる気だ。ボクは不思議ッ子メイドさんに目を向ける。右手でハンドルを握り締め、左手はシートベルトの金具付近にセットしている。ボクが大いなる危惧を抱いているのにも関わらず、この不思議ッ子メイドさんは少々口元を綻ばせて、目を大きく見開いている。ブレーキングしながらアクセルを噴かしている。もう発進しそう。

 

「い、今の全部忘れよう? ちゃんと今からでもいいから考え直そう? 大丈夫、まだ間に合う」

 

 するとこちらに顔を向け

 

「いいえ、時間足らずです」

 

 そういいながら満面の笑みを浮かべてこちらを向く。

 

 こ、ここ……コワイ、ぜぜ絶対、死ぬっ!

 

「しっかり掴まっててくださいね」

 

「ちょ、ダメだってっ、あああ、ううっ……」

 

 ボクが言葉を発した半ばで車は急速でバックしてゆく。ボクは冷や汗をダラダラ掻きながら、後ろの大理石壁を見つめる。ボクが予想したよりも車はもの凄く速い勢いで壁まで近づいてゆく。

 

 隣の不思議ッ子メイドさんは瞬時にシートベルトを締め、オートマチックトランスミッションをNに切り替える。その際にボクは反動で大きく前につんのめり、不幸にも自らの額をダッシュボードにぶつける。

 

「うぅっ、い、いい痛ッ……」

 

 そう両手で患部を抑えながら悶えていると

 

「あらあら……」

 

 不思議ッ子メイドさんはボクに目を向け、視線が一致。その後クスリと笑って再び前方に視線を戻す。

 

 わ、笑われた……。ボク被害者なのに、犯人に笑われた。このイタイケな状態を笑いで片付けてしまったよ。どう処理してくれるかと思えばこんな。ヅキヅキ痛む額、放置。

 

 そんな風に大いに他人事のようにあしらう。ま、まぁ確かに他人だけどさぁ、深戸ちゃんとボクって一応主人とメイドな訳でしょ。だったら心配の一つくらいしてみては如何ですかね。

 

 尚、ここで確認だが隣の不思議ッ子メイドさんはボクとは対照的に微動だにしていない事をご理解戴きたい。

 

「か、軽い……」

 

 悶えつつもそう言葉を洩らすも、そんな事お構いなしに隣の不思議ッ子メイドさんはアクセルを踏む

 

「あああ、だ、ダメだ、ああ、うはぁっ」

 

 あぁ、展開はやはり予想通りに運んでしまったようだ。車はガシャンと言う音と共にその背後の壁にぶつかりってしまった……。言わんこっちゃない。ボクは幸なのか額に比較的軽症をおった、そうは言っても不思議ッ子メイドさんは動いてすらいない。でも車は止まったみたい。いやしかし後部座席の方に被害は至らないまでもトランクは……

 

「あぁ、やっちゃいましたね〜」

 

 いつの間にか運転席から降りていた不思議ッ子メイドは、無残にも大理石壁にぶつかり大いにへこんでしまい傷も伴っている後ろのボンネットを見ながら陽気な声でそう言っていた。ボクは後ろを眺めながら状況を凡そ把握する事が出来た。

 

「あぁやっちゃいましたねって、だから随分軽いなぁ……。結構な事件、いや事故だよ」

 

 ボクが現場を目にしようとシートベルトを外して外に出ようとすると

 

「あゆむ様そのままで大丈夫です、いけますよ」

 

 いつの間に戻ってきたのか再び運転席に戻り、笑いながら今度はシートベルトを締めてオートマチックトランスミッションをNに切り替えた。

 

「だ、大丈夫じゃないでしょっ! 人を呼んで後始末と、やっぱり平賀さん待とうよ、っね?」

 

 すると少し顔を上げて天を仰ぎ、その内何か考え事をしながら

 

「いけますっ」

 

 そう自信たっぷりにボクに言う。だから、その自信はどこから湧いてくるのさ。

 

「なにがいけるっていうの? 栄治さんの所の建築物一部を壊しておいて、無理でしょ。あれ見れば分かるでしょ、大理石メチャクチャ綻びてたしさ」

 

 ボクは呆れ半分で不思議ッ子メイドさんにそう投げかける。すると彼女は何か考え事をするように上を見ながら人差指を口元に持ってきた。

 

「まぁ、私の給料から差し引かれるだけですし訳ないです。……私の手元にコツコツ貯めてたお金、全額でお支払いすれば、いやはたまた……」

 

「ん、何か言った? 最後の方聞こえなかったんだけど」

 

 すると何か気付いたようにハッとして不思議ッ子メイドさんは驚いてみせる。普通自分の給料から引かれる、まぁ弁償するってなったら多少なりとも落ち込まないのかな? なのに目の前のこの子は、いや先輩はそんな感じを全然見せない。

 

「い、いえ。何でもありません、ちょっと待っててくださいね」

 

 そう言うとメイド服のポケットからなにやら携帯を取り出してそれを耳に当てる。

 

「あ、もしもし。浜辺ですが、あゆむ様が御滞在なさっているエントランスにて御領車が何者かに襲撃を受けましたが故、大至急応援に来てくださいませ。尚、あゆむ様はご無事です。特に傷一つありません。繰り返します、ご主人様源 あゆむ様はご無事です。傷一つありません。ですから予定通りこのまま学校に向かいます。加えて、この事を受けて詩条家建造物の一部破損が見受けられますので修復作業の程宜しくお願い致します。最後に学校に着いた際、私は校門前で待っています故この間頼んでおいたヴァンキッシュGCの用意を」

