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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
39/56

31.感謝➂

 先輩は何故か若干目を合わせようとしなかった。疲れてでもいるのだろうか……。確かに今日の出来事から鑑みても疲労の度合いは半端ないだろう。多くの観衆がいる中であんな取り仕切りをしていれば当然である。加えて前理事長の事も視野に入れれば精神的にも滅入っているかもしれない。早く家に帰って休んだ方がいいかもしれない……。とすると早めに会話を終わらせて帰ってもらったほうがいいだろう……。

 

「瀬那……たん」

 

 自己嫌悪に陥りながらこの呼び方に多くの抵抗を感じている。先輩は何故この呼び方で呼ばせようとするのか……。もしかしたら疲労故にこのようなおかしな状態になっているのかもしれない。単に先輩を”変な人”としてカテゴライズしていいのだろうか……。いささか疑問であり、結論付ける事も現段階では出来ない。先程のボクの考えは間違っているかもしれないし合っているかもしれない……、まだ分からない。

 

「なんだ?」

 

 先輩は顔を向けてやっとボクと目を合わせた。全体的に整った顔立ちに少々驚く。口元が小さくも夕日が反射して艶やかな朱色に染まっている。何よりも先輩の長い髪には目を惹かれた。これも夕日のせいなのか髪の毛一本一本が照り輝いていた、そんな綺麗な黒髪。そんな先輩は魅力的にも感じられた。

 

「ボクはもう何も気にしていません。父だってそんなの気にする人ではありません。だからもう家に帰って休まれては如何ですか?」

 

「私の話はまだ結に達していない。……私が疲れている表層をしていたか?」

 

 本題は先程の謝罪だけではなかったという事か。という事は他になにがあるんだろう……。

 

「はい、疲れているようにボクには見えました」

 

「そうか……」

 

 先輩はそこで言葉を途切らせた。そして顔を若干下に向け何故か唇をかみ締めている。

 

「木野城の口車にいくら乗せられたとはいえ私のした事は許されるものではない、それも母を助けてくれた源 雄司氏の息子であるキミに……。誠もって申し訳なかったと思っている……。これを受けていくらキミが許すと口頭で言ったとしても自分の中では許す事が出来ないんだ……私は今後どうしたらいいのかすら分からなくなっている……」

 

 こんなにも悩んでいたのだろうか……、ボクは気にしてはいないのに先輩は気にしている。どうすれば……、

 

「瀬那……たん、率いる生徒執行取締委員会はこれからどうなるんですか?」

 

 生徒会が発足する以上同じ機能を果たす生徒執行取締委員会のこれからの役目はほぼない事になる……。

 

「私が率いている……、そうか……そうなるんだな。私が所属している生徒執行取締委員会は事実上、閉会及び機関の廃止の手続を行った後私は何処にも属さない普通の生徒に帰化する事になる」

 

 意味深な言葉を残しながら先輩は目を合わせる。ボクは眉を顰めながら聞いていた。しかしここは主題をそらさずそのまま流す方向性でいこう。

 

「そうですか……、じゃあ、先輩は何処の委員会にも属さないんですね?」

 

 先輩は首を傾げながら口を開く。

 

「そうだが、それがどうしたというのだ?」

 

「生徒会に先輩の席を設けます。だから生徒会に来てください、いえ、これは会長命令と共に源の息子の請願です。ボクに対して罪の意識があるのならボクのいう事をしっかり聞いてください。そしてそれをこなす事によって自分を許して下さい。いいですか?」

 

「 ……」

 

 先輩は無言だった。目を大きく見開いてボクを見据える。驚きを隠せないといった表層、そして先輩は一歩前に足を踏み出す。

 

「い、いいのか? 私がキミの生徒会に入っても迷惑にならないのか」

 

「迷惑? なりませんよ。それに『ボク』の生徒会じゃなくて『皆』の生徒会ですよ。学校の生徒会は一人の『所有物』なんかじゃないんです」

 

 沈黙がそれから続いた。学校のチャイムが鳴る。これは部活の終了を告げるチャイムだ。

 

「ありがとう……、キミは優しいな……。……キミの手伝いをしながら自分を許せるかどうかは現段階では分からないが、キミの要求はのもう。キミの掲げる『生徒全員の生徒会』に是非入会させてもらうよ、して他の生徒会メンバーはどうするつもりだ? メンバーの決定権は全てキミに委託されている」

 

「それはもう決めてあります……まず……」

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 それから先輩と数分話した後に話は終結を迎えた。先輩は足の方向を変えて去り際にボクの方を振り返った。

 

「そうそう、言い忘れていたが今度私の家でささやかながらパーティーを催す予定だ。そこに是非キミと、父君と一緒に臨席賜りたい。招待状はもう郵送した」

 

 ボクとお父さんが先輩の家に呼ばれる? 予想外であった。その経緯は分からなくもないが……。

 

 そういい残して先輩はこの場を去っていった。やっぱり先輩は『変な人』ではないと思う。先輩の奥底に何かがきっとある。まだそれが何か分からないが話してみて違和感を感じた。

 

 ボクは最後に向かうべき場所に向かうため、平賀さんの待つ車の所に歩みを進めた。





御閲覧戴き誠にありがとうございました。


ストックを切り崩したせいか、若干短いストーリーとなってしまいました。


感想・評価・投票ランキング等して戴けると励みになります。


それではまた次のストーリーを読んで戴ければ幸いです。

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