25.宣言
早くもついに選挙日当日を迎えてしまった。
目覚めは言うまでもなく最悪だった。
すぐ隣にいるのにも関わらずあの昇降口で話した以来、登下校を共に出来ない事は愚か、会話すら出来ていなかった。
この関係を早く解決させたい。
そのためにはどうしたらいいんだろう……。
様々な事を考えながらも制服に着替えていった。
そしてネクタイをいつもよりキツくしめた。
意思は固まった。
ボクは隣の部屋の扉を通り過ぎて平賀さんの待つ車の元へと急いだ。
朝食は今までになかったが抜いてしまった。
平賀さんには勿論話していない。
知られたらお説教をくらってしまうからだ。
その分の時間を選挙前に取られることは痛手だし・・・・・・。
「こんなに早くご登校なされるのですか?」
「はい。今日は生徒会選挙なんです。いつもより1時間も早くてすみません」
平賀さんにはホントに申し訳ない。
送迎をしてもらう立場からこんな事……。
平賀さんの顔を見やる。
サングラスをしていてやはり瞳は見えないけれども、口元は笑みを浮かべていた。
「お気になさらないでください」
平賀さんはいつもボクに優しくしてくれる。
そんな存在がいて今のボクがあるんだ。
ボクは再認識した。
それから平賀さんに学校まで送ってもらった。
「それでは私はここで失礼します。
これから雪穂お嬢様をお送りしなければなりませんので・・・・・・」
ボクは校門の前に降ろしてもらった。
そしてそんな言葉を言って平賀さんはアクセルを踏んだ。
ボクは見えなくなるまで見送った。
その後ボクは選挙会場に指定されている講堂へと足を進めた。
中はやはり規模が大きかった。
それに加えて綺麗で落ち着いた空間。
やはりどこかの音楽ホールとしか思えない。
備え付けの椅子が凄く先の方まで広がっていた。
さぁ、マイクでも調整しようかな・・・・・・。
それでちょっと選挙演説でも・・・・・・誰もいないしね・・・・・・。
ボクはゆっくりと前方の舞台へと向かってゆく。
そして手と足をかけてようやく舞台の上に乗っかった。
そして音声機器が置いてある舞台裏の2階へ続く階段を上った。
目の前には新しそうな木材質の扉。
ボクは取っ手に手を掛けてゆっくりと扉を押し開ける。
しかし予想もしない事に、白木さんがそこにしゃがんで音声機器を弄っていた。
「しっ、白木さんっ」
白木さんは一瞬ビクっとして背後にいるボクの方を向く。
「みなもと君っ!?
ビックリしちゃったよ!この時間誰もこんなトコに来る人いないし・・・・・・」
「どっ、どうしたの?なんでここに・・・・・・?」
白木さんは立ち上がる。
そしてボクに微笑みなげる。
「私、マイクの調整してたんだ。
本番にもしもトラブったらいやだし・・・・・・。
そう思って音声機器を設定しようかなと思っててやってたんだけど、さっぱり分からなくて・・・・・・やっぱり私機械音痴なのかも・・・・・・」
そう言い、頬に手を当てながらヘケっと笑う。
流石にアイドルやってるだけある。
こんな何気ない仕草が、ボク達男の胸を打つ。
「どっ、どの辺が分からないのかな?」
ボクは音声機器のある白木さんの方にその距離を詰めてゆく。
「ここの音声Aと音声Bのボタンは多分マイクのだと思うんだけど、スピーカーから音を出すにはどうしたら・・・・・・」
そう言いながら白木さんは再びしゃがみこむ。
そして沢山あるボタンの一点を指差す。
ボクも姿勢反射しながらその一点を見つめる。
なんだろう・・・・・・白木さんから仄かに香るラベンダーの匂いが鼻に入ってくる。
やっぱり女の子の匂いって・・・・・・。
ってこれじゃあ変なおじさんだよ・・・・・・。
ボクは横目で白木さんを見やる。
そして目線を若干落としてみると・・・・・・。
そしてボクは目を大きくした。
今は夏で半袖で暑いのは十分に分かるけど・・・・・・何故第3ボタンまで開いてるのっ!!?