 

 不思議ッ子メイドさんは淡々とそう電話口に話し、早々と電話を切ってしまった。

 

 しゅ、襲撃っ? 受けてないでしょっ! 何故なにゆえ事の次第を大きくするの? 加えて『傷一つありません』って、あるでしょうよ。『あらあら』ってずいぶん軽くあしらった時にボクが額を抑えて悶えてたの見たでしょ、目あったもん!それに『傷一つありません』って二回繰り返し言ったよね? しかも自信満々に。忘れたとは言わせませんよ。というかウソついちゃダメだって。なんでウソつく? あぁ、そういう事か。

 

「誰に電話してたの?」

 

「メイド隊です」

 

「はい?」

 

 メイド隊? って今朝大広間で見たメイドさんみたいな人をいっぱい集めて組織するアレの事? そんなものが存在するの、まぁメイドさんがいるんだからその組織があったってなんら疑問は無いけれど……。

 

「それってもしかして、源家の?」

 

「他にドコのがありましょうか?」

 

「へ、へぇ〜、じゃあ深戸ちゃんみたいなメイドさんが沢山いる訳だ」

 

「先程も申し上げましたが、メイドに限らずは十人十色です。ですから私みたいなメイドは沢山いません」

 

「ご、ゴメン。ちなみに源家に仕えているメイドさんってどのぐらいいるの?」

 

 メイド隊っていうぐらいなんだから、結構な数いるんだろうね。200とか300とかさ。

 

「そうですね、凡そで申し訳ないのですが700名ほどでしょうか。ちなみに執事は400名、その他調理人・運転手・庭師諸々で300名、後は独立機関で……これは今必要ありませんね」

 

「っえ? そんなにいるの、よくそんなに人を雇うお金があるよね」

 

 合計で1400名も雇ってるって事はそれほど賃金を支給しなきゃいけない訳でしょ。源ってそんなにお金あるの

 

「源は様々な部門で上位に位置しておりますから収益高が高いのです。なにしろ源コンツェルンですから……」

 

「ふぅん。で、なんで嘘ついたの?」

 

「はいっ? いきなりの話題展開ですね」

 

「そろそろ聞きたかったんだよね、いろんな意味でさ」

 

「さぁ……、咄嗟に、でしょうか」

 

 不思議ッ子メイドさんは人差指を口の前に持ってきた。

 

「主として知る義務が」

 

「プライバシーの権利を行使します」

 

「いや、でも」

 

「プライバシーの権利を行使します」

 

「あの」

 

「プライバシーの権利を行使します」

 

「もういいや」

 

 そんなに言いたくないんだ、まぁ大体予測できたからいいんだけどさ。修繕費支払いから免れる為にそうしたんでしょ。あの大理石結構高そうだものね。気持ちは分かるけど嘘は良くないよ。

 

「参りましょう」

 

 突発的にそんな事を言われて目を丸くしながら不思議ッ子メイドさんの方を見る。

 

「何処に?」

 

 トランクはヘコんでる訳だし、このまま走ったら公道で恥かくし。加えて、まず栄治さんにこの事を知らせて、いやでもキマヅイし。あぁ、でも深戸ちゃんがちゃんとメイドさん達を呼んだんだっけ、じゃあいいのかなぁ……。とりあえず、他の車に乗り換えた方がいいよね。

 

「学校にですよ」

 

「何故に?」

 

「遅刻はいけません、加えて今日は大事な日なのですから」

 

「何で行くの?」

 

「この車しかありませんでしょう」

 

「いやいや、トランクとかへこんでるし、きっと傷だらけだからさ。そんなんで公道走ったら大変だって、どうせなら乗り換えて行こう?」

 

「『走る』? 違いますね、安全運転で」

 

「あ、そう? じゃあ安心、でもないけど。乗り換えていこう?」

 

「ではエンジンフルスロットルで」

 

「うん、『安全運転』じゃなかったの? 加えてボクの勧誘は無視ですか?」

 

「いざ、『爆走』」

 

 不思議ッ子メイドさんはその声と共にアクセルを勢い良く踏み込んで、色々な意味で不安材料を抱えたこの車やメイドさんが詩条家から公道へと向かってゆく。

 

「だから『安全運転』でしょ。それ口走ってる時点で自分が言った事に矛盾がでるでしょうよ! 自分で口語したことは守ってぇ〜」

 

 猛スピードの中そう言うのが精一杯だった。ふと上からヘリのエンジン音が聞こえ、ボク達の後方へと向かってゆく。そして先程の事故現場へとメイドさん達が降下してゆくのが見て取れる。そして10秒掛からない内に再びヘリへと戻っていった。まさか、もう修繕できたのかな。メイドさん……ヤバい。

 

 

 


ご閲覧戴きありがとうございました。

この前書店でラノベを手にしてみた所、やはり一話のストーリー内容、会話量的にもですが少ないと感じました。故に今回の話で私はそれを改善したつもりです。大体このくらいの長さで丁度いいかと思いまして。ですが、これはあくまで作者的視点でありますが故、読者の方々の意見も賜りたいです。それで今後このくらいでよいのか、それとも増減した方が良いのか参考にさせて戴きます。


〜Special Thanks〜

ライクス様 月奏様


毎度のコメント感謝しております。


それでは次のストーリーも読んで戴ければ幸いです。

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