21.支援者➀
「手厳しいな・・・・・・」
手塚くんが溜息混じりにそう言った。
手塚くんとボクは食堂にいた。
昼休みというこの時間帯に似付く程に辺りは賑わっていた。
ボクと手塚くんは向かい合い席についた。
ボクと手塚くんの前にはそれぞれ頼んだランチセットが置かれていた。
「あゆむ、ホントに今回の選挙での当選は厳しいな。
先日の騒動で理事長とあゆむの関係が公になってしまった。
皆少なからず朱鷺等前理事長を哀れんでいるだろう。
その反面、あゆむのお父さんである現理事長に軽蔑の眼差しが向けられている。
すなわち、その息子であるあゆむ、お前もその対象になっているんだよ」
手塚くんはランチセットの隣に置かれた水が入ってるグラスを手に取った。
「うん・・・・・・」
改めてその事実を整理されて言われてみると、多大なショックが心を襲う。
手先が冷たくなってきた。
「あとこれは新情報なんだが・・・・・・、対抗馬にあの木野城 晴紀が立候補したそうだ。
アイツはこの学園の中で人気が結構ある。
特に女子から。
従って、あゆむは女子からの投票を望む事は難しい。
同じ土俵で闘ったら必ず敗戦してしまう。
そこで・・・・・・だ。
あゆむは誰か頼りになる人はいないのか?
こちら側の支援者となってくれる人だよ。
その支援者によっては結構な数が動く」
手塚くんは前に置かれたカレーライスを口に運んだ。
支援者・・・・・・?
頼りになる人・・・・・・?
「雪穂さん・・・・・かな」
「詩条 雪穂か・・・・・・。
まぁ、あの人がこちら側に就いてくれたら形勢は変わってくるだろうな。
放課後に頼んでみるか」
手塚くんはボクの支援者になってくれた。
ボクは今回の選挙に自信を失くしていた。
しかし、支援してくれる人がいるなら自信が湧いて来る様な気がした。
ボクと手塚くんは放課後に雪穂さんが待つ昇降口に行った。
雪穂さんはいつもと同じく、昇降口の扉の先にいた。
ボク達が行くと雪穂さんは微笑んでボク達を見た。
ボクは深呼吸した。
雪穂さんもボクの参列になってくれるのならば非常に嬉しい。
ボクの自信は完全とはいかないまでも、ほぼ満たされる気がした。
雪穂さんはいつもボクを助けてくれた。
だから今回も助けてくれる、絶対に。
ボクはそう決め付けていた。
「雪穂さん、あの・・・・・・」
「なんでしょう?」
雪穂さんは目線をボクに送った。
いつもと変わらないこの落ち着いた雰囲気。
なんか心に静養が齎される気がした。
「ボク、今度の選挙に出馬するんです」
「ええ」
「それで、雪穂さんにボクの支援者になって欲しいんです!」
雪穂さんは目線をボクから逸らして外の方を見やった。
長い沈黙が続いた。
雪穂さんは小さな声でこう言った。
「・・・・・・すみません」
「えっ?」
ボクは耳を疑った。
雪穂さんが断る訳ない。
そう絶対の自信を持っていた。
しかし、今それが崩壊されようとしている。
「すみません、聞こえませんでした。
もう一回言ってもらえますか?」
間髪を少し挟んでから小さな声で囁いた。
「・・・・・・あゆむさんの支援者になることはできないんです」
ボクは動揺した。
雪穂さんがボクの・・・・・・。
「なっ、何故ですか?」
隣の手塚くんも動揺してたらしく口を挟んできた。
「・・・・・・私は晴紀さんの支援者なんです。
ですから掛け持ちできません。
今日は気分が優れませんので先に帰ってますね」
雪穂さんは幾分か元気を失くし、ボクにそう言った。
ボクは平賀さんに断って手塚くんと歩いて帰る事にした。
「これは非常にヤバイぞ。
詩条派が相手側に回ったらこっちは相当なダメージだぞ」
「ボク・・・・・・ショックだった」
「・・・・・・、気、気にするなって!
前言撤回っ!
詩条雪穂が相手側に回ったからと言って、なんだと言うんだ!?
そんなのこっちにしてみれば屁の河童だ!
だから落ち込むんじゃないっ!!」
手塚くんは落胆するボクを慰めるように肩を叩いてくれた。
ボクは複雑な心境だったが、ここはお父さんとの約束を果たすことが最優先事項だと考えて、
ほかの事は頭から追いやった。
ボクには手塚くんがいるじゃないか。
でも・・・・・・
「でも、雪穂さんがボクの支援者になってくれないとするとこっちは相当なダメージなんでしょ?」
さっき手塚くんが言った言葉が心の中にこびり付いていた。
そうボクが言うと手塚くんはニッコリ微笑み投げ
「前言撤回だって言ったろ!?
大丈夫、この優秀な策士である手塚 渉に任せておけ!!
策は・・・・・・用意してある!」
「自分で優秀とか言うのが心配なんだけど・・・・・・」
ボク達は夕暮れの中それぞれの帰途に着いた。
閲覧戴き誠にありがとうございました。
さて今回から諸事情により、ストーリーの展開を早くして参ります。
感想、評価、投票ランキング等宜しくお願い致します。
それではまた次のストーリーを読んで戴ければ幸いです。