左右に開け放たれた空間がボクの目に入ってくる。
正直カミングアウトするとボクは今まで見たことが無かった・・・・・・。
女の人の・・・・・・その・・・・・・膨らみ?
あぁっ!もうなんでこんな事言ってるんだろう。
ボクの顔全体に熱が流れてゆく。
それにあわせて熱ってくる。
少し谷を成している膨らみ。
今の女子高生の平均より少し大きいかも・・・・・って、違います!!
もっ、勿論イデアを浮かべて平均を言ってますっ!
へっ、変態違いますっ!ボクはそんな不純な思いでここに来た訳ではありません。
そう自分に弁解するものの・・・・・・。
自然と視線を逸らすと汗のせいなのか下着が透き通って見えた。
ボクはすぐに目線を音声機器の方に戻した。
ダメダメっ!!自制心、自制心!
落ち着けボクっ。精神安定剤、精神安定剤は・・・・・・。
そう思いながらポケットを探してみるもののやはりそれは無かった。
ボクは深呼吸する。
「どうしたの?」
白木さんが不思議そうな面持ちでボクにそう問いかける。
「なっ、なななんでもないよっ!!
さっ、ささぁ〜て、音声機器のここのボタンだよねっ」
そういいながら適当なボタンを押してみる。
ボタン??
ちっ、ちち違うからね!
ぶぶブラウスのボタンととかじゃないよっ!!
「ここのボタンは違ったのかな?さっき押してみたんだけど・・・・・・」
そういいつつ四つんばいになってボクの目の前のボタンを指差す。
白木さんの胸がボクの右腕に当たってくる。
「はぅっ」
ボクは思わず声を上げてしまう。
今まで触れた事の無い感触。
若干のハリや弾力を持ちつつも柔らかみを帯びている。
どうしても腕に全神経がいってしまう。
ボクは更に赤面する。
白木さんがボクの方を上目遣いで見てくる。
ダメだ・・・・・、朝から刺激が強すぎるよっ。
ボクの額からは何故か若干汗が吹き出ていた。
莉紗子の上目遣いなんかとは格が違った。
これがもし無神経に成されているのなら・・・・・・神を超越した存在だと思う。
「みなもと君、どうかしたの?」
心配そうな面持ちをボクに向ける。
「いっ、いやいや。ななんでもない、よ」
「そう?なんか変だけど、まぁみなもと君がそう言うならあたしの気のせいだね。
ねぇっ!これじゃない??ほら、スピーカー音量って書いてある、しっ・・・・・・きゃっ」
白木さんはあまりにも自分の移動可能なテリトリから逸脱して、体勢を崩してボクに倒れ掛かってきた。
「イタタタタ」
ボクはそういいながら目を開いてみる。
白木さんはボクの顔の左右の床に手をついた。
つまり・・・・・・ボクの上に四つん這い、加えて顔が目と鼻の先にある・・・・・・。
ヤバイよ、ヤバ過ぎるよ!!
ボクの自制心を揺るがさないでぇ〜。
ボクは額から湯気でも出てきそうなくらいな勢いだった。
ボクと白木さんの視線が重なり合う。
こっ、ここんなシチュエーション・・・・・・前にもおそらく前世でもあった事がないと思う・・・・・・。
ボクの心臓の鼓動がどんどん早くなってゆく。
それは僕自身でもよく意識化されている。
ふと白木さんの唇に視線がいく。
艶やかな小さい唇。
口紅を塗っていないにも関わらず、水々しそうに感じる。
そしてその口からは若干息が漏らされている。
『あっ』
ボク達はそう言いつつ体勢を元に戻す。
お互い背中合わせになった。
「ごっ、ごめんね・・・・・・、あたし・・・・・・その・・・・・・夢中で・・・・・・」
白木さんは何故か少し上ずったソプラノボイスになった。
「ぼっ、ボクこそなんか・・・・・・ゴメンね・・・・・・」
ボクも何故か照れ気味に言ってしまった。
なんだろう・・・・・・とっても、しゃべりづらい・・・・・・。
少し沈黙が続く。
その内、白木さんが口を開いた。
「みなもと君・・・・・・あたし・・・・・・決めた事があるの・・・・・・」
白木さんは後ろにいるボクに顔を向けながら言う。
決めた事??何だろう・・・・・・。
「あっ、うん、何を?」
ボクは気軽に聞いてみた。
「あたしねっ、みなもと君には感謝してるんだっ!
武道の方の監修してもらってるし教授もしてもらってる。
言い忘れてたけど、撮影終わったの。
バッチリだった、監督さんにもの凄く褒められたよ・・・・・・。
季節の事にしたって、季節は今色々考えてるだろうケドきっと感謝してる。
あたしだって季節があの事件でもしもみなもと君の介入が無かったら大切な親友が危なかった。
でもそれが回避できたわけだから、やっぱりみなもと君のお陰・・・・・・」
確かにそんな事をしたけれども別に感謝されるような事はしてないと思う。
誰だってそんな光景目にしたら助けると思う。
でも、助けられて良かった。
それが志倉さんには迷惑な事だったかもしれないけど。
そして白木さんは再び口を開く。
「あたし・・・・・・もし今回の選挙でみなもと君が当選しなかったら・・・・・・」
ボクが当選しなかったら何なんだろう・・・・・・。
ここで少し間が空く。
白木さんはボクの耳元まで距離を詰めてきて
「・・・・・・アいドル引退する・・・・・・」
そう囁いた。
「えっ!?」
ボクは咄嗟に振り向いた。
今・・・・・なんて言った??
アイドルを・・・・・・やめる??
「なっ、なななんで??
ボクが当選しなかったらって、ボクにそんなアイドル人生とつりあう様な価値なんて無いよっ!!
況してや白木さんが引退したら、今の芸能界がある意味覆ってしまう。
しかもファンが沢山いるわけだしっ!!
なんでそんな事言うの?何度も言うけどボクにはそんな価値なんてないよ・・・・・・」
ボクはいつも以上に必死にそう熱弁する。
白木さんが芸能界やめる事になったら、今のファンや関わってくれた人達が可哀相だよ。
「どうしてだろうね・・・・・・。自分でもよく分かんない。
でもみなもと君にはそれだけの価値があたしの中ではあるんだと思うのっ。
それで、みなもと君がなにかに一生懸命取り組むならあたし出来る限り力になりたい。
だからこそ今回支援者としてみなもと君を少しでもサポート出来ればと思って立候補したし、
その試練はあたしが自分で課したモノ・・・・・・。だからみなもと君が撤回させることなんて出来ないの」
白木さんは顔を落とした。
それでもボクは白木さんにアイドルを続けていって欲しい。
多分彼女にとってアイドルっていう職業は生きがいなんだ。
その生きがいをボクなんかが取っちゃいけない。
だから・・・・・・
「ボク、絶対当選するねっ!!
白木さんにアイドル辞めさせることなんてボク・・・・・・出来ないっ!!
だから安心して。なにがなんでも当選してみせるっ!
例え相手側に雪穂さんがいたとしてもっ!」
「うんっ。そう言ってもらってあたし嬉しい・・・・・・。
一緒に頑張ろうね、勿論、琉嶺先輩や手塚君もだけどっ」
ボクの意志は決まった。
今回の選挙は絶対に敗戦はありえない。
当選しかボクの進むべき道が無いんだ。
それが最低限、支援者になってくれた人への・・・・・・恩返しだから・・・・・・。
ボクと白木さんは選挙に必要な器具や準備をしていった。
その後手塚くんや琉嶺先輩と合流して舞台裏で演説の予行練習をした。
そして、選挙開始の予鈴のベルが校内に鳴り響いた。
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